- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 消費者行動 >
- パワーカップル世帯の動向(2)生活基盤の状況-小学生の子を持つ30・40代、DINKS40・50代、大企業勤務夫婦、4割が金融資産4千万円以上
パワーカップル世帯の動向(2)生活基盤の状況-小学生の子を持つ30・40代、DINKS40・50代、大企業勤務夫婦、4割が金融資産4千万円以上

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
居住形態については、全体では約半数が持ち家(戸建て)(48.9%)で、次いで社宅・官舎(27.1%)、持ち家(集合住宅)(21.4%)と続く(図表7)。なお、集合住宅も含めた持ち家保有率は70.3%である。

つまり、パワーカップルは7割以上が持ち家に住み、(マンション住まいがやや多い様子がうかがえるものの)必ずしも一般的な共働き世帯と比べて目だった特徴があるわけではない。
この背景には、そもそも共働き世帯自体が、利便性重視志向の高さなどから居住形態に共通の特徴を持つことがあげられる。専業主婦世帯や単身世帯を含む当調査の調査対象全体では、居住形態は持ち家(戸建て)(48.8%で共働き世帯より▲0.1%pt)、賃貸住宅(30.5%で同+3.4%pt)、持ち家(集合住宅)(18.2%で同▲3.2%pt)、社宅・官舎(2.5%で同▲0.1%pt)の順に多く、持ち家保有率は67.0%(同▲3.3%pt)で、共働き世帯は全体と比べて持ち家保有率がやや高く、マンション居住がやや多い傾向がある。
また、パワーカップルの持ち家率が共働き世帯の中で目立って高いわけではない背景には、前述の通り、比較的若い年代が多いことも影響しているのだろう。なお、持ち家保有率は、必ずしも妻の年収に比例して高まるわけではないため、年代やライフステージの影響の方が大きい様子がうかがえる。
金融資産(預貯金や株式・公社債や保険などの金融資産をすべて合計した金額)については、全体で最多は100万円未満(17.1%)で、次いで700万円~1,000万円(14.0%)、500万円~700万円未満と4,000万円以上(どちらも12.3%)と続き、1,000万円以上は40.2%を占める(次頁図表8)。
一方、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)では圧倒的に4,000万円以上(39.6%)が多く約4割を占める。次いで2,000万円~3,000万円(15.1%)、1,000万円~2,000万円と3,000万円~4,000万円(どちらも13.2%)と続き、1,000万円以上は81.1%を占める。なお、妻の年収が高いほど、1,000万円以上の保有割合は高まる傾向がある。
つまり、パワーカップルの8割以上は1,000万円以上、約4割は4,000万円以上の金融資産を保有しており、一般的な共働き世帯とは大きな差がある様子がうかがえる。
家計管理者については、全体では圧倒的に自分(58.2%)が多く約6割を占め、次いで夫婦での共同管理(24.5%)、配偶者(16.4%)と続く(図表9)。また、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)でも最多は自分(50.9%で全体より▲7.3%pt)で、次いで夫婦での共同管理(35.8%で同+11.3%pt)、配偶者(11.3%)と続く。なお、妻の年収が高いほど、夫婦での共同管理が増える傾向がある。なお、過去の分析4でも、共働き世帯では妻が高収入ほど、妻が管理する世帯よりも夫婦共同管理、あるいは夫婦がそれぞれ支出を分担する形が増える傾向があった。
4 久我尚子「共働き世帯の家計分担-若いほど妻が高年収ほど共同管理、夫婦それぞれの財布も持つ」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2019/6/21)
3――おわりに~将来を担う世代の就業環境改善の延長にはパワーカップルの姿も
生活や働き方の選択肢が増す中で、誰もが共働きやパワーカップルを目指す必要はないだろう。一方でパワーカップルとなるにしても、女性が出産・子育て期も正規雇用の仕事を継続できるような環境整備や若い世代の経済基盤の安定化等が課題であり、実は、現在、将来を担う世代の就業環境の改善を図る上での課題と重なる。次稿では、パワーカップルの消費について捉える予定だ。
(2023年07月27日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/22 | 家計消費の動向(二人以上世帯:~2025年2月)-物価高の中で模索される生活防衛と暮らしの充足 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/04/14 | 「トキ消費」の広がりとこれから-体験が進化、共有が自然な消費スタイル、10年後は? | 久我 尚子 | 研究員の眼 |
2025/04/08 | 2025年の消費動向-節約一服、コスパ消費から推し活・こだわり消費の広がり | 久我 尚子 | 基礎研マンスリー |
2025/04/01 | 「こづかい」が20年で7割減少?-経済不安、キャッシュレスやサブスクなど消費のデジタル化の影響も | 久我 尚子 | 基礎研レター |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【パワーカップル世帯の動向(2)生活基盤の状況-小学生の子を持つ30・40代、DINKS40・50代、大企業勤務夫婦、4割が金融資産4千万円以上】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
パワーカップル世帯の動向(2)生活基盤の状況-小学生の子を持つ30・40代、DINKS40・50代、大企業勤務夫婦、4割が金融資産4千万円以上のレポート Topへ