2023年06月16日

ロシアGDP(2023年1-3月期)-前年比伸び率のマイナス幅縮小が続く

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年同期比のマイナス幅が縮小

6月15日、ロシア連邦統計局は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(未季節調整系列)】
2023年1-3月期の前年同期比伸び率は▲1.8%、予想1(同▲1.9%)を上回り、前期(同▲2.7%)からマイナス幅が縮小した(図表1・2)

(図表1)ロシアの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ロシアの実質GDP成長率(供給項目別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:鉱業伸び率がマイナスに

ロシアの23年1-3月期の実質GDP伸び率は▲1.7%となり、5月17日に公表されていた予備推計値(▲1.9%)からやや上方修正された。また、季節調整系列の前期比は0.7%となり、22年10-12月期(前期比0.5%)から加速し、3四半期連続でのプラス成長となった。

執筆時点では需要別のデータは未公表であるため、以下では産業別のデータ等を確認していく。

産業別の伸び率を前年同期比で見ると、第一次産業と第三次産業(金融・不動産)がプラス成長となったが、第二次産業と第三次産業(その他)はマイナスとなっている(図表3)。一方、前期比で見ると、第三次産業(その他)がプラス成長となったが、他の第一次産業、第二次産業、第三次産業(金融・不動産)はいずれもマイナス成長となった(図表4)。

細かい産業の伸び率は、前年同期比では、水道業(▲10.8%)、卸・小売業(▲10.1%)、その他サービス業(▲30.6%)が大幅に落ち込む一方、飲食・居住サービス(9.1%)、建設業(7.0%)のプラス幅が大きかった。

前期比では、芸術・娯楽サービス(▲20.2%)、その他サービス(▲7.4%)、第一次産業(▲3.9%)の落ち込み幅が大きい一方、卸・小売業(7.5%)、運輸業(4.3%)が成長率を押し上げた。

なお、西側諸国の制裁で注目される原油生産に関連する鉱業は前年比▲4.9%、前期比▲2.4%となっており、いずれもマイナス成長になっている。
(図表3)ロシアの実質GDP成長率(23年1-3月期)
(図表4)ロシアの実質GDPの動向(供給項目別)/(図表5)ロシアの名目および実質成長率
1-3月期の名目成長率は前年同期比▲1.1%(22年10-12月期は5.3%)、GDPデフレータ伸び率は前年同期比0.7%(同8.2%)といずれも大幅に低下している(図表5)。物価については、国内の消費者物価もウクライナ侵攻から1年以上が過ぎたことを受けて、ベース効果から3月以降急減速している(2月10.99%→3月3.51%)。
(図表6)ロシアの財政収支 なお、経済発展省が公表する月次のGDP成長率(前年比)を見ると、23年以降は1月▲2.7%、2月▲2.6%、3月▲0.7%、4月3.3%となり、こちらもベース効果もあり、4月は前年比プラスの伸び率に転じている。

ロシア経済は、西側諸国による経済制裁結果もあって財政面などでは厳しさを増している状況にあるが(図表6)、実質成長率では比較的底堅い推移が見られる状況にある。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年06月16日「経済・金融フラッシュ」)

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