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パワーカップル世帯の動向(3)金融意識と消費傾向-金融・経済への関心高く、旅行や教育、趣味などの消費に積極的

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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- ニッセイ基礎研究所の調査を用いて、パワーカップルの妻の金融意識を見ると、共働き一般と比べて、預貯金の金利水準や金融・経済の仕組みなどへの興味・関心が際立って高く、株式・債券などの金融商品についての知識も一定程度保有している。これらを背景に日頃の情報源も、他と比べてテレビなどの受動的に情報を得る手段よりも、新聞や雑誌・書籍、企業サイトなどの能動的手段の利用が多い傾向がある。
- 日常生活でお金をかけたいものを見ると、妻の年収によらず、家具や家電、自動車などのモノより旅行や外食などのサービス(コト)が上位を占める。パワーカップル妻では経済的余裕から既に様々な領域にお金をかけられているためか、約半数の選択肢で共働き全体の選択割合を下回る。ただし、新型コロナ禍で抑制していた影響からか海外旅行の選択割合は際立って高い。また、教育や趣味が多いことも特徴的である。
- 近年、都市部を中心に子どもの受験年齢が低年齢化し、少子化にもかかわらず中学受験市場は活況である(ごく一部だが小学校受験も)。教育熱が高まる背景には大学進学世代が母親となったこと、中学受験世代の親が増えたこと、仕事などでグローバル化やIT化の進展に対峙する世代が親となったことで教育を重視する志向が一層高まっていることなどがあげられる。経済力があり、高学歴夫婦も多いであろうパワーカップルは教育市場の主要プレイヤーと見られる。
- パワーカップルなどの共働き世帯では時短を叶える商品やサービスの利用にも積極的だ。食洗機や洗濯乾燥機などの時短家電や食の宅配、家事代行、シッターサービスなどの需要は底堅い。最近では子どもの保育をしながら、絵やピアノなどを教える「習い事シッター」なども登場し、従来から存在するサービスの高付加価値化も進んでいるようだ。
- 生活や働き方の選択肢が増す中で、誰もが共働きやパワーカップルを目指す必要はない。ただ、女性の経済力が増すことは日本経済を活性化させることにはつながる。消費性向は男性より女性の方が高く、女性の方が消費意欲は旺盛であるため、働く女性が増え、収入が増えれば消費は膨みやすい。夫婦世帯単位で見ても、現役世代の世帯収入が増えれば消費に結びつきやすい。仕事と家庭を両立するための就労環境の整備と言うと、消費喚起策としては遠回りのようだが、その効果への期待は大きい。
■目次
1――はじめに
~4割が金融資産4千万円以上を保有するパワーカップル、金融に関わる意識は?
2――金融に関わる意識
~普段から預貯金の金利水準を意識、金融・経済の仕組みに関心ありが6割以上
3――日常における情報源
~「テレビ」と「新聞」が4割で並ぶが、能動的に情報を得る手段が多い傾向
4――お金をかけていきたいもの
~全体的にモノよりコト消費、パワーカップルは旅行や教育、趣味など
5――おわりに
~都市部で加熱する教育市場、共働きの時短需要は堅調、就労環境整備で消費は底上げ
(2023年09月07日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/22 | 家計消費の動向(二人以上世帯:~2025年2月)-物価高の中で模索される生活防衛と暮らしの充足 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
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