コラム
2023年06月01日

条件付特定外来生物の規制の開始-6月1日から、アカミミガメとアメリカザリガニは、野外に放してはいけない。

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩

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2023年6月1日より、アカミミガメ(この子ガメであるミドリガメ)、アメリカザリガニは「条件付特定外来種」に指定されることになった1

以下説明していくが、一言で言えば、野外に放ってはいけない。
 
アメリカザリガニといえば、田んぼまわりの用水路を覗き込めばごく普通にいる生物、時に大群でいて、つい捕まえたくなるやつというイメージがある。かなり日本全国に定着しているが、水生植物や昆虫を局所的に絶滅に追い込むという。また特有の病源菌による在来種への影響も懸念されている。

アカミミガメ、というかミドリガメの段階では、祭りなどの縁日で売ってる小さい名前の通り緑色のカメで、実際飼っている人も多くいた、というイメージである。こちらもこれまで全国各地に定着してはいるが、在来カメ類との間で競合が生じ、在来カメ類に影響を及ぼしたり、なんでも食べたりするので、在来の生物群集に影響を与えると考えられている(最近になってそう考えられ始めた?)。
 
ところが最近時々耳にするように、これらは外来種であったのだ。

既に外国産ザリガニは、全種が「特定外来生物」(適用除外なし)に指定されている。日本にもともといる在来種のニホンザリガニというのもいるそうだが、これは北海道と東北の一部地域のみに分布しており、本州以南の野外で生息しているザリガニは、多くがアメリカザリガニとみてよい。

そもそも特定外来生物とは、外来生物法(2004年~)に基づき指定された生物で、「海外起源の外来種で、生態系、人の生命、身体、農林水産業への被害を及ぼすもの、そのおそれのあるものの中から指定される生物」である。

最近はニュースや各地の池の水を抜くといったテレビ番組などで、カミツキガメ、ウシガエル、ブルーギル、などはよく耳にするだろうか。また港などから国内に入ってくると、極めて危険ということでニュースに取り上げられることがある、ヒアリ2なども知っている方が多いと思われる。

実際にはもっと多く、2023年5月末現在で、哺乳類(25種類)鳥類(7種類)爬虫類(21種類)両生類(15種類)魚類(26種類)昆虫類(25種類)甲殻類(6種類)クモ・サソリ類(7種類)軟体動物類(5種類)植物(19種類)が、特定外来生物指定されている。

これらは輸入、放出、飼養等、譲渡が禁止されている。そして6月1日からこれに2種類が追加となる(ただし条件付きで)、ということだ。
 
条件付きとなった事情だが、この2種は既に飼育者が非常に多く、単に特定外来生物に指定して飼育等を禁止したり、何らかの届出を義務付けたりすると、「手続きが面倒だから」という理由で野外に放す飼育者が増え、かえって生態系に悪影響を及ぼすおそれがあると予想されたことにある。

そこで、「捕獲」、「一般家庭での飼育」、「無償での譲渡」は許可なしでできることにした、というのが「条件付」特定外来生物であって、規制の一部を当分の間適用除外とする(規制の一部がかからない)生物の通称である。現時点ではこの2種だけである。

他の条件付きでない生物と同様に、「販売・購入」・「頒布」、「それらを目的とした飼育」、「輸入」、「放出」は、禁止される。

罰則は最高で、個人の場合懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金、法人の場合1億円以下の罰金などとなっている。

というわけで、今後もこれまで通り飼うことはできる。しかも申請、許可、届出等の手続きは不要である。しかし、野外に放したり逃がしたりすることは禁止される。適切な飼育を行わなかった結果、自力で逃げ出した場合も違法となることがある。飼い続けることができなくなった場合は、友人、知人、飼い主を探す団体?に譲渡することが勧められている。

要は、既に飼っている人は最後まで責任をもって飼うこと、これから飼ってもよいのだがよく考えてから、というところだ。ちなみにアカミミガメの寿命は20~30年、しかも20~30センチにまで成長する。アメリカザリガニも飼育すれば5年ほど生きる可能性があるという。これだけの間の飼育(餌やり、水替え、日光浴等)ができるかどうかよく考えて下さい、といったところだ。

そして放出はあくまで禁止されているので、場合によっては最後の手段としての殺処分もやむなし、とされている。(冷凍など苦痛が少ない方法で、とまで記載されている。)
 
特定外来生物の扱いには、実際にはいろいろなケースがあって、困ることもあるだろう、例えば、偶然採ってしまった時、どうすればいいか(逃がしてもいいのか?それは放出にはあたらないのか?)。規制の対象かどうかわからない生物を外国から持ち帰ってしまったら?など。結論だけ言うと、前者では、すぐに逃がすのがおすすめらしい(主旨に反する気もするが?)後者は「未判定外来生物」というカテゴリーもあり、基本的には許可なく輸入できないとのことである。

いずれまた、このレポート等で、この話題に触れることもあるだろうが、確実なのは、環境省のホームページ等の情報を見ることだとお勧めしておく。
 
1 環境省HP 日本の外来種対策(以下の各種情報も含めて)         https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/regulation/jokentsuki.html
2 正確な名称は別にあるが、よく耳にする名前で記載した。
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保険研究部   主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1987年 日本生命保険相互会社入社
     ・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
     2012年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年06月01日「研究員の眼」)

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【条件付特定外来生物の規制の開始-6月1日から、アカミミガメとアメリカザリガニは、野外に放してはいけない。】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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