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2023年07月07日
1―内需主導のプラス成長
2023年1-3月期の実質GDPは、前期比0.7%(年率2.7%)となった。海外経済の減速を背景に輸出が前期比▲4.2%の大幅減少となり、外需が成長率を押し下げたが、民間消費(前期比0.5%)、設備投資(同1.4%)が高い伸びとなり、公的需要も増加したことから、内需主導のプラス成長となった。
2022年度の実質GDP成長率は1.4%(2021年度は2.6%)、名目GDP成長率は2.0%(2021年度は2.4%)といずれも2年連続のプラスとなった。
2022年度の実質GDP成長率は1.4%(2021年度は2.6%)、名目GDP成長率は2.0%(2021年度は2.4%)といずれも2年連続のプラスとなった。
2―新型コロナは5類に移行
新型コロナウイルス感染症は、5/8に感染症法上の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」に移行した。これにより期待されるのが、外食、宿泊などの対面型サービス消費とインバウンド需要の回復だ。
コロナ禍の行動制限によって急速に落ち込んだ対面型サービス消費は、2022年度には緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されなかったことからは持ち直しの動きが続いた。しかし、2023年4月時点の対面型サービス消費の水準はコロナ禍前(2019年平均)の8割強にとどまっており、今後の増加余地は大きい。
インバウンド需要はコロナ禍でほぼ消失した状態が続いていたが、2022年10月以降、段階的に水際対策が緩和されてきたことを受けて急回復している。2023年4月の訪日外客数は194.9万人、2019年同月比▲33.4%となり、コロナ禍前(2019年平均)の7割弱の水準まで回復した。コロナ禍前には全体の約3割を占めていた中国からの訪日客数は2019年同月比15%の低水準にとどまっている。しかし、日本の水際対策はすでに終了しており、中国が日本への団体旅行を解禁すれば、中国からの訪日客数は急回復するだろう。
訪日外客数以上に回復が顕著なのが、訪日外国人の旅行消費額だ。2023年1-3月期の訪日外国人旅行消費額は2019年同期比▲11.9%の1兆146億円となった。訪日外客数に比べて減少幅が小さいのは、為替レートがコロナ禍前に比べて円安水準になっていることから、一人当たり消費額が21.2万円、2019年同期比43.8%の大幅増加となっているためだ。
水際対策の終了に伴い、先行きも訪日外客数の回復が続き、2023年中には瞬間風速(月次の年率換算値)でコロナ禍前の水準(2019年の3188万人)を突破する可能性が高い。訪日外客数が年間で過去最高を更新するのは2024年になる可能性が高いが、円安による一人当たり消費額の押し上げが続くため、訪日外国人旅行消費額を5兆円にするという政府目標は2023年に達成されるだろう[図表1]。
コロナ禍の行動制限によって急速に落ち込んだ対面型サービス消費は、2022年度には緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されなかったことからは持ち直しの動きが続いた。しかし、2023年4月時点の対面型サービス消費の水準はコロナ禍前(2019年平均)の8割強にとどまっており、今後の増加余地は大きい。
インバウンド需要はコロナ禍でほぼ消失した状態が続いていたが、2022年10月以降、段階的に水際対策が緩和されてきたことを受けて急回復している。2023年4月の訪日外客数は194.9万人、2019年同月比▲33.4%となり、コロナ禍前(2019年平均)の7割弱の水準まで回復した。コロナ禍前には全体の約3割を占めていた中国からの訪日客数は2019年同月比15%の低水準にとどまっている。しかし、日本の水際対策はすでに終了しており、中国が日本への団体旅行を解禁すれば、中国からの訪日客数は急回復するだろう。
訪日外客数以上に回復が顕著なのが、訪日外国人の旅行消費額だ。2023年1-3月期の訪日外国人旅行消費額は2019年同期比▲11.9%の1兆146億円となった。訪日外客数に比べて減少幅が小さいのは、為替レートがコロナ禍前に比べて円安水準になっていることから、一人当たり消費額が21.2万円、2019年同期比43.8%の大幅増加となっているためだ。
水際対策の終了に伴い、先行きも訪日外客数の回復が続き、2023年中には瞬間風速(月次の年率換算値)でコロナ禍前の水準(2019年の3188万人)を突破する可能性が高い。訪日外客数が年間で過去最高を更新するのは2024年になる可能性が高いが、円安による一人当たり消費額の押し上げが続くため、訪日外国人旅行消費額を5兆円にするという政府目標は2023年に達成されるだろう[図表1]。
