ロシアの物価状況（23年5月）－2か月連続の前年比2％台　|ニッセイ基礎研究所

1．結果の概要：2か月連続の2％台

6月12日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。

【総合指数（23年5月）】
・前年同月比は2.51％、市場予想¹（2.46％）より上振れ、前月（2.31％）から上昇（図表1）
・前月比は0.31％、市場予想（0.21％）より上振れ、前月（0.38％）から低下

【コア指数²（23年5月）】
・前年同月比は2.12％、前月（1.99％）から上昇した（図表2）
・前月比は0.52％、前月（0.31％）から上昇した

¹ bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
² 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2．結果の詳細：サービス物価上昇率は再加速し、前年比2桁台に

5月のロシアのインフレ率は前年比で2.51％となり、4月の2.31％からやや上昇した。なお、インフレ率はベース効果で3月以降は急低下している。

インフレ率を大分類別に見ると、5月の前年比伸び率は食料品が▲0.91％、財（非食料品）が0.16％、サービスが11.02％となっている。食料品は2か月連続のマイナス、財は3月以降、ゼロ％前後での推移となっており、ベース効果もあってディスインフレ傾向が鮮明だが、サービスは再び2桁台の伸び率に上昇した。寄与度で見ると、サービスのみが全体の物価を押し上げている構図となっている（図表1）。

5月の前月比伸び率は、総合指数で0.31％、コア指数で0.52％となった。総合指数はコロナ禍前のペース程度で推移しているが、5月のコア指数の伸び率はやや高めだった（例えば2018年の前月比伸び率は平均で総合指数が約0.35％、コア指数が約0.30％、図表3）。

別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率（消費者物価上昇率）を見ると、前週比上昇では、最新の6月5日時点の前週比で0.21％となり、過去と比較するとやや高めの伸び率となった。ただし、極端に高いインフレ圧力は見られない（図表4）。

ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待（1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある）は、5月は10.8％と依然として10％を超える状況が続いている。過去に、前年比インフレ率が2％台だった17年後半や20年初には期待インフレ率が8％前後まで低下したが、今回は、当時ほど期待インフレ率が低下していない（図表5）。なお、期待インフレ率が実際のインフレ率ほど大幅に低下しない現象は15年前後の高インフレ時と同じである。

品目別の上昇率を見ると³（図表6）、5月は前年比で海外旅行サービス（48.64％）、旅客サービス（15.91％）、その他サービス（14.54％）の伸び率が高い一方、テレビ（▲21.90％）、砂糖（▲16.42％）、通信機器（▲14.18％）が大きく下落している。

前月比では、その他サービス（11.22％）、砂糖（6.04％）、海外旅行サービス（3.83％）、旅客サービス（3.46％）の上昇率が相対的に大きい一方、卵（▲6.89％）、青果物（▲3.80％）、テレビ（▲3.00％）の下落率が相対的に大きかった。

各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると（図表7・8）、前年比上昇率への寄与が大きい品目は住居・公益サービス（1.25％ポイント）、海外旅行サービス（0.34％ポイント）、旅客サービス（0.33％ポイント）、家庭サービス（0.29％ポイント）となった。一方、青果物（▲0.38％ポイント）、パスタ・穀物（▲0.14％ポイント）、通信機器（▲0.12％ポイント）、電化製品（▲0.11％ポイント）は前年比でのマイナス寄与が相対的に大きい。

一方、前月比上昇率の寄与ではその他サービス（約0.17％ポイント）、肉製品（約0.08％ポイント）、旅客サービス（約0.07％ポイント）の押し上げ寄与が大きく、青果物（約▲0.16％ポイント）の押し下げ寄与が大きかった。