「新築マンション価格指数」でみる関西圏のマンション市場動向(2)~タワーマンション価格は2005年対比で約2倍に上昇、足もとでは頭打ち感も。「駅近」の評価が高まる一方、「中心部までのアクセス」の評価はコロナ禍を契機に低下 | ニッセイ基礎研究所
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「新築マンション価格指数」でみる関西圏のマンション市場動向(2)~タワーマンション価格は2005年対比で約2倍に上昇、足もとでは頭打ち感も。「駅近」の評価が高まる一方、「中心部までのアクセス」の評価はコロナ禍を契機に低下
金融研究部 主任研究員 吉田 資
1. はじめに
関西圏の新築マンション価格は、次の3つのフェーズに分類できる。1つ目は、「リーマンショック前までの価格上昇期」(以下、上昇フェーズI)、2つ目は、「リーマンショック後の価格下落期」(以下、下落フェーズII)、3つ目は、「アベノミクス以降の価格上昇期」(以下、上昇フェーズIII)、である。直近2022年の価格指数(2005年=100)は「175.3」となり、過去10年間で+59%上昇した(図表-1)。特に、大阪都心2は過去10年間で+82%上昇し、東京都心と同水準の伸びとなった。
本稿では、「新築マンション価格指数」のサブインデックスとなる「エリア別価格指数」と「タワーマンション価格指数」を算出し、その動向について解説する。また、新築マンション価格の決定構造が分析期間(2005年~2022年)においてどのように変化したかを確認する。
1 吉田資『「新築マンション価格指数」でみる関西圏のマンション市場動向(1)』ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2023年8月16日
2 「大阪都心」:中央区・西区・北区・天王寺区・浪速区・福島区、「大阪郊外」:「大阪都心」を除く18区
2. 「エリア別価格指数」の算出
2022年の価格指数(2005年=100)は、大阪都心が「201.7」、神戸市が「173.9」、大阪郊外が「169.4」、阪神間が「166.9」、北摂が「165.7」となり、大阪都心のみ、関西圏(175.3)を上回る結果となった(図表-2)。
各フェーズにおける価格のピーク時期とボトム時期を確認すると(図表-2)、「上昇フェーズI」では、大阪都心・大阪郊外・阪神間・神戸市が「2008年」に、その後、遅れて北摂が「2009年」にピークを付けた。
「下落フェーズII」では、神戸市が「2010年」にいち早くボトムを付け、その後、北摂と阪神間が「2011年」に、大阪都心と大阪郊外が「2012年」にボトムを付けている。「上昇フェーズIII」では、大阪都心・大阪郊外・北摂が上昇基調を維持しているのに対して、阪神間と神戸市は「2021年」にいったんピークを迎えた可能性がある。
大阪都心は、価格上昇期に最も大きく上昇し、価格下落期に最も大きく下落した。特に、「上昇フェーズIII」では2018年以降大幅に上昇し、通期(2005年~2022年)の上昇率が最大となった。
一方、北摂や神戸市は、価格下落期の下落率が小さく、価格上昇期の上昇率が小さい傾向にあり、相対的に価格ボラティリティの低いエリアだと言える。
これに対して、その他のエリアは減少傾向にある。2005年と2022年を比較すると、大阪郊外は約6千戸から約3千戸に、北摂は約4千戸から約2千戸に、阪神間は約4千戸から約1千戸に、神戸市は約5千戸から約1千戸となり、この間、1/2~1/5の水準に減少している(図表-4)。
3 不動産経済研究所によれば、新築分譲マンションの新規供給戸数(2005年~2022年)は、「大阪市」で約13.6万戸(関西圏の34%)、「北摂」で約5.3万戸(同14%)、「阪神間」で約3.7万戸(同10%)、「神戸市」で約4.6万戸(同12%)。
4 大阪府の以下の自治体: 「吹田市」・「豊中市」・「茨木市」・「高槻市」・「池田市」・「箕面市」・「摂津市」・「島本町」・「能勢町」・「豊能町」
5 兵庫県の以下の自治体: 「尼崎市」・「西宮市」・「芦屋市」・「宝塚市」・「伊丹市」・「川西市」
6 作成手法は『「新築マンション価格指数」でみる東京23区の市場動向(1)』3章を参照されたい。
3. 「タワーマンション価格指数」の算出
「関西圏タワーマンション価格指数」は、2015年まで「関西圏」の価格指数とほぼ同水準で推移していたが、2016年以降、大幅に上昇し、2021年に「198.7」に達した。2022年の価格指数は「195.8」となり、関西圏(175.3)を大きく上回る結果となった(図表-7)。
関西圏におけるタワーマンションの新規供給戸数を確認すると、2013年以降、減少傾向で推移しており、2013年の約5千戸から2022年の約2千戸へ大幅に減少した。また、「タワーマンション」の新規供給戸数に占める割合は、2013年の23%をピークに低下し10%台前半で推移している(図表-9)。
関西圏では、タワーマンションの新規供給戸数が減少傾向にあり、良好な需給環境を背景に、タワーマンション価格は2005年対比で約2倍に上昇した。一方、2022年は「195.8」(前年比▲1%)となり9年ぶりに下落した。アベノミクス以降、関西圏のタワーマンション価格は東京23区を上回るペースで上昇した反動もあって、足もとで頭打ちした可能性があり、今後の動向を注視したい。
7 建築基準法において、高さ60mを超える建築物については、特殊な構造計算が必要とされ、国土交通大臣による認定が必要と定められている。高さ60㎡を超えるのが概ね20階以上であることから、一般的に、20階建て以上のマンションは「超高層マンション」と呼称される 。そこで、階建て20階以上のマンションを「タワーマンション」と定義し、価格指数を作成した。
8 「持ち家」でかつ「15階建て以上の共同住宅」に居住する世帯
9 日本経済新聞「大阪で都心高層マンション「爆買い」 路線価、近畿は2年連続上昇 「買える限界近い」指摘も」2017/7/3
10 日本経済新聞「タワマンの波、ミナミも 大阪キタの競争激化で 外国人富裕層も的」2023/6/23
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- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
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一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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