3―春闘賃上げ率は30年ぶりの高水準へ
連合の「2023春季生活闘争 第6回回答集計結果」によれば、2023年の平均賃上げ率は3.66%、ベースアップに相当する「賃上げ分」は2.14%となった。
例年8月頃に厚生労働省から公表される春闘賃上げ率は2022年の2.20%から大きく上昇し、1993年(3.89%)以来の高水準となることがほぼ確実となった。
2023年の春闘賃上げ率が30年ぶりの高さとなったことを受けて、2023年度の所定内給与はベースアップと同じ2%台まで伸びが高まるだろう。所定外給与、特別給与と合わせた現金給与総額は足もとの前年比1%程度から2023年度前半に2%台まで伸びを高めた後、2024年度にかけて2%台半ばから後半の伸びが続くことが予想される。
実質賃金は、消費者物価の上昇ペース加速を主因として2022年4月以降、前年比でマイナスが続いている。今後、名目賃金の伸びは高まるものの、消費者物価上昇率が高止まりするため、実質賃金の下落は当面続く可能性が高い。実質賃金上昇率がプラスに転じるのは、消費者物価上昇率の鈍化が見込まれる2024年に入ってからとなるだろう[図表2]。
例年8月頃に厚生労働省から公表される春闘賃上げ率は2022年の2.20%から大きく上昇し、1993年(3.89%)以来の高水準となることがほぼ確実となった。
2023年の春闘賃上げ率が30年ぶりの高さとなったことを受けて、2023年度の所定内給与はベースアップと同じ2%台まで伸びが高まるだろう。所定外給与、特別給与と合わせた現金給与総額は足もとの前年比1%程度から2023年度前半に2%台まで伸びを高めた後、2024年度にかけて2%台半ばから後半の伸びが続くことが予想される。
実質賃金は、消費者物価の上昇ペース加速を主因として2022年4月以降、前年比でマイナスが続いている。今後、名目賃金の伸びは高まるものの、消費者物価上昇率が高止まりするため、実質賃金の下落は当面続く可能性が高い。実質賃金上昇率がプラスに転じるのは、消費者物価上昇率の鈍化が見込まれる2024年に入ってからとなるだろう[図表2]。
4―実質GDP成長率の見通し
海外経済の減速を背景に輸出、生産の弱い動きが続く中でも、景気の腰折れは回避されている。これは、国内需要が底堅く、外需の悪化をカバーしているためである。
当研究所では、米国は累積的な金融引き締めの影響で2023年後半にマイルドな景気後退に陥り、ユーロ圏は2023年を通して年率ゼロ%台の低成長が続くと予想している。このため、輸出が景気の牽引役となることは当面期待できず、日本経済は先行きについても内需中心の成長が続くことが予想される。
2023年4-6月期は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴い、外食、旅行などの対面型サービスを中心に民間消費が好調を維持し、水際対策の終了を受けたインバウンド需要の急回復を主因として財貨・サービスの輸出が増加に転じることが見込まれる。ただし、民間在庫変動が前期の反動で成長率を押し下げることから、実質GDPは前期比年率1.1%と1-3月期の同2.7%から大きく減速するだろう。2023年後半は、米国の景気後退に伴い輸出が減少に転じることを主因としてゼロ%台へとさらに減速するが、海外経済の持ち直しが見込まれる2024年入り後は輸出の回復を主因として成長率が高まるだろう。
実質GDP成長率は、2023年度が1.0%、2024年度が1.6%と予想する。
当研究所では、米国は累積的な金融引き締めの影響で2023年後半にマイルドな景気後退に陥り、ユーロ圏は2023年を通して年率ゼロ%台の低成長が続くと予想している。このため、輸出が景気の牽引役となることは当面期待できず、日本経済は先行きについても内需中心の成長が続くことが予想される。
2023年4-6月期は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴い、外食、旅行などの対面型サービスを中心に民間消費が好調を維持し、水際対策の終了を受けたインバウンド需要の急回復を主因として財貨・サービスの輸出が増加に転じることが見込まれる。ただし、民間在庫変動が前期の反動で成長率を押し下げることから、実質GDPは前期比年率1.1%と1-3月期の同2.7%から大きく減速するだろう。2023年後半は、米国の景気後退に伴い輸出が減少に転じることを主因としてゼロ%台へとさらに減速するが、海外経済の持ち直しが見込まれる2024年入り後は輸出の回復を主因として成長率が高まるだろう。
実質GDP成長率は、2023年度が1.0%、2024年度が1.6%と予想する。
5―消費者物価の見通し
