2023年07月28日

米GDP(23年4-6月期)-前期比年率+2.4%と4期連続のプラス成長。前期、市場予想を上回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:成長率は4期連続のプラス成長。前期、市場予想を上回る

7月27日、米商務省の経済分析局(BEA)は23年4-6月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。4-6月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で+2.4%(前期:+2.0%)と4期連続のプラス成長となったほか、低下を見込んだ前期および、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+1.8%も上回った(図表1・2)。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)/(図表2)米国のGDP(項目別)
4-6月期の成長率を需要項目別にみると、個人消費が前期比年率+1.6%(前期:+4.2%)と前期から伸びが鈍化したほか、政府支出も+2.6%(前期:+5.0%)と伸びが鈍化した(図表2)。また、住宅投資が▲4.2%(前期:▲4.0%)と9期連続のマイナス成長となったほか、前期からマイナス幅が小幅ながら拡大した。さらに、外需の成長率寄与度が▲0.12%ポイント(前期:0.58%ポイント)と前期からマイナスに転じた。

一方、設備投資が+7.7%(前期:+0.6%)と前期から大幅に伸びが加速したほか、前期に成長率を大幅に押し下げた在庫投資の成長率寄与度が+0.14%ポイント(前期:▲2.14%ポイント)と小幅ながらプラスに転じて成長率を押し上げた。

これらの結果、GDPから在庫投資と外需を除いた国内最終需要は前期比年率+2.3%(前期:+3.5%)と前期から伸びが鈍化しており、国内需要の伸びは前期から鈍化した。

このように、当期は個人消費が大幅な伸びとなった前期から伸びは鈍化したものの、堅調な伸びを維持して好調な個人消費が続いていることを示したほか、民間設備投資が前期から大幅に伸びが加速するなど、FRBによる大幅な金融引締めや3月上旬のシリコンバレー銀行の破綻を契機に広がった金融不安・信用収縮の実体経済に与える影響が限定的に留まっており、米国経済が好調を維持していることを確認する結果と言えよう。
 
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

2.結果の詳細:

(個人消費・個人所得)自動車・自動車部品が前期の反動で減少
4-6月期の個人消費は、財消費が前期比年率+0.7%(前期:+6.0%)と前期から大幅に伸びが鈍化したほか、サービス消費も+2.1%(前期:+3.2%)と前期から伸びが鈍化した(図表3)。

財消費では、耐久財が+0.4%(前期:+16.3%)と大幅な伸びとなった前期の反動もあって大幅に伸びが鈍化した一方、非耐久財が+0.9%(前期:+0.5%)と小幅ながら伸びが加速した。

耐久財では、娯楽・スポーツカーが+10.0%(前期:+5.9%)と前期から伸びが大幅に加速した一方、家具・家電が+1.2%(前期:+1.6%)と前期から伸びが鈍化した。さらに、自動車・自動車部品が▲7.5%(前期:+45.2%)と大幅に伸びとなった前期の反動もあって前期からマイナスに転じた。

非耐久財は、衣料・靴が▲6.0%(前期:▲2.5%)と前期からマイナス幅が拡大したほか、食料・飲料が▲0.2%(前期:▲1.5%)とこちらは前期からマイナス幅が縮小した。一方、ガソリン・エネルギーが+13.1%(前期:+2.6%)と前期から伸びが加速して全体を押し上げた。

サービス消費は、住宅・公共料金が+3.2%(前期:▲0.7%)、輸送サービスが+9.8%(前期:▲0.6%)と前期からプラスに転じたほか、金融サービスが+5.9%(前期:+2.1%)と前期から伸びが加速した。一方、医療サービスが+2.8%(前期:+10.0%)、娯楽サービスが+1.8%(前期:+6.1%)と前期から伸びが鈍化したほか、飲食・宿泊サービスが▲2.9%(前期:+4.5%)と前期からマイナスに転じた。

一方、実質可処分所得は前期比年率+2.5%(前期:+8.5%)と4期連続のプラスとなったものの、前期から伸びはが鈍化した(図表4)。貯蓄率は4.4%(前期:4.3%)と4期連続の上昇となり、21年10-12月期(7.3%)以来の水準に回復した。
(図表3)米国の実質個人消費支出(寄与度)/(図表4)米国の実質可処分所得伸び率と貯蓄率
(民間投資)設備機器投資が大幅に回復
4-6月期の民間設備投資は建設投資が前期比年率+9.7%(前期:+15.8%)と高い伸びを維持したものの、前期から伸びが鈍化した一方、設備機器投資が+10.8%(前期:▲8.9%)と前期からプラスに転じたほか、知的財産投資も+3.9%(前期:+3.1%)と前期から小幅ながら伸びが加速した(図表5)。
(図表5)米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 建設投資では、商業・医療が前期比年率▲1.7%(前期:▲1.9%)と2期連続でマイナスも小幅にマイナス幅が縮小したほか、製造業が+94.0%(前期:+77.9%)と前期から伸びが加速した。一方、資源関連が▲21.5%(前期:+13.5%)、電力・通信も▲5.1%(前期:+11.8%)と前期からマイナスに転じた。

