2023年07月31日

米個人所得・消費支出(23年6月)-個人消費は前月、市場予想を上回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を下回る一方、個人消費は市場予想を上回る

7月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は6月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月改定値:+0.5%)と+0.4%から上方修正された前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.5%を下回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.5%(前月改定値:+0.2%)と+0.1%から上方修正された前月、市場予想の+0.4%を上回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.4%(前月改定値:+0.1%)とこちらも横這いから上方修正された前月、市場予想の+0.3%を上回った(図表5)。貯蓄率1は4.3%(前月:4.6%)と前月から▲0.3%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月:+0.1%)と前月を上回った一方、市場予想(+0.2%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.2%(前月:+0.3%)と前月を下回った一方、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+3.0%(前月:+3.8%)と前月を下回った一方、市場予想(+3.0%)に一致した。コア指数は+4.1%(前月:+4.6%)と前月、市場予想(+4.2%)を下回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:堅調な個人消費が持続していることを確認

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)は6月が+0.5%と年初から6ヵ月連続でプラスとなった(図表1)。年初から財消費は月毎にプラスとマイナスが入り乱れるなど回復に陰りがみられる一方、サービス消費はプラスが続いており、個人消費を牽引する状況が続いている。

個人所得(前月比)は6月が+0.3%と前月を下回ったものの、労働需給の逼迫を背景にした賃金・給与の堅調な伸びに支えられ、底堅い伸びを維持しており、個人消費が好調を維持する要因となっている。これらの結果、貯蓄率は6月が4.6%と前月から低下したものの、23年2月以降は4.3%~4.6%の狭いレンジでの推移している。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は、前年同月比で総合指数と物価の基調を示すコア指数ともに6月は小幅ながら伸びが鈍化した。もっとも、コア指数は+4.1%とFRBの物価目標(2%)を大幅に上回っており、依然として物価上昇圧力が続いていることを確認した。

3.所得動向:賃金・給与の堅調な伸びが持続

6月の個人所得(前月比)は労働需給の逼迫を背景に賃金・給与が+0.6%(前月:+0.5%)となり堅調な伸びが持続した(図表2)。また、自営業者所得が+0.3%(前月:+0.3%)と前月並みの伸びを維持した一方、利息配当収入が▲0.2%(前月:+0.5%)、移転所得が▲0.1%(前月:+0.4%)といずれも前月からマイナスに転じた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、6月の名目が+0.3%(前月:+0.5%)と前月から伸びが鈍化した(図表3)。一方、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)も+0.2%(前月:+0.4%)とこちらも伸びが鈍化した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車・自動車部品が大幅に増加

6月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.8%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じたほか、サービス消費が+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの伸びを維持した(図表4)。

財消費は、耐久財が+1.4%(前月:▲0.1%)、非耐久財が+0.5%(前月:▲0.4%)といずれも前月からプラスに転じた。

耐久財では、娯楽財・スポーツカーが+1.2%(前月:+1.4%)と前月から伸びは鈍化したものの、好調を維持したほか、家具・家電が+0.9%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速したほか、自動車・自動車部品が+2.0%(前月:▲1.8%)と前月からプラスに転じた。

非耐久財では、食料・飲料が▲0.2%(前月:+0.3%)と前月からマイナスに転じた一方、衣料・靴が+0.5%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速したほか、ガソリン・エネルギーが+2.4%(前月:▲5.7%)と前月からプラスに転じて非耐久財消費全体を押し上げた。

サービス消費は、住宅・公共料金が+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの伸びを維持した一方、医療サービスが+0.2%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化した。また、輸送サービスが▲1.0%(前月:+1.7%)、外食・宿泊が▲0.1%(前月:+1.0%)と前月からマイナスに転じた。一方、娯楽サービスが+1.8%(前月:▲0.9%)と前月からプラスに転じたほか、金融サービスが+1.7%(前月:+0.5%)と前月から伸びが加速するなど、区々の動きとなった。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格が前年同月比で4ヵ月連続のマイナス

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+0.6%(前月:▲3.8%)と前月からプラスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は▲0.1%(前月:+0.2%)とこちらは前月から小幅ながらマイナスに転じた。

前年同月比は、エネルギー価格指数が▲18.9%(前月:▲13.3.%)と4ヵ月連続のマイナスとなったほか、15年9月以来のマイナス幅となった(図表7)。食料品価格指数は+4.6%(前月:+5.8%)とこちらは72ヵ月連続のプラスとなったものの、前月から伸びが鈍化した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年07月31日「経済・金融フラッシュ」)

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