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気候指数 [日本全国版] の作成-日本の気候の極端さは1971年以降の最高水準
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
気候変動問題が議論されるようになって久しい。温室効果ガスの排出に伴う地球温暖化は、豪雨やスーパー台風等の極端な気象の頻発、南極やグリーンランドの氷床やアフリカ山岳地域等の氷河の融解、ヨーロッパなどでの熱波や干ばつの発生、各地での大規模森林火災の多発など、地球環境にさまざまな影響をもたらしている。
ただ、ニュース報道等で極端な気象や災害など1つ1つの事象をみることはできても、「国や地域全体でどれくらい極端さが高まっているのか」― 気候変動の状況、を把握することは簡単ではない。そこで、こうした気候変動の状況を指数化して、その動きを把握しようとする取り組みが、北米やオーストラリアのアクチュアリーの間で始まっている。ヨーロッパでも、検討が進められている。
本稿では、これらの先行事例を参考にしながら、日本で気候指数を作成するとしたら、どのように行うべきか ― すなわち、初めての日本全体の気候指数の作成 ― に取り組むこととしたい。
本稿が、気候変動問題について、読者の関心を高める一助となれば幸いである。
■目次
1――気候指数の目的
1|気候指数には慢性リスク要因の定量化が求められる
2|海外ではアクチュアリーが気候指数を開発しているケースもある
2――北米の気候指数
1|北米を12の地域に分けて、地域ごとに指数を開発
2|月ごとと季節ごとの指数がある
3|指数はゼロを基準に、プラスとマイナスの乖離度の大きさで表される
4|6つの項目と合成指数で、気候変動の推移をとらえる
5|ACIの合成指数は上昇傾向
3――北米の気候リスク指数
1|ACRIバージョン1.0の対象地域はアメリカのみ
2|ACRIバージョン1.0は財産の損害のみ
3|損害額を対数換算して、4つの変数の回帰式で表すモデルを構築
4|地域レベルの推定の安定度は低い
5|ACRIは、損失額から参照期間中の平均損失額を差し引いて計算する
6|ACRIは、近年、変動が激しくなってきている
4――オーストラリアの気候指数
1|オーストラリアを12の地域に分けて、地域ごとに指数を設定
2|季節単位で、単年と5年移動平均の指数が設けられている
3|指数は、参照期間からの乖離度の大きさで表される
4|AACI合成指数の計算には、高温、降水、海面水位の指数しか用いない
5|AACIの合成指数は上昇傾向
5――日本版の作成-主な検討ポイント
1|どの項目を指数化するか?―高温、低温、降水、乾燥、強風、湿度、海面水位を指数化
2|元データとして何を用いるか?―気象庁の気象データと潮位データを使用
3|参照期間をどの期間に設定するか?―1971~2000年に設定
4|季節だけではなく月の指数も作るか?―月の指数も作る
5|どのように地域区分を設定するか?―気象庁の気候区分をもとに、12の地域区分を設定
6|指数をどのように算定するか?―参照期間中の平均からの乖離度として算定する
7|閾値をどのように設定するか?―90%とする
8|7つの項目について、指数を作成する
9|合成指数は、高温、降水、湿度、海面水位の4つの指数の平均とする
6――気候指数の計算結果
1|多くの地域区分で合成指数は上昇傾向
7――おわりに (私見)
《 注記 》気候指数計算に用いた気象データ、潮位データについて
※ 本稿は2022年9月8日、12月28日および2023年4月6日発行の「基礎研レポート」を加筆・修正したものである。
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
公式SNSアカウント
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