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パワーカップル世帯の動向-コロナ禍でも増加、夫の年収1500万円以上でも妻の約6割は就労

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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- 世帯の所得の状況を見ると、総世帯の年間平均所得は552万円、中央値は437万円であり、世帯年収2千万円以上の高所得世帯は全体の1.3%(65万世帯)を占め、属性としては世帯主の年齢が50・60歳代、南関東・東海や大都市居住者で多い。
- パワーカップルを含む共働き夫婦の年収は、妻の年収200万円以上では夫婦の年収は比例関係にあり、年収1千万以上の妻の8割は夫も1千万円以上である。高所得同士あるいは低所得同士が夫婦となることで夫婦(世帯)間の経済格差の存在がうかがえる。一方、妻の年収200万円未満では夫の扶養控除枠を意識しているため、必ずしも夫婦の収入は比例関係にはない。
- パワーカップルを夫婦共に年収700万円以上の世帯と定義すると、近年、世帯数は増加傾向にあり、2020年のコロナ禍でも前年より増え、34万世帯、共働き世帯の2.1%を占める。うち約6割は夫婦と子どもの核家族世帯、約3割が夫婦世帯である。
- 夫の収入が高いほど妻の就業率が下がる「ダグラス・有沢の法則」の成立状況を見ると、夫の年収によらず妻の就業率は全体的に上昇しているものの、年収400万円以上の夫では年収とともに妻の就業率は低下する様子が確認でき、現在でも同法則は成立する。ただし、2020年では年収1,500万円以上の夫では妻の就業率は61.5%まで上昇している。
- パワーカップル増加の背景には、仕事と家庭の両立環境の整備が進み、若い世代ほど男女平等意識が強まるなど価値観が変容したことで、若い世代で共働き世帯が増えていることがあげられる。パワーカップルは全体からすればごく僅かだが、消費意欲は旺盛と見られ、消費市場へのインパクトは無視できない。今後も一部の消費市場を活性化させ、その規模はじわりと拡大していくと見られる。
- また、これまでも様々なマーケティングの文脈で言われてきた通り、女性の方が男性より消費意欲が旺盛だ。よって、女性が働き続けられる環境が整備され、その収入が増えれば個人消費の底上げにつながる。また、夫婦世帯単位で見ても、現役世代の世帯収入が増えれば消費に結びつきやすい。仕事と家庭を両立するための就労環境の整備と言うと、消費施策としては遠回りのようだが、その効果への期待は大きい。
■目次
1――はじめに~新型コロナ禍で収入減少も見られる中、パワーカップルは?
2――世帯の所得分布の全体像
~2千万円以上の高所得世帯は1.3%、50・60歳代や大都市で多い
3――パワーカップル世帯の動向
~コロナ禍でも増加、夫の年収1500万円以上でも妻の約6割は就労
1|共働き夫婦の年収分布
~高収入の妻ほど高収入の夫、ただし扶養控除枠を意識する妻も
2|パワーカップル世帯数の推移
~コロナ禍でも引き続き増加、2020年で34万世帯、共働き世帯の2.1%
3|夫の収入別に見た妻の就労状況
~夫の年収が1500万円以上でも妻の約6割は就労
4――おわりに~遠回りに見えるが就労環境の整備こそ有効な消費喚起策
(2021年11月18日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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