2023年07月28日

新築マンション市場の動向(首都圏・全国2023年6月)~最高値更新、今後は供給戸数減少が加速の見通し

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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1. 首都圏新築マンション市場では高値更新と供給減が続いている

不動産経済研究所によると、2023年6月の首都圏新築マンション平均価格は6,550万円(前年同月比+1.6%)、発売戸数は1,906戸(▲0.4%)、初月契約率は67.8%(前月比▲6.5%、前年同月比+0.2%)であった。また、2023年上半期(1-6月)の平均価格は8,873万円(前年同期比+36.3%)と最高値を更新、発売戸数は1万502戸(▲17.4%)となった。
 
月次のマンションの平均価格や発売戸数は、2023年3月に首都圏新築マンションの平均価格が1億4,360円(うち東京23区は2億1,750円)をつけるなど、平均を構成する物件の立地やグレードによってぶれが大きくなる。傾向を見るために発売価格と発売戸数それぞれを直近12ヶ月の移動平均に変換してみると、2023年6月の価格は7,924万円(前年同月比+12.6%、2013年同月比+57.5%)、発売戸数は2,280戸(▲17.3%、▲44.3%)となった(図表1)。首都圏新築マンション市場では、価格の高値更新と供給戸数の減少が続いている。
図表1 首都圏新築マンションの発売戸数と平均価格(月次、12ヶ月移動平均)
価格と供給の変動の程度はエリア別で異なる。2023年上半期の平均価格の前年同期比は、東京23区が+60.2%、東京都下が+3.5%、神奈川県が+7.6%、埼玉県が▲14.7%、千葉県が+0.8%となった。東京都下、千葉県については価格上昇の勢いに陰りが見え、埼玉県は停滞している。

また、10年前の2013年同期比では、東京23区が+129.9%、東京都下が+34.3%、神奈川県が+37.1%、埼玉県が+32.0%、千葉県が+27.0%となっている。10年間で東京23区の新築マンションの価格が約2.3倍になる一方で、それ以外のエリアは約1.3倍にとどまっている。㎡単価についても東京23区の上昇率が前年同期比+51.5%、2013年同期比+126.4%と突出している(図表2)。
 
一方で2023年上半期の供給戸数の前年同期比は、東京23区が▲9.0%、東京都下が▲18.5%、神奈川県が▲36.3%、埼玉県が▲23.1%、千葉県が▲2.3%となった。

また2013年同期比は、東京23区が▲55.0%、東京都下が▲63.7%、神奈川県が▲61.5%、埼玉県が▲61.4%、千葉県が▲43.4%となった(図表3)。10年間の供給減は東京23区も5割強の減少と大きいが、東京都下、神奈川県、埼玉県は6割強の減少とさらに大きくなっている。 
 
つまり、今の首都圏新築マンション価格の上昇は、東京23区の新築マンション価格上昇の寄与が大きい。また、新築マンションの価格上昇に対する需要の減少度合いを見ると、東京23区は価格を上げても相対的に需要の減少が小さく、東京都下・神奈川県・埼玉県は価格を上げると相対的に需要の減少が大きいといえる。
図表2 首都圏新築マンションの単価と総額の変化率(エリア別、2023年上期)/図表3 首都圏新築マンションの供給戸数の変化率 
(エリア別、2023年上期)

2. 新築マンションの価格は戸当たり価格の見かけ以上に上昇している

2. 新築マンションの価格は戸当たり価格の見かけ以上に上昇している

また、一般的なマンション広告では、価格総額は大きく表記されるが、単価についてはあまり言及されないため、最近マンション購入を検討し始めた人の中には面積の縮小傾向に気づいていない人がいるかもしれない。
 
首都圏新築マンションの面積は、東京23区が横ばい、その他のエリアが縮小傾向である。長谷工総合研究所によると、2022年の平均面積は、東京23区が63.96m2(前年比▲1.1%)、東京都下が65.77m2(▲3.7%)、神奈川県が66.34m2(▲1.8%)、埼玉県が67.77m2(▲0.3%)、千葉県が69.52m2(▲0.7%)となった。60m2を下回る間取りでは売行きが悪くなるため、価格水準の高い東京であっても一定の規模は確保されている(図表4)。
 
首都圏新築マンションの単価は、東京23区の上昇が著しく、埼玉と千葉でも上昇傾向である。2022年の分譲単価は、東京23区が1,288千円/m2(前年比+0.5%)、東京都下が796千円/m2(前年比+7.4%)、神奈川県が816千円/m2(前年比+4.6%)、埼玉県が777千円/m2(前年比+9.9%)、千葉県が662千円/m2(前年比+7.5%)となった(図表5)。
 
面積と単価の戸当たり価格への影響をみると、東京23区はm2単価の上昇が価格上昇の原因となっている。面積は大きく変わっておらず、戸当たり価格の価格上昇も見かけの通りである。

これに対し、東京都下と神奈川は面積が縮小する一方で、単価については一進一退で、面積の縮小が原因で価格が上昇している。また埼玉と千葉は面積の縮小とm2単価の上昇の相乗効果で価格が上昇している。つまり、面積縮小が進むエリアでは新築マンションの戸当たり価格上昇の見かけ以上に価格が上昇している。
図表4 首都圏マンションの平均面積(エリア別)/図表5 首都圏マンションの単価(エリア別)

3. 住宅価格がさらに上がると思う人が買っている

3. 住宅価格がさらに上がると思う人が買っている

このように価格上昇が続く背景の一つには、投資需要の高まりがあるようだ。リクルートが2022年12月に行った調査によると、2022年に住宅の購入を検討した人のうち「住宅の買い時だ」と思っていた人が全体の44%おり、2019年の54%より▲10%と減少している。しかし、この人たちに買い時だと思った理由を尋ねると、「これからは、住宅価格が上昇しそう」と答えた人が47%おり、2019年の26%よりも増えていた。

一方で「住宅ローン金利が安い」と考える人は2019年の41%から35%に、「住宅価格がお手頃」と考える人は29%から25%に、「ローン減税が有利」と考える人は18%から14%に減っている(図表6)。
 
一見矛盾しているように見えるが、新築マンション価格が高まり続けていることを合わせて考えると、答えが見えてくるのではないだろうか。つまり、標準的な価格帯のマンションについては割高に感じる人が増えて売れ行きが鈍る一方で、市場全体の一部である立地も設備もよい高価格帯のマンションについては資金的に余裕のある人が「さらに価格が高くなる」と考えて積極的に購入し、市場全体では平均価格が引き上げられていると考える。
図表6 住宅が「買い時だ」と答えた人44%が、そのように思った理由(複数回答)
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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