2023年06月02日

ブラジルGDP(2023年1-3月期)-農業生産が好調で前期比1.9%に加速

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比1.9%に加速

6月1日、ブラジル地理統計院(IBGE)は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(2023年1-3月期)】
前年同期比伸び率(未季節調整値)は4.0%、市場予想1(3.1%)を上回り、前期(1.9%)から加速した(図表1・2)。
前期比伸び率(季節調整値)は1.9%、予想(1.2%)を上回り、前期(▲0.1%)からプラスに転じた。

(図表1)ブラジルの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ブラジルの実質GDP成長率(産業別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:第一次産業が大幅に拡大

23年1-3月期の実質GDP伸び率は前期比1.9%(季節調整値、年率換算8.0%)で、10-12月期のマイナス成長(前期比▲0.1%、年率換算▲0.2%)からプラスに回帰した。GDP水準はコロナ禍前(19年10-12月期)と比較して6.4%となった(図表4・5)。

成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費が0.2%(前期:0.4%)、政府消費が0.3%(前期:0.3%)、投資▲3.4%(前期:▲1.3%)、輸出が▲0.4%(前期:3.3%)、輸入が▲7.1%(前期:▲3.1%)となった。内需の中心である消費や投資は冴えない状況が続いているが、GDPの控除項目である輸入が大幅に落ち込んだことがGDP成長率を押し上げた形となった。

なお、コロナ禍前との対比では、個人消費が4.1%、政府消費が2.4%、投資が14.8%、輸出が12.3%、輸入▲1.9%だった。コロナ禍以降、投資や輸出が成長をけん引してきたが、ブラジルでは高インフレを受けて中銀が政策金利を22年8月にかけて13.75%まで引き上げた後、この高い水準で据え置いており、直近では投資の減速感が強くなっている(図表4)。
(図表3)業種別のGDP伸び率
(図表4)ブラジルの実質GDPの動向(需要項目別)/(図表5)ブラジルの実質GDPの動向(供給項目別)
産業分類別に実質GDPの伸び率を見ると(図表3・5)、第一次産業は前期比21.6%(前期:▲0.9%)、第二次産業は同▲0.1%(前期:▲0.3%)、第三次産業は同0.6%(前期:0.2%)だった。大豆やトウモロコシなど主要農作物の収穫が好調で第一次産業が急拡大したことがGDPを押し上げた。一方、第二次産業は2四半期連続でのマイナス成長となった。より細かい業種では、第二次産業の製造業が前期比▲0.6%で3四半期連続のマイナス成長、建設業(▲0.8%)が2四半期連続のマイナス成長だった。第三次産業は情報・通信(▲1.4%)のマイナス幅が大きかったが、運輸(1.2%)や金融(1.2%)は高めの成長率を記録した。
(図表6)ブラジルの名目および実質成長率 23年1-3月期の名目成長率は前年同期比10.4%(前期:11.9%)となった。名目と実質成長率の差(デフレータに相当)は6.4%(前期:10.0%)と大幅に低下し、コロナ禍前の水準にかなり近づいた(図表6)。また、交易条件に関しては、1-3月期は輸出デフレータと輸入デフレータのいずれも下落するなかで、わずかに改善している。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年06月02日「経済・金融フラッシュ」)

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