2023年10月02日

ユーロ圏消費者物価(23年9月)-総合指数・コアともに4%台まで低下

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数、コアともに前年比4%台まで低下

9月29日、欧州委員会統計局(Eurostat)は9月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は4.3%、市場予想1(4.5%)から下振れ、前月(5.2%)から低下した(図表1)
前月比は0.3%、予想(0.5%)より下振れ、前月(0.5%)から減速した

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は4.5%、予想(4.8%)から下振れ、前月(5.3%)から低下した(図表2)
前月比は0.2%、前月(0.3%)から減速した

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:コア部分の財・サービスともに4%台に、飲食料も低下傾向が続く

23年9月のHICP上昇率3(前年同月比)は全体で4.3%となり、8月の5.2%から大幅に低下、21年10月(4.0%)以来の伸び率となった。「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」も4.5%となり、8月の5.3%から大幅に低下している。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が7月5.0%→8月4.7%→9月4.2%、「サービス」(エネルギーを除く)が7月5.6%→8月5.5%→9月4.7%となり、いずれも大幅に下落している。なお、サービスインフレはドイツで昨年6-8月に月額9ユーロで公共交通機関が乗り放題となる政策を実施し、9月に終了されたため前年比伸び率が低下しやすくなるベース効果が生じている。前年同月比寄与度は、「財」が1.01%ポイント程度、「サービス」が1.87%ポイント程度と見られる。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で7月▲6.1%→8月▲3.3%→9月▲4.7%とマイナス幅が拡大した。前月比では1.4%とプラスかつプラス幅も大きいが、昨年のエネルギー価格の上昇が急だったため、前年比伸び率が押し下げられている。エネルギーの前年同月比寄与度は▲0.69%ポイント程度(8月は▲0.34%ポイント)と見られる(図表1)。
(図表3)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳/(図表4)ユーロ圏のインフレ率(季節調整値)
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で8.8%(8月9.7%)と6か月連続で大幅に低下した(図表3)。飲食料のうち加工食品の伸び率は9.5%(8月10.3%)、未加工食品は6.6%(8月7.8%)となり、いずれも大幅に下落している。飲食料の前年同月比寄与度は1.91%ポイント程度(8月は1.98%ポイント)と見られる。

物価上昇の勢いをECBが公表する季節調整済系列で確認すると(図表4)、3か月移動平均後の3か月前比年率で総合指数が4.0%、コアが3.6%、エネルギーを除く財が3.1%、サービスが3.9%、飲食料が4.9%となり、コア部分は財、サービスともに3%台まで低下した。
(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表6)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
国別のHICP上昇率は、前年同月比で20か国中、上昇したのは5か国で残りの15か国は低下した(図表5)。なお、8月はベルギーとオランダでECBの物価目標である2%を下回った。

前月比では14か国がプラスの伸び率、6か国はマイナスの伸び率となっている(図表6)。
 
3 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ(以降も特に断りがない限り同様)。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年10月02日「経済・金融フラッシュ」)

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