2023年05月25日

3つのドーナツで読み解くコロナ禍の人口移動

金融研究部 主任研究員 佐久間 誠

文字サイズ

■要旨

都市は中心・周辺構造を形成する傾向にあり、その間の人口移動はドーナツに擬えて説明されることが多い。本稿では、総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」とKDDI「KDDI Location Analyzer」のデータをもとに、大中小3つのドーナツを描き、コロナ禍における国内の人口移動の変化やその特徴を分析した。結果は、以下の通りである。
 
(1)大ドーナツ(東京圏vs. 地方):コロナ禍では、地方から東京圏の人口流入が減少したものの、東京一極集中の動きは続いている。年内にもコロナ禍前の勢いを回復する可能性があり、その場合、その他地方の20代の動向が鍵を握る。
 
(2)中ドーナツ(東京23区vs. 周辺部):東京23区と周辺部間の人口移動をみると、コロナ禍前から都心回帰が一服しており、コロナ禍では郊外化の動きが加速した。20代はコロナ禍の影響が一巡し、都心への流入が続く一方、在宅勤務の普及などを背景に子育て世代の周辺部への流出が継続する可能性がある。
 
(3)小ドーナツ(駅近vs. 駅遠):コロナ禍を経ても、東京都の駅近エリアから駅遠エリアへのシフトは起きておらず、20代から30代の若年層ほど、駅近エリアを選好する傾向がある。

■目次

1――人口移動のドーナツ構造
2――大ドーナツ: コロナ禍における東京一極集中の変化
  1|年次データでみる東京圏と地方間の人口移動
  2|月次データでみる東京圏と地方間の人口移動
  3|転出元別でみる東京圏と地方間の人口移動
  4|転出元別・年齢別でみる東京圏と地方間の人口移動
3――中ドーナツ: コロナ禍における都心回帰の変化
  1|年次データでみる東京23区と周辺部間の人口移動
  2|月次データでみる東京23区と周辺部間の人口移動
  3|転出元別でみる東京23区と周辺部間の人口移動
  4|転出元別・年齢別でみる東京23区と周辺部間の人口移動
4――小ドーナツ: コロナ禍における駅近選好の変化
  1|東京都の住宅街の居住者数
  2|東京都の駅近・駅遠エリアにおける居住者数の変化率
  3|年齢別でみる東京都の駅近・駅遠エリアの居住者数の変化率
5――おわりに
Xでシェアする Facebookでシェアする

金融研究部   主任研究員

佐久間 誠 (さくま まこと)

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

経歴
  • 【職歴】  2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行)  2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX)  2015年9月 ニッセイ基礎研究所  2019年1月 ラサール不動産投資顧問  2020年5月 ニッセイ基礎研究所  2022年7月より現職 【加入団体等】  ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター  ・日本証券アナリスト協会検定会員

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【3つのドーナツで読み解くコロナ禍の人口移動】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

3つのドーナツで読み解くコロナ禍の人口移動のレポート Topへ