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- 株主総会とIT技術の進展(1)-株主総会招集通知と参考書類(原則)
コラム
2023年06月09日
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今回は通常の株主総会の招集について解説を行う。株主総会の招集については2022年9月1日から施行された改正会社法により「電子提供制度」が設けられた。これは定款に株主総会資料を電子提供することを定めた株式会社においては、株主総会招集にあたって書面で株主総会の参考資料を送付することを要さないとするものである。
本稿では「電子提供制度」を理解するための前振りとして、このような定款規定を持たず電子提供制度を利用していない株式会社での株主総会招集の手順について解説を行うこととしたい。このような株式会社でも一定のITの利用は可能となっている点も指摘しておきたい。なお、解説の対象は公開会社(株式に全部または一部の譲渡制限を課していない会社)とする。
さて、従来の株主総会の招集にあたっては、総会会日の二週間まえまでに招集の通知を株主に発送しなければならない(会社法(以下、法)299条)。取締役会を設置している会社において、この通知は書面で行うことが必要である(法299条2項2号)。
通知の記載事項は図表2の通りである。これらの事項は取締役会で定める (法298条1項、図表2)。
本稿では「電子提供制度」を理解するための前振りとして、このような定款規定を持たず電子提供制度を利用していない株式会社での株主総会招集の手順について解説を行うこととしたい。このような株式会社でも一定のITの利用は可能となっている点も指摘しておきたい。なお、解説の対象は公開会社(株式に全部または一部の譲渡制限を課していない会社)とする。
さて、従来の株主総会の招集にあたっては、総会会日の二週間まえまでに招集の通知を株主に発送しなければならない(会社法(以下、法)299条)。取締役会を設置している会社において、この通知は書面で行うことが必要である(法299条2項2号)。
通知の記載事項は図表2の通りである。これらの事項は取締役会で定める (法298条1項、図表2)。
ここで③書面による議決権行使ができるとしたとき1、あるいは④電磁的方式によって議決権行使ができるとしたときには、⑤で定める事項として、株式総会参考書類、および議決権行使書面(③の場合に限る)を交付する(法301条1項、302条1項)2。そして、株主は③の定めがあるときには議決権行使書面を会社に提出することによって議決権を行使できる(法311条1項)。
また、④の定めがあるときには、株主は会社の承諾を得て、電磁的提供方法によって会社に議決権行使書面に記載すべき事項を提供して、議決権を行使する(電子投票、法312条1項)。この電磁的提供方法は実務的には会社の設置したウェブページへの入力によって行われる3。
これまで述べていたところが会社法の設ける原則的な取り扱いである。既に上記で最後で述べた点(④)がIT技術を利用したものとなっているが、そのほかの点についてIT技術をどこまで活用することができるのかを以下で解説する。結論から言えばある程度のIT技術の活用はできるが、前提として「株主の個別同意が必要」とされているため、非常に使いにくい制度になっている。なお、当初述べた通り、昨年施行された電子提供制度は以下の議論からは除いている。
まず、招集通知を電磁的方法で行うことが認められている。ただし、当該株主の個別同意が必要となる(法299条3項)。株主数の多い会社ではあまり実用的ではなく、採用する会社も少ない4。
次に株主総会参考書類の電磁的提供については、上記の招集通知を電磁的に受領することに同意した株主に対して電磁的に提供できる(メール、HP掲載など、法301条2項)。ただし、株主から請求があった場合には書類を交付しなければならない(同項)。
なお、株主総会参考書類記載事項の一部は定款に定めることで、株主の同意なしにウェブ開示とすることが可能とされている(規94条)。ただし、議案そのものや事業報告のうちの一定事項などは書面で提供することが必要とされていることから、招集通知の参考書類等の提示がウェブで代替されるというわけではない。
以上をまとめると図表3の通りである。
また、④の定めがあるときには、株主は会社の承諾を得て、電磁的提供方法によって会社に議決権行使書面に記載すべき事項を提供して、議決権を行使する(電子投票、法312条1項)。この電磁的提供方法は実務的には会社の設置したウェブページへの入力によって行われる3。
これまで述べていたところが会社法の設ける原則的な取り扱いである。既に上記で最後で述べた点(④)がIT技術を利用したものとなっているが、そのほかの点についてIT技術をどこまで活用することができるのかを以下で解説する。結論から言えばある程度のIT技術の活用はできるが、前提として「株主の個別同意が必要」とされているため、非常に使いにくい制度になっている。なお、当初述べた通り、昨年施行された電子提供制度は以下の議論からは除いている。
まず、招集通知を電磁的方法で行うことが認められている。ただし、当該株主の個別同意が必要となる(法299条3項)。株主数の多い会社ではあまり実用的ではなく、採用する会社も少ない4。
次に株主総会参考書類の電磁的提供については、上記の招集通知を電磁的に受領することに同意した株主に対して電磁的に提供できる(メール、HP掲載など、法301条2項)。ただし、株主から請求があった場合には書類を交付しなければならない(同項)。
なお、株主総会参考書類記載事項の一部は定款に定めることで、株主の同意なしにウェブ開示とすることが可能とされている(規94条)。ただし、議案そのものや事業報告のうちの一定事項などは書面で提供することが必要とされていることから、招集通知の参考書類等の提示がウェブで代替されるというわけではない。
以上をまとめると図表3の通りである。
このように従来の法規制ではIT技術を利用した株主総会の招集や参考資料の提供は個別同意や定款改正が必要となり、利用しにくい制度である。そこで、株主総会参考資料の作成・交付コスト削減や早期提示などを目的として電子提供制度が導入されたのだが、それは次の研究員の眼で解説する。
1 株主数が1000人以上の会社では原則として③を採用すべきことが求められている(法298条2項)。
2 定時株主総会においては計算書類・事業報告等をあわせて提供する(法437条)。
3 江頭憲治郎「会社法(第8版)」(有斐閣2021年)P362注15参照
4 前記注3p331注4参照
1 株主数が1000人以上の会社では原則として③を採用すべきことが求められている(法298条2項)。
2 定時株主総会においては計算書類・事業報告等をあわせて提供する(法437条)。
3 江頭憲治郎「会社法(第8版)」(有斐閣2021年)P362注15参照
4 前記注3p331注4参照
(2023年06月09日「研究員の眼」)

03-3512-1866
経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2024年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
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