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2023年1月に前年比4.2%と1981年9月以来41年4ヵ月ぶりの高い伸びとなった後、政府による電気・都市ガス代の負担緩和策の影響で2月に3.1%と伸び率が大きく縮小したが、4月には年度替わりの値上げが幅広い品目で実施されたこともあり3.4%まで伸びを高めた。
物価上昇の主因となっていたエネルギー価格は2023年2月以降、前年比でマイナスとなっているが、日銀が基調的な物価変動を把握するために重視している「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は、2023年4月には前年比4.1%まで伸びを高めている。
電気代は、電力大手7社が申請していた電気料金の値上げが認可されたことから6月に大幅に上昇し、10月には政府の負担緩和策の縮減により一段と上昇する。さらに、6月以降は、燃料油価格の激変緩和策の補助が段階的に縮減されることから、横ばいが続いていたガソリン、灯油価格は上昇することが見込まれる。エネルギー価格は前年の水準が高かったこともあり、2023年中は前年比で下落が続くが、2024年入り後には上昇に転じるだろう。
資源・穀物価格の一服などから輸入物価の上昇には歯止めがかかっている。このため、今後は原材料コストを価格転嫁する動きが徐々に弱まり、財価格の上昇率は鈍化することが見込まれる。
一方、下落が続いていたサービス価格は2022年8月に上昇に転じた後、2023年4月には前年比1.7%まで伸びを高めている。サービス価格は賃金との連動性が高く、2023年度のベースアップが2%程度であることを考慮すれば、サービス価格の上昇率は2%台まで高まる可能性が高い。これまで長期にわたって値上げが行われていなかった分、今後のサービス価格の上昇ペースは非常に速いものとなる可能性がある。
コアCPI上昇率は財価格を中心に鈍化傾向が続くが、日銀が物価安定の目標としている2%を割り込むのは2024年度入り後と予想する。財・サービス別には、2022年度は物価上昇のほとんどがエネルギー、食料を中心とした財の上昇によるものだったが、2023年度は財、サービスが概ね同程度の寄与となった後、2024年度はサービス中心の上昇へと変わっていくだろう。
コアCPI上昇率は、2022年度の前年比3.0%の後、2023年度が同2.7%、2024年度が同1.3%と予想する[図表3]。
物価上昇の主因となっていたエネルギー価格は2023年2月以降、前年比でマイナスとなっているが、日銀が基調的な物価変動を把握するために重視している「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は、2023年4月には前年比4.1%まで伸びを高めている。
電気代は、電力大手7社が申請していた電気料金の値上げが認可されたことから6月に大幅に上昇し、10月には政府の負担緩和策の縮減により一段と上昇する。さらに、6月以降は、燃料油価格の激変緩和策の補助が段階的に縮減されることから、横ばいが続いていたガソリン、灯油価格は上昇することが見込まれる。エネルギー価格は前年の水準が高かったこともあり、2023年中は前年比で下落が続くが、2024年入り後には上昇に転じるだろう。
資源・穀物価格の一服などから輸入物価の上昇には歯止めがかかっている。このため、今後は原材料コストを価格転嫁する動きが徐々に弱まり、財価格の上昇率は鈍化することが見込まれる。
一方、下落が続いていたサービス価格は2022年8月に上昇に転じた後、2023年4月には前年比1.7%まで伸びを高めている。サービス価格は賃金との連動性が高く、2023年度のベースアップが2%程度であることを考慮すれば、サービス価格の上昇率は2%台まで高まる可能性が高い。これまで長期にわたって値上げが行われていなかった分、今後のサービス価格の上昇ペースは非常に速いものとなる可能性がある。
コアCPI上昇率は財価格を中心に鈍化傾向が続くが、日銀が物価安定の目標としている2%を割り込むのは2024年度入り後と予想する。財・サービス別には、2022年度は物価上昇のほとんどがエネルギー、食料を中心とした財の上昇によるものだったが、2023年度は財、サービスが概ね同程度の寄与となった後、2024年度はサービス中心の上昇へと変わっていくだろう。
コアCPI上昇率は、2022年度の前年比3.0%の後、2023年度が同2.7%、2024年度が同1.3%と予想する[図表3]。
(2023年07月07日「基礎研マンスリー」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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