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【少子化社会データ詳説】日本の未婚化を正しく解釈する-若者の希望と違った応援議論はなぜおこるのか
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
4――未婚化の誤解:優しくありたい、その前に
(1) 結婚意志は男女ともに約30年前の9割水準にキープされており、「結婚意志の下落」は婚姻減に関して説明力不足である
(2) 依然高い結婚希望が結婚につながらなくなっているが、そもそも中高年と若者では理想とする夫婦像が激変している
ことを理解しなくてはならない。
さらに、注意すべき点は、人口構造の変化がもたらす「世論」の動向である。
日本は急速な少子化によって、2020年の国勢調査では団塊ジュニアを含む40歳代人口が最も多く、20歳代人口はその67%しかいないという状況にある。40歳代以上人口:30歳代人口以下=6:4となっており、中高年層が多数派となっている。一方、半世紀前の1970年の日本では、(40歳代以上人口):(30歳代以下人口)=3:7で20歳代人口が最も多かった。そのため、かつての若者である中高年は「若者の声は十分聞こえているだろう」と勘違いしやすく、知らず知らずの間に若年層の声をネグレクトしていることに気がつかない可能性がある。
統計的に見れば、日本において次世代人口である赤ちゃんを生み出す「結婚」というイベントは(日本は98%が婚内子として出生)、以前より、26歳から27歳をピークとして、34歳までの男女間で行われている1。つまり、今や少数派の結婚の担い手世代は、シルバー民主主義によるアンコンシャス・バイアスの弊害(ハラスメント、ネグレクト等)を受けやすいといえる。今後高齢化がさらに進行する中で、かつてないほどに「いまどきの結婚」への無理解が進みかねない社会への警戒を強めなければならない。
34歳までの若い世代が最も理想とする「子育て期も夫婦ともに仕事を辞めずに、ずっと働き続けられる雇用環境の提供」は、未婚化解消に極めて重要である。
「夫(男)にもっと稼がせてやらないと」「妻(女)には仕事なんかしないで家事育児にゆっくり専念してもらわないと」と優しく接したつもりが、ハラスメントといわれた、身に覚えがある読者もいるのではないだろうか。
1 2021年の厚生労働省の婚姻統計を用いて初婚同士の成婚者の成婚年齢を分析すると、成婚者の8割が32歳までの女性と34歳までの男性で成立していることがわかる。
【参考資料】
厚生労働省 「人口動態調査」
国立社会保障・人口問題研究所 「出生動向基本調査」
天野 馨南子 , 「【少子化社会データ詳説】日本の人口減を正しく読み解く-合計特殊出生率への誤解が招く止まらぬ少子化」, (株)ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2023年7月24日号
天野 馨南子 , 「激変した『ニッポンの理想の家族』-第16回出生動向基本調査「独身者調査」分析/ニッポンの世代間格差を正確に知る」, (株)ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2022年10月3日号
(2023年09月11日「基礎研レポート」)
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03-3512-1878
- プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向
・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】内閣府特命担当大臣主宰「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024年度)
・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
※都道府県委員職は年度最新順
・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
・【高知県】高知県「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度)
・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度)
・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【愛媛県法人会連合会】えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー
天野 馨南子のレポート
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