2023年09月07日

2022年度 生命保険会社決算の概要

基礎研REPORT(冊子版)9月号[vol.318]

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩

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1―保険業績(全社)

2022年度の全生命保険会社42社の業績を概観する[図表1]。

42社合計では、年換算保険料ベースで新契約は17.4%増加しており、全体としては、コロナ前の2019年度業績の規模を上まわるまでに回復してきている。主に外貨建保険の販売増による。保有契約は▲0.8%減少となった。
[図表1]主要業績(2022年度)
新契約年換算保険料の個人保険、個人年金保険および第三分野の内訳を見たものが図表2である。各社が注力している分野にもよるが、全体としての販売業績はコロナからの回復、海外金利上昇による外貨建保険の販売の好調により回復傾向となった。

基礎利益(再び図表1)は、全体では▲30.8%と大幅に減少した。今般、基礎利益の算出方法の一部が変更されたが、これは新基準同士で比較した増減である。主に新型コロナウィルス関連の給付金支払いの増加、外貨建資産のヘッジコストの増加、あらたに外貨建保険に法令上必要となった責任準備金積増し負担によるものが主である。
[図表2]新契約年換算保険料(2022年度)

2―大手中堅9社の収支状況

1|資産運用環境と有価証券含み益
2022年度までの資産運用環境は図表3の通りである。また、こうした状況を反映して、国内大手中堅9社の有価証券含み益は、図表4に示す通りとなった。

多くの生保は近年、国内の低金利状況や外貨建保険の販売増加に伴い、外国債券の保有を増加させてきた。今般、米国をはじめとした世界的な金利上昇の影響を大きく受け、円安にもかかわらず外国債券含み損を抱える会社が多くなっている。米国では債券含み損を抱えた銀行の破綻も報道されており、わが国においても金融機関の財務状況への悪影響が懸念される。
[図表3]運用環境
[図表4]有価証券含み損(大手中堅9社計)
2|基礎利益は大きく減少~コロナ給付金の急増など
最初に、基礎利益の算出方法の改定について述べておく。(2021年度につき、新・旧と記載)

基礎利益が収支の実態を正確に、かつ全社同じ基準で表現できるように、2022年度決算から(多くの会社では比較対象として2021年度分も)以下の図表6のように算定方法が変更された。

この結果、これまでキャピタル損益として扱われていたヘッジコストが利差益での負担となり、また投信解約損益はキャピタル益に遷される。(なお、経常利益への影響はない)。

そうした中、2022年度の基礎利益は15,414億円、対前年度▲32.9%の減少となった[図表5]。うち利差益は、2022年度は6,991億円、▲19.5%減少となった。

危険差益・費差益等の保険関係収支は8,422億円、▲41.0%の減少となった。

危険差益は、2022年度の減少は新型コロナによる給付金支払いの大幅な増加によるものである。
[図表5]基礎利益の状況(大手中堅9社計)
[図表6]基礎利益(あるいは利差益、基礎利回り)の改定
新型コロナウィルス感染症による、生命保険会社の保険金・給付金の支払いは、例えば一部の大手社の状況は図表7のようになっており、特に、みなし入院の入院給付金が急増して2021年度、2022年度と急増し、これはほぼダイレクトに2022年度の危険差益ひいては基礎利益の減少となって現れている。
[図表7]新型コロナによる給付金等の支払い状況の一例
3|利差益も減少~算定方法の変更によるヘッジコストの負担増加
利差益について、さらに詳しく見てみる[図表8、9]。
[図表8]利差益の状況(大手中堅9社計)
[図表9]利差益(逆ざや)状況の推移(大手中堅9社計)
多くの会社で利息配当金収入は増加したが、これは海外の高い金利を享受できる外債利息の増加によるものであろう。しかし2022年度から基礎利益でヘッジコストを負担するように改定が行われているため、そうした新基準で比較すると、まさにそのヘッジコストが増加したため、基礎利回りは低下している。

一方、「平均予定利率」は、過去に契約した高予定利率契約が減少していくことにより、毎年緩やかな低下を続けている。今後も低下傾向は続くだろう。
4|当期利益も減少~内部留保の割合は高いが、配当金額は相対的に増加
次に当期利益の動きをみる[図表10]。基礎利益(①)は大幅に減少、キャピタル損益(②+③)も減少して、その合計で17,827億円と対前年度▲10,744億円の減少となった。

危険準備金や価格変動準備金、追加責任準備金などを繰入れる前の状態に戻せば、15,667億円( A')と前年度より▲8,307億円減少している。

利益の使途については、実質的な内部留保の増加額(B’)は10,240億円と前年度より▲8,063億円減少している。

一方、配当については、5,427億円が還元(株式会社の契約者配当を含む)されることとなった。ほとんどの会社が配当は前年度決算から据置きとしている。(1社が一部増配)

このような見方をすれば、2022年度は「実質的な利益」の65%が内部留保に、残り35%が契約者への配当にまわっているとみることができ、利益が減少した分、配当への割合が相対的に高まっているが、引き続き内部留保の充実も行われている。
[図表10]当期利益とその使途(大手中堅9社計)
5|ソルベンシー・マージン比率~高水準を維持、一部の会社でESRの開示も始まる。
ソルベンシー・マージン比率をみたものが図表11である。

2022年度は、オンバランス自己資本が少々増加したが、その他有価証券の含み益が減少したため、マージン(=分子)は減少した。一方リスク(=分母)は、資産運用リスクが前年度に引き続き若干減少している。形式的に9社計で算出した比率は前年度の999.1%から955.0%と下がってはいるが、引き続き高水準にある。

2022年度分からは、経済価値ベースのソルベンシー指標(ESR :Economic Solvency Ratio)を、大手4社グループなど一部の会社が開示し始めている。

これは資産、負債とも時価ベースで評価するなど新たな算出方法により、会社のリスク量に対する自己資本の比率であり、開示された大手社の数値はおよそ200%~250%程度である。全社が開示するのは2025年度とされている。
[図表11]ソルベンシー・マージン比率(大手中堅9社計)
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保険研究部   主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

(2023年09月07日「基礎研マンスリー」)

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