2023年07月27日

パワーカップル世帯の動向(2)生活基盤の状況-小学生の子を持つ30・40代、DINKS40・50代、大企業勤務夫婦、4割が金融資産4千万円以上

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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3居住形態~パワーカップルというより共働き世帯の特徴が色濃い、マンション居住と持ち家がやや多い
居住形態については、全体では約半数が持ち家(戸建て)(48.9%)で、次いで社宅・官舎(27.1%)、持ち家(集合住宅)(21.4%)と続く(図表7)。なお、集合住宅も含めた持ち家保有率は70.3%である。
図表7 共働き妻の年収階級別に見た居住形態 妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)でも約半数が持ち家(戸建て)(47.2%で全体より▲1.7%pt)で、次いで社宅・官舎(26.4%で同▲0.7%pt)、持ち家(集合住宅)(24.5%で+3.1%pt)と続き、持ち家保有率は71.7%(同+1.4%pt)であり、全体と大きな違いはない。

つまり、パワーカップルは7割以上が持ち家に住み、(マンション住まいがやや多い様子がうかがえるものの)必ずしも一般的な共働き世帯と比べて目だった特徴があるわけではない。

この背景には、そもそも共働き世帯自体が、利便性重視志向の高さなどから居住形態に共通の特徴を持つことがあげられる。専業主婦世帯や単身世帯を含む当調査の調査対象全体では、居住形態は持ち家(戸建て)(48.8%で共働き世帯より▲0.1%pt)、賃貸住宅(30.5%で同+3.4%pt)、持ち家(集合住宅)(18.2%で同▲3.2%pt)、社宅・官舎(2.5%で同▲0.1%pt)の順に多く、持ち家保有率は67.0%(同▲3.3%pt)で、共働き世帯は全体と比べて持ち家保有率がやや高く、マンション居住がやや多い傾向がある。

また、パワーカップルの持ち家率が共働き世帯の中で目立って高いわけではない背景には、前述の通り、比較的若い年代が多いことも影響しているのだろう。なお、持ち家保有率は、必ずしも妻の年収に比例して高まるわけではないため、年代やライフステージの影響の方が大きい様子がうかがえる。
4金融資産~8割以上は1千万円以上、約4割は4千万円以上、妻が高年収ほど多い
金融資産(預貯金や株式・公社債や保険などの金融資産をすべて合計した金額)については、全体で最多は100万円未満(17.1%)で、次いで700万円~1,000万円(14.0%)、500万円~700万円未満と4,000万円以上(どちらも12.3%)と続き、1,000万円以上は40.2%を占める(次頁図表8)。

一方、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)では圧倒的に4,000万円以上(39.6%)が多く約4割を占める。次いで2,000万円~3,000万円(15.1%)、1,000万円~2,000万円と3,000万円~4,000万円(どちらも13.2%)と続き、1,000万円以上は81.1%を占める。なお、妻の年収が高いほど、1,000万円以上の保有割合は高まる傾向がある。

つまり、パワーカップルの8割以上は1,000万円以上、約4割は4,000万円以上の金融資産を保有しており、一般的な共働き世帯とは大きな差がある様子がうかがえる。
図表8 共働き妻の年収階級別に見た金融資産/図表9 共働き妻の年収階級別に見た家計管理者
5家計管理者~妻が半数、夫婦での共同管理は35.8%、妻が高収入ほど共同管理は増加
家計管理者については、全体では圧倒的に自分(58.2%)が多く約6割を占め、次いで夫婦での共同管理(24.5%)、配偶者(16.4%)と続く(図表9)。また、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)でも最多は自分(50.9%で全体より▲7.3%pt)で、次いで夫婦での共同管理(35.8%で同+11.3%pt)、配偶者(11.3%)と続く。なお、妻の年収が高いほど、夫婦での共同管理が増える傾向がある。なお、過去の分析4でも、共働き世帯では妻が高収入ほど、妻が管理する世帯よりも夫婦共同管理、あるいは夫婦がそれぞれ支出を分担する形が増える傾向があった。
 
4 久我尚子「共働き世帯の家計分担-若いほど妻が高年収ほど共同管理、夫婦それぞれの財布も持つ」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2019/6/21)

3――おわりに

3――おわりに~将来を担う世代の就業環境改善の延長にはパワーカップルの姿も

本稿ではニッセイ基礎研究所の調査に基づき、パワーカップルの生活基盤の状況を見たところ、「小学生の子を持つ30・40代」「DINKSの40・50代」「独立子を持つ50・60代」「子ども2人以上」「大企業勤務の正規雇用者夫婦」「ややマンション志向」「4割は4千万円以上の金融資産保有」など、マーケティングにおけるペルソナを設定可能な条件がいくつか見えてきた。容易に想起できるものも多いだろうが、一般的な共働き世帯と比べて子どもの数が多いことやマンション志向がさほど高いわけではないことを意外に感じたり、役員である妻が約1割存在することや金融資産の金額などに、あらためてパワーを感じた方も多いのではないだろうか。

生活や働き方の選択肢が増す中で、誰もが共働きやパワーカップルを目指す必要はないだろう。一方でパワーカップルとなるにしても、女性が出産・子育て期も正規雇用の仕事を継続できるような環境整備や若い世代の経済基盤の安定化等が課題であり、実は、現在、将来を担う世代の就業環境の改善を図る上での課題と重なる。次稿では、パワーカップルの消費について捉える予定だ。
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

(2023年07月27日「基礎研レポート」)

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