2023年03月03日

ユーロ圏消費者物価(23年2月)-コア指数伸び率が最高値を更新

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数は8%台半ばで横ばいに

3月2日、欧州委員会統計局(Eurostat)は2月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は8.5%、市場予想1(8.3%)を上回ったが、前月(8.6%)から減速(図表1)
前月比は0.8%、予想(0.5%)を上回り、前月(▲0.2%)からプラスに転じた

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は5.6%、予想(5.3%)を上回り、前月(5.3%)から加速(図表2)
前月比は0.8%、前月(▲0.8%)からプラスに転じた

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:コア指数は最高値更新、飲食料の上昇率はエネルギー物価上昇率を上回る

23年2月のHICP上昇率(前年同月比)は全体で8.5%となり、1月の8.6%から小幅に低下した3。一方、「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は5.6%と1月(5.3%)から加速し、統計データ開始以来の最も高い伸び率を更新した。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が12月6.4%→1月6.7%→2月6.8、「サービス」(エネルギーを除く)が12月4.4%→1月4.4%→2月4.8%となり、2月は財・サービスのいずれも加速した(前掲図表2)。前年同月比寄与度は、「財」が1.67%ポイント程度、「サービス」が1.96%ポイント程度と見られる。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で12月25.5%→1月18.9%→2月13.7%と大幅な減速が続いている。前月比も▲1.1%と下落した。エネルギーの前年同月比寄与度は1.85%ポイント程度(1月は2.17%ポイント)まで低下したと見られる(前掲図表1)。

また、費目別には1月までのデータとなるが、光熱費が11月20.6%→12月16.3%→1月11.9%と低下する一方、輸送費は11月8.7%→12月6.9%→1月7.2%と1月は下げ止まった。その他、対面サービス関連費用については、外食・宿泊費が11月8.1%→12月8.3%→1月8.2%、娯楽費が11月4.7%→12月5.5%→1月4.2%となっている(図表3)。
(図表3)ユーロ圏の費目別物価上昇率/(図表4)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で15.0%(1月14.1%)と、加速傾向にあり、エネルギー物価の上昇率を上回った。飲食料のうち加工食品の伸び率は15.5%(1月15.0%)、未加工食品は13.6%(1月11.3%)といずれも加速している(図表4)。飲食料の前年同月比寄与度は3.21%ポイント程度(1月は2.94%ポイント)と見られ、12月以降はエネルギーの寄与度を上回っている。

総じて見ると、2月はエネルギー物価上昇率が低下したものの、エネルギー以外の財・サービス・飲食料物価はいずれも上昇しており、インフレ圧力の根強さを感じさせる結果となった。
(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表6)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
国別のHICP上昇率は、前年同月比で20か国中8か国が加速、10か国は減速した(図表5)。また、前月比では20か国中すべてプラスの伸び率となった(図表6)。
 
3 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ(以降も同様)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年03月03日「経済・金融フラッシュ」)

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