設備機器投資は、産業機器が▲2.6%(前期:+4.0%)と前期からマイナスに転じた一方、情報処理関連が+1.4%(前期:▲6.1%)と3期ぶりにプラスに転じたほか、輸送機器が+55.8%(前期:▲24.1%)と前期から大幅なプラスに転じて設備機器投資全体を押し上げた。

知的財産投資では、娯楽・文学等が▲1.2%(前期:+5.5%)と前期からマイナスに転じた一方、研究・開発が+1.7%(前期:+1.8%)、と前期並みの伸びを維持したほか、ソフトウエアが+7.6%(前期:+4.1%)と前期から伸びが加速した。

最後に住宅投資は、戸建てが前期比年率+0.8%(前期:▲18.2%)と5期ぶりにプラスに転じた一方、集合住宅が+1.5%(前期:+14.9%)と前期から伸びが鈍化した。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)非国防支出が減少
4-6月期の政府支出は、連邦政府が前期比年率+0.9%(前期:+6.0%)、州・地方政府が+3.6%(前期:+4.4%)といずれもプラス成長を維持したものの、前期から伸びが鈍化した(図表6)。

連邦政府支出では、国防関連支出が+2.5%(前期:+2.5%)と前期並みの伸びを維持した一方、非国防支出が▲1.1%(前期:+10.5%)と前期に大幅な伸びとなった反動もあって、小幅ながら4期ぶりにマイナスに転じた。
(貿易)輸出が大幅に減少
 4-6月期の輸出入は輸出が前期比年率▲10.8%(前期:+7.8%)と前期から大幅なマイナスに転じ外需の成長率寄与度を押し下げる方向に働いた一方、輸入が▲7.8%(前期:+2.0%)とマイナスに転じてこちらは成長率寄与度を押し上げる方向に働いたものの、輸出のマイナス寄与が勝り、全体として外需の成長率寄与度は前期からマイナスに転じた。

輸出を仔細にみると、サービス輸出が+1.8%(前期:▲1.3%)と前期からプラスに転じた一方、財輸出が▲16.3%(前期:+12.3%)と大幅なマイナスに転じて輸出を押し下げた(図表7)。

財輸出では、自動車関連が+12.1%(前期:+8.2%)と前期から伸びが加速した。一方、食料・飲料が▲31.9%(前期:+28.0%)、消費財(食料、自動車関連除く)が▲28.9%(前期:+56.5%)、資本財(自動車関連除く)が▲5.0%(前期:横這い)と前期からマイナスに転じた。さらに、石油・石油製品が▲19.5%(前期:+18.8%)と前期からマイナスに転じたこともあって工業用原料が▲19.0%(前期:▲0.9%)と前期からマイナス幅が拡大した。

サービス輸出では、旅行が+14.6%(前期:+20.9%)と前期から伸びが鈍化した一方、輸送が+9.1%(前期:+3.4%)と前期から伸びが加速した。

一方、輸入は財輸入が▲8.0%(前期:+2.3%)、サービス輸入が▲6.8%(前期:+0.4%)といずれも前期からマイナスに転じた(図表8)。

財輸入では、自動車関連が+13.2%(前期:+22.6%)と前期からは伸びが鈍化したものの、プラスを維持した一方、工業用原料が▲13.9%(前期:+0.9%)、消費財(食料、自動車関連除く)が▲12.7%(前期:+3.0%)と前期からマイナスに転じた。さらに、食料・飲料が▲13.9%(前期:▲13.1%)、資本財(自動車関連除く)が▲7.1%(前期:▲6.2%)と前期からマイナス幅が拡大した。

サービス輸入は、旅行が▲8.9%(前期:+35.7%)と前期からマイナスに転じたほか、輸送が▲21.1%(前期:▲8.8%)と前期からマイナス幅が拡大した。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
(物価・名目値)PCE価格指数は総合、コアともに前期から前期比、前年同期比が低下
4-6月期のGDP価格指数は前期比年率+2.2%(前期:+4.1%)と前期、市場予想(同+3.0%)を下回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+4.7%(前期:+6.1%)と実質GDP成長率とは対照的に前期から低下した(図表9)。

一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+2.6%、前年同期比+3.7%(前期:+4.1%、+4.9%)と前期比、前年同期比ともに前期から低下した(図表10)。また、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は、前期比年率+3.8%、前年同期比+4.4%(前期:+4.9%、+4.6%)となり、こちらも総合指数同様、前期比、前年同期比ともに低下した。このため、PCE価格の総合指数、コア指数ともに前期から物価上昇圧力が緩和していることを確認した。もっとも、総合指数、コア指数ともに前年同期比でFRBの物価目標(2%)を大幅に上回る状況が続いている。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
 
2 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年07月28日「経済・金融フラッシュ」)

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