2023年04月03日

米個人所得・消費支出(23年2月)-PCE価格指数(前年同月比)は総合指数、コア指数ともに前月から低下、市場予想も下回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を上回った一方、個人消費は市場予想を下回る

3月31日、米商務省の経済分析局(BEA)は2月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月:+0.6%)と前月を下回った一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.2%は上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.2%(前月改定値:+2.0%)と+1.8%から上方修正された前月を大幅に下回ったものの、市場予想の+0.3%は上回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は▲0.1%(前月改定値:+1.5%)と+1.1%から上方修正された前月からマイナスに転じた一方、市場予想の▲0.1%に一致した(図表5)。貯蓄率1は4.6%(前月:4.4%)と前月から+0.2%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月:+0.6%)と前月を下回った一方、市場予想(+0.3%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.3%(前月改定値:+0.5%)とこちらは+0.6%から下方修正された前月、市場予想(+0.4%)を下回った(図表6)。前年同月比は総合指数が+5.0%(前月改定値:+5.3%)と+5.4%から下方修正された前月、市場予想(+5.1%)を下回った。コア指数も+4.6%(前月:+4.7%)と前月、市場予想(+4.7%)を下回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:1月からの反動減もあって個人消費の伸びが大幅に鈍化

個人消費(前月比)は名目ベースで1月に+2.0%と21年3月以来の伸びとなったが、2月は1月に高い伸びとなった反動もあって、+0.2%と伸びが大幅に鈍化した(図表1)。
(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 また、所得対比では、労働需給の逼迫を背景に賃金・給与の増加が続く中、可処分所得が前月比+0.5%と堅調な伸びを維持したことから、貯蓄率は4.6%と22年1月以来の水準に上昇しており、足元で消費余力を残す状況となっている。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は総合指数、コア指数ともに前月比、前年同月比ともに前月から低下して物価上昇圧力の緩和を示した。もっとも、前月比では総合指数、コア指数ともに+0.3%と依然として高い伸びとなっているほか、前年同月比ではいずれもFRBの物価目標(2%)を大幅に上回る水準が持続しており、物価上昇圧力の高い状況に変化はみられない。このため、足元の金融システム不安を背景にした信用収縮による実体経済への影響は不透明なものの、インフレ指標の動向からはFRBが引続きインフレ抑制のための金融引締めを維持する可能性が高いとみられる。

3.所得動向:賃金・給与の伸びが持続

2月の個人所得(前月比)は労働需給の逼迫を背景に賃金・給与が+0.3%(前月:+0.9%)と前月から鈍化したものの、堅調な伸びが持続した(図表2)。賃金・給与では民間の財生産部門では賃金の伸びがマイナスとなったものの、サービス生産部門や政府部門で賃金・給与が増加し、全体を押し上げた。その他では、移転所得が+0.5%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した一方、利息配当が0.3%(前月:+0.5%)となり前月から鈍化した。また、自営業者所得が▲0.2%(前月:▲0.1%)と2ヵ月連続でマイナスとなるなど、マチマチであった。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、2月の名目が+0.5%(前月:+2.0%)と21年3月以来の高い伸びとなった反動もあって、前月から伸びが大幅に鈍化した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)も+0.2%(前月:+1.5%)とこちらも大幅に伸びが鈍化した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車・自動車部品が減少

2月の名目個人消費(前月比)は、財消費が横這い(前月:+3.6%)と、高い伸びとなった前月の反動もあって大幅に伸びが鈍化したほか、サービス消費も+0.2%(前月:+1.2%)と伸びが鈍化した(図表4)。

財消費は、耐久財が▲1.4%(前月:+7.0%)と前月からマイナスに転じたほか、非耐久財が+0.9%(前月:+1.7%)と前月から伸びが鈍化した。

耐久財では、娯楽財・スポーツカーが+0.8%(前月:+3.6%)と前月から伸びが鈍化したほか、自動車・自動車部品が▲4.8%(前月:+14.3%)、家具・家電が▲0.2%(前月:+3.3%)といずれも前月からマイナスに転じた。

非耐久財では、食料・飲料が+0.7%(前月:+0.6%)、ガソリン・エネルギーが+3.6%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した一方、衣料・靴が▲0.3%(前月:+4.3%)とマイナスに転じた。

サービス消費は、住宅・公共料金が+0.6%(前月:横這い)、医療サービスが+0.5%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した一方、輸送サービスが+1.1%(前月:+1.8%)、娯楽サービスが+0.5%(前月:+2.6%)、金融サービスが+0.7%(前月:+1.6%)と伸びが鈍化したほか、外食・宿泊が▲1.4%(前月:+4.7%)とマイナスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー、食料品価格ともに前年同月比の伸びが鈍化

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲0.4%(前月:+2.0%)とマイナスに転じた一方、食料品価格指数が+0.2%(前月:+0.4%)と27ヵ月連続のプラスとなった(図表6)。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+5.1%(前月:+9.6%)と前月から伸びが鈍化したほか、食料品価格指数も+9.7%(前月:+11.1%)と68ヵ月連続のプラスとなったものの、前月から伸びが鈍化した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年04月03日「経済・金融フラッシュ」)

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