2023年05月29日

米個人所得・消費支出(23年4月)-PCE価格指数は総合、コアともに前月比、前年同月比の伸びが加速

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想に一致した一方、個人消費は市場予想を上回る

5月26日、米商務省の経済分析局(BEA)は4月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.4%(前月:+0.3%)と前月を上回った一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%に一致した(図表1)。個人消費支出は前月比+0.8%(前月改定値:+0.1%)と横這いから上方修正された前月、市場予想の+0.5%を大幅に上回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.5%(前月:横這い)とこちらも前月、市場予想の+0.3%を上回った(図表5)。貯蓄率1は4.1%(前月:4.5%)と前月から▲0.4%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.4%(前月:+0.1%)と前月、市場予想(+0.3%)を上回った。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数も前月比+0.4%(前月:+0.3%)と前月、市場予想(+0.3%)を上回った(図表6)。前年同月比は総合指数が+4.4%(前月:+4.2%)と前月、市場予想(+4.3%)を上回った。コア指数は+4.7%(前月:+4.6%)とこちらも前月、市場予想(+4.6%)を上回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:PCE価格指数は4月に物価上昇圧力が高まったことを示唆

個人消費(前月比)は2月と3月が低位に留まったものの、4月に大幅な上昇となり1月に次いで再び消費のモメンタムが高まっていることを示した(図表1)。
(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 また、貯蓄率が22年9月以来7ヵ月ぶりに低下したことにみられるように、4月は消費の伸びが可処分所得の伸びを上回っており、所得対比でも4月の消費が非常に強かったことを示した。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は、総合指数と物価の基調を示すコア指数ともに前月比、前年同月比ともに前月から伸びが加速しており、4月は物価上昇圧力が高まったことを示唆した。

このため、FRBは6月のFOMC会合で3月上旬のシリコンバレー銀行破綻をきっかけに広がった金融不安や信用収縮の実体経済への影響を見極めるために政策金利を据え置くのか、足元で高まるインフレ圧力に対して政策金利の引上げを継続するのか難しい決断を迫られよう。

3.所得動向:賃金・給与、利息配当収入の伸びが加速

4月の個人所得(前月比)は労働需給の逼迫を背景に賃金・給与が+0.5%(前月:+0.3%)となったほか、利息配当が+1.0%(前月:+0.4%)となり、それぞれ前月から伸びが加速した。一方、自営業者所得が▲0.4%(前月:▲0.1%)と3ヵ月連続でマイナスとなったほか、移転所得も▲0.4%(前月:+0.1%)とマイナスに転じた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、4月の名目が+0.4%(前月:+0.3%)と小幅ながら前月から伸びが加速した(図表3)。一方、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)は横這い(前月:+0.2%)とこちらは前月から伸びが鈍化した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車関連など広範な分野で財消費が回復

4月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+1.1%(前月:▲0.8%)と前月からプラスに転じたほか、サービス消費が+0.7%(前月:+0.5%)と伸びが加速した(図表4)。

財消費は、耐久財が+1.6%(前月:▲1.2%)、非耐久財が+0.8%(前月:▲0.5%)といずれも前月からプラスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が+3.8%(前月:▲1.4%)、家具・家電が+0.4%(前月:▲1.3%)、娯楽財・スポーツカーが+0.6%(前月:▲1.0%)と広範な分野で前月からプラスに転じた。

非耐久財では、衣料・靴が+0.2%(前月:▲1.0%)、食料・飲料が+0.3%(前月:▲0.5%)、ガソリン・エネルギーが+1.8%(前月:▲2.3%)といずれも前月からプラスに転じた。

サービス消費は、住宅・公共料金が+0.1%(前月:+1.1%)、外食・宿泊が+0.1%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化した。一方、医療サービスが+0.7%(前月:+0.8%)と前月並みの堅調な伸びを維持したほか、輸送サービスが+0.5%(前月:▲0.5%)、娯楽サービスが+1.5%(前月:▲0.7%)、金融サービスが+2.3%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じてサービス消費全体を押し上げた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格(前月比)が3ヵ月ぶりのプラス

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+0.7%(前月:▲3.7%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は▲横這い(前月:▲0.2%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。

前年同月比は、エネルギー価格指数が▲6.3%(前月:▲9.8%)と21年1月以来、26ヵ月ぶりにマイナスに転じた前月から2ヵ月連続のマイナスとなった(図表7)。食料品価格指数は+6.9%(前月:+8.1%)とこちらは70ヵ月連続のプラスとなったものの、前月から伸びが鈍化した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年05月29日「経済・金融フラッシュ」)

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