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2019年度生命保険会社決算の概要-外貨建保険と外貨建資産にいつまで頼れるか
基礎研REPORT(冊子版)9月号[vol.282]

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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1―保険業績(全社)
一方、「基礎利回り」は、わずかながら低下した。主要な構成要素である利息配当金収入自体は多くの会社で増加してはいるが、運用資産の中で中心となる国内債券に関して、超低水準の金利が続いており(保有債券の年限などにもよるが、)利回りの方は低下傾向にあると思われる。今後も利息収入に徐々に悪影響をもたらすことになるだろう。そうした状況に対し、近年、外貨建債券などへのシフトが進んでいることと、国内大手社においては株式の保有も比較的多いことから株式配当の増加もあり、債券の利回り低下を補っているものと考えられる。
基礎利益の動向は、危険差益や費差益では大幅な好転が見込めない中、利差益の動向に大きく依存しているのが現状だが、経済環境に大きく左右されることもあり、将来にむけて決して楽観はできない。
9社中4社が、危険差益関係で増配した。一方利差益関係では2社が減配しており、運用環境の先行きに不安があることを反映している。
4―トピックス
国内の超低金利状況下で、比較的利回りの高い外貨建資産への投資が近年増加してきた。ただし、それでは保険会社が為替変動リスクを大きくとることになることもあり、それを抑えつつ、顧客が直接高い海外金利を享受できる外貨建保険の販売が増加してきた。
しかし2019年度には、海外金利も低下して、外貨建保険の貯蓄の魅力が薄れた。この状況が今後も続くと販売業績面・資産運用面ともに苦しい状況になる。
今後どこまで外貨建保険への注力が続くのか、あるいは一時の傾向にすぎなかったということになるのか、興味深いところではある。もちろん「経済状況に応じて機動的に」となるだろうが、資産運用面ではそれが当然としても、保険販売面でも機動的に運営できるだろうか。
新型コロナウィルス感染拡大の影響は、2019年度はまだ株価の下落程度しか表にでてはいない。今後、直接収支上に影響を及ぼすと考えられる状況としては、・新型コロナによる死亡等に対し「災害割増」保険金を支払うこと・新型コロナによる入院に加え、臨時施設への宿泊、自宅療養に対しても入院給付金を支払うことなどがある。ただし現時点での感染者数や死亡者数をみる限りにおいては、こうした保険金・給付金支払の増加そのものが収支に与える影響は限定的と思われる。
それよりも、販売活動の制限や景気の悪化に伴う新規契約の減少は、既に2020年4月以降、大きな影響をもたらし始めており、収支上も長期的に大きな痛手となることが懸念される。また経済状況の悪化による資産運用収支の悪化も懸念される。さらに長期的には、死亡率あるいは疾病発生率全体の変動など何らかの悪影響(例えば、平均寿命などへの長期的な影響による保険料率のアップ)なども考えられるが、統計上これらが判明するまでには、しばらく時間がかかるだろう。
(2020年09月08日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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