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- パワーカップル世帯の動向(1)-コロナ禍でも引き続き増加傾向、子育て世帯が約6割
パワーカップル世帯の動向(1)-コロナ禍でも引き続き増加傾向、子育て世帯が約6割
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
- まず、総世帯の所得の状況を見ると、年間平均所得金額は546万円、中央値は423万円である。1,200万円以上の高所得世帯は全体の7.2%(390万世帯)であり、地域別には南関東(32.1%)や東海(16.1%)、近畿(13.2%)、都市規模別には大都市(政令指定都市と東京23区)(33.8%)で多い。よって、夫婦共に年収700万円以上のパワーカップル世帯もこれらの地域に多く居住していると見られる。
- パワーカップルを含む共働き世帯は1,646万世帯(総世帯の29.4%)で、夫婦の年収の関係を見ると、妻が高年収であるほど夫も高年収であり(2022年では年収1,000万円以上の妻の72.7%が夫も年収1,000万円以上)、夫婦(世帯)間の経済格差 の存在がうかがえる。一方、妻の年収200万円未満では、必ずしも同様ではなく、夫が一定程度の年収を得ているために扶養控除枠を意識して働く妻が増える様子もある。
- 夫婦共に年収700万円以上のパワーカップルは2022年で37万世帯(総世帯の0.66%、共働き世帯の2.25%)で新型コロナ禍でも堅調に増えている。内訳は最多は「夫婦と子」世帯(57.6%)、次いで「夫婦のみ」世帯(39.4%)が多い。パワーカップルはDINKS(Double Income No Kids)という印象がかもしれないが、実際にはDEWKS(Double Employed With Kids)が多い。
- パワーカップル増加の背景には、仕事と家庭の両立環境の整備が進み、出産後や育児期もキャリア形成を継続する女性が増えていることや価値観の変容があげられる。共働きが多数派となる中で、若い世代ほど「仕事も」「結婚も」「子どもも」望む女性が増えている 。30代以下は男子生徒も家庭科が必修科目となった世代でもあり、男女が肩を並べて社会で活躍することを自然なこととして捉える意識は強まっている。
- 女性が働き続けられる環境が整備され、その収入が増えれば、個人消費の底上げにつながる。夫婦世帯として見ても、共働き世帯が増えて現役世代の世帯収入が増えれば消費に結びつきやすい。就労環境の整備というと、消費喚起策としては遠回りなようだが、確実のある施策と言えるのではないか。
■目次
1――はじめに~「女性の活躍推進」から10年、パワーカップルも増えている?
2――世帯の所得分布
~年間平均所得は546万円、1,200万円以上は7.2%、南関東や大都市で多い
3――パワーカップル世帯の動向~コロナ禍でも引き続き増加傾向、約6割は子育て世帯
1|共働き夫婦の年収分布
~高収入の妻ほど夫も高収入、ただし扶養控除枠を意識する妻も
2|パワーカップル世帯数の推移
~2022年で37万世帯、共働きの2.3%、子育て世帯が約6割
3|夫の収入別に見た妻の就労状況
~夫の年収が1500万円以上でも59.6%の妻は就業
4――おわりに~遠回りに見えるが就労環境の整備こそ有効な消費喚起策
(2023年07月13日「基礎研レポート」)
03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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