コラム
2023年05月17日

特定デジタルプラットフォームの年次評価(7)-返品・返金の取扱い

保険研究部 常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(以下、法)では、経済産業大臣によって指定された特定デジタルプラットフォーム提供者(以下、DPF提供者)からの報告書の提出を受けて経済産業大臣が透明性及び公正性についての評価を行う(法9条2項)ことについては本シリーズ初回の研究員の眼で触れた通りである。

当該規定に基づいて、Amazon、楽天、ヤフー、Apple、Googleからの報告書を基にした「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価(総合物販オンラインモール及びアプリストア分野)」(以下、透明性評価)1が2022年12月22日に公表された。これについて七回目の紹介をすることとしたい。今回は各論の「(4)返品・返金の取扱い」である(図表1)。
【図表1】評価の項目立て(網掛け部分が今回)
法は、利用事業者が提供した商品の返品または商品等の代金の全額または一部の変更等の補償を、DPF提供者が利用事業者の負担において行う場合に、その内容と条件をDPF提供者が開示しなければならないとする(法5条2項ト、規6条4項)。

取引自体は利用事業者が顧客との間で行うものである以上、商品の返品や返金対応は利用事業者が行うことが本来と考えられる(図表2)が、実務的にはDPF提供者が行うケースがある(図表3)。この問題は後者(図表3)にかかわる問題である。
【図表2】利用事業者が返品対応等を行う場合
【図表3】DPF提供者が返品等対応を行う場合
報告書によるとヤフーおよび楽天は商品の返品・返金は利用事業者が行うこととしている。他方、AmazonにおいてAmazonの保管・運送サービス(Fulfilment By Amazon、FBA)を利用する事業者について、またAppleとGoogleについては、すべての取引についてDPF提供者が返品や返金の判断を行っているとのことであった。

ところで返品又は返金に応ずる場合というのはどういう場合が考えられるであろうか。まずは、配送した商品に不具合や破損がある場合、債務不履行による解除が考えられる(民法541条)。

また、通信販売に該当する場合には商品の引き渡し日または権利の移転日から8日間は無条件で申し込みの撤回または契約の解除ができる(特定商取引法15条の3)。

消費者契約法があるため、これらの法律の規定を消費者にとって不利になり、信義則に反することとなるような特約をすることはできない(消費者契約法10条)。他方、事業者にとって不利になる特約を締結することは可能である。たとえばAppleは契約後60日以内の返金に応じている。

しかしながら、DPF提供者の都合によって、あまりに利用事業者にとって不利な特約を利用約款で定めることは、独占禁止法の優越的地位の濫用に該当するおそれがある(2条9項5号)。ただ、この点は、独占禁止法を出すまでもなく、法5条1項の相互理解の増進の観点から対話が進められるべきものと思われる。

そこで透明性評価を見ると、Amazon、Apple、Googleにおいては、利用事業者が提供する商品等について、これらDPF提供者が返品・返金条件の設定や個別の返品・返金の受け入れ判断を行う場合があり、利用事業者からの不満が生じやすい状況になると考えられるとしている。そして、返品・返金に係る考え方や取組について、利用事業者に積極的にわかりやすく説明すること、返品・返金実績に関する一定の情報を公表・説明することなど、利用事業者の理解増進や事業の予見性向上に向けた取組を進めていくことや、異義申立てプロセスを充実させる等の対応を講じていくことを期待する2としている。

利用事業者にとっては、せっかく販売できた商品が返品されるのは、特に利用事業者サイドに落ち度がないのに、DPF提供者の判断だけで受け入れられるとすれば不満を生じさせかねない。しかし、顧客サイドとしては万が一の時の不安がないので、安心して取引ができるというメリットがある。

私ごとで恐縮ではあるが、購入した商品が到着していないのに、ウェブの記録上は受取済みになっていたことがあったが、結果的には簡単に解約できたことがあった。このように買い物体験(エクスペリエンス)の充実のためには、一般利用者からの返品が円滑に行われることが望ましいと言える。他方で、たとえば品物をすり替えて返品するなどの悪質な一般利用者もいると考えられる。したがって、個別にどのような対応するかのすり合わせがDPF提供者と利用事業者間で納得感をもって行われることが必要であろう。
 
1 特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221222005/20221222005.html 参照。
2 前掲注1 p9参照
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保険研究部   常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

(2023年05月17日「研究員の眼」)

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