2023年03月28日

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■要旨

コロナ禍で、感染予防のために多くの高齢者は外出抑制を続けてきた。その結果、高齢者の心身機能に低下が見られるようになり、フレイル発症率が上昇している。また、外出を伴う対面型サービス消費が落ち込み、地域経済の足を引っ張っている。今後は、基本的な感染対策と同時並行して、高齢者の外出や社会参加を回復させる取組が必要だと考えられる。「第6回ジェロントロジー座談会」では、これらの課題と今後の取り組みの方向性について、老年学が専門の山田実・筑波大学教授と、高齢者向けのオンデマンド乗合タクシー「チョイソコ」を全国50か所以上に展開し、高齢者の外出促進に力を入れる株式会社アイシンの加藤博巳氏、ニッセイ基礎研究所准主任研究員の坊美生子が議論した。座談会実施は2023日3月6日(オンライン)。

オンデマンド乗合タクシーとは
路線バスのように、決まった時刻に決まった路線を運行するのではなく、予約があった場合にのみ運行する乗合交通を「オンデマンド交通」という。そのうち、乗車定員11人未満の車両を用いたものを「オンデマンド乗合タクシー(デマンド型乗合タクシーとも)」と呼ぶ。利用料は実施主体によって異なるが、1回数百円のケースが多く、タクシーより安く抑えられている。利用料と費用との差額は、自治体が補助していることが多い。車両はワゴン型やセダン型などを使用し、「バスとタクシーの中間」のサービスとも言われる。2000年代から路線バスやコミュニティバス廃止後の代替輸送手段などとして導入され、「令和4年版交通政策白書」によると、全国の自治体の3割を超える573団体が導入している(2020年度時点)。自宅や目的地付近で乗降できることから、高齢者に利用しやすい移動手段として期待されている。

チョイソコとは
株式会社アイシン(本社・愛知県刈谷市。以下、アイシン)が開発したAIオンデマンドの乗合タクシーサービス。地域の医療機関や商業施設などが協賛金を払う代わりに、敷地内に停留所を設けたり、会員向けに広告宣伝を出したりして集客を図り、事業の採算性を向上させる仕組みを取っている。2018年度に愛知県豊明市で運行を開始し、2023月3月時点で全国51地域に導入が広がった。運行開始後は、アイシンや地元自治体、協業企業などが、高齢者向けのイベントを開催し、利用促進を図っている。


■目次

・コロナ禍で高齢者の外出が1~2割減少し、コロナ前の水準に戻っていない。
・コロナ禍で高齢者の対面型サービスへの消費支出が約2割減少。
・コロナ禍3年でフレイルを発症した人は約23%。平時より発症率が上昇。
・介護予防を勧めるメール配信を2か月続けた結果、会員の運動、栄養、社会参加に関する意識と
 行動が変わった。
・チョイソコ開始から5年で、導入地域は全国51か所に拡大。「面倒見が良い」運営で、全ての
 地域で運行継続。


<座談会パネリスト>
◇山田実氏 筑波大学人間系教授。専門分野は老年学。日本老年療法学会副理事長、日本サルコペニア・フレイル学会理事、日本転倒予防学会理事など。コロナ禍では、「三密回避」と同時に、身体活動と社会活動を続ける「3密2活」が介護予防と健康長寿実現のために必要だと訴え、積極的に情報発信している。2021年5月から、研究室の学生らとともに、介護予防に関する情報をメール配信する「web版集いのひろば」を運営している。

◇加藤博巳氏 株式会社アイシン ビジネスプロモーション部長。1992年旧アイシン精機入社、Aisin Europe S.A.副社長などを歴任。2018年からイノベーションセンター部長に就任し、「チョイソコ」事業を統括している。

◇坊美生子(モデレーター) ニッセイ基礎研究所 生活研究部准主任研究員。ジェロントロジー推進室兼任。高齢者の視点で移動支援、交通政策を研究。
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生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子 (ぼう みおこ)

研究・専門分野
中高年女性の雇用と暮らし、高齢者の移動サービス、ジェロントロジー

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【コロナ禍が高齢者の生活に与えた影響と回復に向けた取組(上)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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