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新型コロナ収束後に残された課題

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎
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具体的には、政府が一律に日常における基本的感染対策を求めることはなくなり、新型コロナ陽性者及び濃厚接触者の外出自粛は求められなくなった。また、これまでは限られた医療機関でのみ受診可能であったが、幅広い医療機関において受診可能となった。医療費等については、1割から3割の自己負担が原則となるが、一定期間は公費支援が継続される。
感染は今後も拡大する可能性があり、一定の感染対策を継続する必要はあるが、新型コロナウイルス感染症は、流行が始まって3年以上が経過してようやくほぼ収束したと考えてよいだろう。
今後求められるのは、これまでの取り組みに対する検証だ。様々な対策が感染抑止に一定の役割を果たしたことは確かだが、それと引き換えに景気の急速な悪化、実質的な私権制限、教育現場の混乱、出生数の大幅減少など社会経済活動に大きな弊害をもたらした。感染対策の妥当性については多面的な検証が必要だろう。
新型コロナの流行初期に筆者が最も懸念していたことは、経済活動の大幅な制限によって失業者が増加し、そのことが経済問題を理由とした自殺者の大幅な増加につながってしまうことだった1。
死因別には、老衰が最も多く、2020~2022年の累計(2022年は11月まで)で5.4万人増、それに続くのが新型コロナの3.8万人増、心疾患の2.2万人増となっている。老衰の増加は高齢化の影響も大きいが、2015~2019年の年平均0.9万人増から2022年は2.4万人増とそのペースが加速している。一方、インフルエンザ、肺炎はコロナ禍前よりも死亡者数が減少している(図3)。全体の死亡者数の増加が新型コロナによる死亡者数の増加を大きく上回っている理由としては、医療逼迫によって救えるはずの命が救えなくなったこと、自粛生活の長期化に伴い免疫力が低下したこと、フレイル状態に陥った高齢者が急増したことなどが考えられる。
1 「新型コロナウイルス対応の経済対策は“経済的な死者”の急増阻止を最優先に」(研究員の眼 2020.3.23)
(2023年05月23日「研究員の眼」)

03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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