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2018年度生命保険会社決算の概要ー外貨建資産、外貨建保険が引き続き増加

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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1―保険業績(全社)
利差については、2008年度を底として、2012年度までマイナス(逆ざや)であったものが、2013年度からプラス(利差益)に回復し、2018年度は7,192億円と2017年度に引き続き最高水準を更新した(一部の会社はまだ逆ざやであるが、そのマイナス額は減少傾向)。[図表6]
「平均予定利率」は、過去の高予定利率の契約が減少していくことにより、毎年緩やかな低下を続けている。現在の新規契約の予定利率は、1%未満であることから、今後も低下傾向は続くだろう。
一方、「基礎利回り」は、横ばいであった。国内債券に関しては、超低水準の金利が続いているので、利回りは低下傾向にあると思われる。外債利息や内外株式配当の増加により、債券の利回り低下を補っている。
利差益については、将来にむけて決して楽観はできないと見る会社が多い。
ソルベンシー・マージン比率(9社合計ベース)は、前年度の922.0%から966.9%へと上昇し、引き続き高水準にある。[図表8]
2018年度は、国内債券を中心としたその他有価証券の含み益は増加し、また当期利益の使途でふれたように、オンバランス自己資本(貸借対照表の資本、危険準備金、価格変動準備金などの合計)が引き続き増加した。また、外貨建資産の増加(後述)にも関わらず、資産運用リスクが減少したことでリスク総額も少し減少している。その理由の詳細は不明だが、国内株式の時価下落や、為替ヘッジ率を高めたことなどによるものであろうか。あるいは、外貨建保険については、そもそも仕組上会社の為替リスクはないものであることから、リスク算出上は、外貨建保険の保険料の運用先としての外債等を対象外としていることも考えられる。
なお、現在、経済価値ベースのソルベンシーの検討が進められているところであり、新聞報道によれば、2025年をめどに新規制が導入される見込みのようである。新規制では、責任準備金を時価評価するなど、主に金利リスクの評価がより適切になされることを中心に、算出方法が大きく変わる。
3―トピックス
今後国内金利がゼロに近いままだと円建保険には貯蓄メリットがないので、海外の比較的高い金利を得ることを目指した外貨建保険が、引き続き業績を牽引することになりそうだ。為替リスクを顧客が負っていることに関する苦情が増えている現状もあるが、販売時の説明を充分に行うことや、同時に利回り表示が適正化されることで、健全な発展となるかどうかが注目される。
次に、経営者向けの保険であるが、多くの会社で2018年度の販売業績を押し上げた主役商品であった。ここ半年ほどは税務上の取り扱いや販売時の説明事項の整備がなされてきたので、適切な形で販売が再開されることになりそうだ。
また、老後の生活資金に、世間の関心が高まる中、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)と並んで、所得控除など税制優遇のある個人年金保険が注目されることになるかもしれない。
(2019年09月06日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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