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商業施設売上高の長期予測

金融研究部 主任研究員 佐久間 誠
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3――コロナ禍における消費構造の変化:コト消費からモノ消費へのシフトが進む
3 消費支出はこづかい、交際費、仕送り金を除く。
4 二人以上の世帯。また、本稿では特段の断りがない限り、二人以上を対象とする。
「コト消費からモノ消費へのシフト」は多くの品目で続いているが、一部のモノ消費では反動減も見られる。消費支出額を品目別に確認すると、コト消費は「旅行関連サービス」が2020年に前年比▲64.9%、2021年に▲9.6%、「外食」が2020年に▲24.7%、2021年に▲2.2%と、低迷が続く(図表8)。一方、「外食」の代替先としてモノ消費の「食料」が増加し、2020年に+6.9%、2021年に▲0.7%となった。また、在宅勤務の普及などにより自宅での滞在時間が増加したことで支出額を伸ばした「家電」は2020年に+11.7%、2021年に▲3.9%、「家具・寝具」は2020年に+7.7%、2021年に▲9.6%となった。こうした在宅環境改善のための耐久財消費への支出は2020年で概ね一巡したと言える。
2021年に入っても、高年層では「コト消費からモノ消費へのシフト」が続いているものの、若年層と中年層ではモノ消費からコト消費へ回帰する動きがみられる。年齢別にモノ消費割合の推移を確認すると、「65~69歳」が2019年の63.3%から2020年に69.3%に上昇し、2021年でも69.2%と高水準を維持するなど、65歳以上の高年層では、2020年に上昇した後も高止まりしている(図表9)5,6。これに対して、「34歳以下」のモノ消費割合は2019年に63.8%、2020年に69.5%と上昇したものの、2021年に67.7%とやや低下するなど、64歳以下の若年層・中年層では、2020年に上昇したモノ消費割合が2021年には低下している。
5 モノ消費割合は、消費支出を品目ごとにモノ消費とコト消費に分類することで計算した。
6 世帯主の年齢。また、本稿では特段の断りがない限り、「年齢別」は世帯主の年齢別を指す。
4――コロナ禍における消費チャネルの変化:ECシフトの加速
7 物販系分野の消費者向けEC市場規模。「電子商取引に関する市場調査」では、物販系、サービス系、デジタル系の3分野の消費者向けEC市場規模が公表されている。2020年のEC市場規模は、物販系12.2兆円(前年比+21.7%)、サービス系4.6兆円(▲36.1%)、デジタル系2.5兆円(+14.9%)と、コロナ禍による外出自粛を背景に物販系が急拡大する一方、旅行サービスの急減に伴い、サービス系分野が大幅に減少した。3分野合計のEC市場規模は19.3兆円(▲0.4%)と、横ばいとなった。
8 2020年9月にEC支出額は前年比+21.9%と一時的に減速した。
日本でEC化が進んでいる品目は、「書籍、映像・音楽ソフト」(EC化率43.0%)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(同37.5%)、「生活雑貨、家具、インテリア」(同26.0%)などである(図表14)。これらの品目の特徴として、劣化しにくく、品質が一定かつ比較しやすいことなどが挙げられる。また、「衣類・服装雑貨等」のECは、実物が確認できない、試着できないなどの短所が指摘されてきたが、2020年のEC化率は19.4%と2015年の9.0%から上昇し、着実にEC化が進んでいる。一方、「食品、飲料、酒類」(同3.3%)、「自動車、自動二輪車、パーツ等」(同3.2%)はEC化が遅れている。劣化しやすい、品質が不均一、高額または専門知識が必要な品目などである。
(2023年07月21日「ニッセイ基礎研所報」)

03-3512-1778
- 【職歴】 2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行) 2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX) 2015年9月 ニッセイ基礎研究所 2019年1月 ラサール不動産投資顧問 2020年5月 ニッセイ基礎研究所 2022年7月より現職 【加入団体等】 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター ・日本証券アナリスト協会検定会員
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