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- 2022年度 生命保険会社決算の概要
2023年09月07日
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1―保険業績(全社)
2―大手中堅9社の収支状況
2|基礎利益は大きく減少~コロナ給付金の急増など
最初に、基礎利益の算出方法の改定について述べておく。(2021年度につき、新・旧と記載)
基礎利益が収支の実態を正確に、かつ全社同じ基準で表現できるように、2022年度決算から(多くの会社では比較対象として2021年度分も)以下の図表6のように算定方法が変更された。
この結果、これまでキャピタル損益として扱われていたヘッジコストが利差益での負担となり、また投信解約損益はキャピタル益に遷される。(なお、経常利益への影響はない)。
そうした中、2022年度の基礎利益は15,414億円、対前年度▲32.9%の減少となった[図表5]。うち利差益は、2022年度は6,991億円、▲19.5%減少となった。
危険差益・費差益等の保険関係収支は8,422億円、▲41.0%の減少となった。
危険差益は、2022年度の減少は新型コロナによる給付金支払いの大幅な増加によるものである。
最初に、基礎利益の算出方法の改定について述べておく。(2021年度につき、新・旧と記載)
基礎利益が収支の実態を正確に、かつ全社同じ基準で表現できるように、2022年度決算から(多くの会社では比較対象として2021年度分も)以下の図表6のように算定方法が変更された。
この結果、これまでキャピタル損益として扱われていたヘッジコストが利差益での負担となり、また投信解約損益はキャピタル益に遷される。(なお、経常利益への影響はない)。
そうした中、2022年度の基礎利益は15,414億円、対前年度▲32.9%の減少となった[図表5]。うち利差益は、2022年度は6,991億円、▲19.5%減少となった。
危険差益・費差益等の保険関係収支は8,422億円、▲41.0%の減少となった。
危険差益は、2022年度の減少は新型コロナによる給付金支払いの大幅な増加によるものである。
多くの会社で利息配当金収入は増加したが、これは海外の高い金利を享受できる外債利息の増加によるものであろう。しかし2022年度から基礎利益でヘッジコストを負担するように改定が行われているため、そうした新基準で比較すると、まさにそのヘッジコストが増加したため、基礎利回りは低下している。
一方、「平均予定利率」は、過去に契約した高予定利率契約が減少していくことにより、毎年緩やかな低下を続けている。今後も低下傾向は続くだろう。
一方、「平均予定利率」は、過去に契約した高予定利率契約が減少していくことにより、毎年緩やかな低下を続けている。今後も低下傾向は続くだろう。
4|当期利益も減少~内部留保の割合は高いが、配当金額は相対的に増加
次に当期利益の動きをみる[図表10]。基礎利益(①)は大幅に減少、キャピタル損益(②+③)も減少して、その合計で17,827億円と対前年度▲10,744億円の減少となった。
危険準備金や価格変動準備金、追加責任準備金などを繰入れる前の状態に戻せば、15,667億円( A')と前年度より▲8,307億円減少している。
利益の使途については、実質的な内部留保の増加額(B’)は10,240億円と前年度より▲8,063億円減少している。
一方、配当については、5,427億円が還元(株式会社の契約者配当を含む)されることとなった。ほとんどの会社が配当は前年度決算から据置きとしている。(1社が一部増配)
このような見方をすれば、2022年度は「実質的な利益」の65%が内部留保に、残り35%が契約者への配当にまわっているとみることができ、利益が減少した分、配当への割合が相対的に高まっているが、引き続き内部留保の充実も行われている。
次に当期利益の動きをみる[図表10]。基礎利益(①)は大幅に減少、キャピタル損益(②+③)も減少して、その合計で17,827億円と対前年度▲10,744億円の減少となった。
危険準備金や価格変動準備金、追加責任準備金などを繰入れる前の状態に戻せば、15,667億円( A')と前年度より▲8,307億円減少している。
利益の使途については、実質的な内部留保の増加額(B’)は10,240億円と前年度より▲8,063億円減少している。
一方、配当については、5,427億円が還元(株式会社の契約者配当を含む)されることとなった。ほとんどの会社が配当は前年度決算から据置きとしている。(1社が一部増配)
このような見方をすれば、2022年度は「実質的な利益」の65%が内部留保に、残り35%が契約者への配当にまわっているとみることができ、利益が減少した分、配当への割合が相対的に高まっているが、引き続き内部留保の充実も行われている。
5|ソルベンシー・マージン比率~高水準を維持、一部の会社でESRの開示も始まる。
ソルベンシー・マージン比率をみたものが図表11である。
2022年度は、オンバランス自己資本が少々増加したが、その他有価証券の含み益が減少したため、マージン(=分子)は減少した。一方リスク(=分母)は、資産運用リスクが前年度に引き続き若干減少している。形式的に9社計で算出した比率は前年度の999.1%から955.0%と下がってはいるが、引き続き高水準にある。
2022年度分からは、経済価値ベースのソルベンシー指標(ESR :Economic Solvency Ratio)を、大手4社グループなど一部の会社が開示し始めている。
これは資産、負債とも時価ベースで評価するなど新たな算出方法により、会社のリスク量に対する自己資本の比率であり、開示された大手社の数値はおよそ200%~250%程度である。全社が開示するのは2025年度とされている。
ソルベンシー・マージン比率をみたものが図表11である。
2022年度は、オンバランス自己資本が少々増加したが、その他有価証券の含み益が減少したため、マージン(=分子)は減少した。一方リスク(=分母)は、資産運用リスクが前年度に引き続き若干減少している。形式的に9社計で算出した比率は前年度の999.1%から955.0%と下がってはいるが、引き続き高水準にある。
2022年度分からは、経済価値ベースのソルベンシー指標(ESR :Economic Solvency Ratio)を、大手4社グループなど一部の会社が開示し始めている。
これは資産、負債とも時価ベースで評価するなど新たな算出方法により、会社のリスク量に対する自己資本の比率であり、開示された大手社の数値はおよそ200%~250%程度である。全社が開示するのは2025年度とされている。
(2023年09月07日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1833
経歴
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
安井 義浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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