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水道行政、約60年ぶりの機構改革、国土交通省に一元化-新型コロナ問題が飛び火、通常国会で法改正へ
基礎研REPORT(冊子版)3月号[vol.312]
保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
1―はじめに~上下水道行政が国土交通省に一元化~
これは「上水道=厚生労働省(旧厚生省)」「下水道=国土交通省(旧建設省)」に分かれていた体制の実質的な一元化を意味しており、約60年ぶりの機構改革になります。つまり、感染症対策の強化が思わぬ形で上下水道行政に飛び火し、機構改革に繋がったと言えます。
今回は上下水道の行政を巡る小史を振り返りたいと思います。
2―上下水道の所管を巡る歴史
さらに、敗戦後の1947年に占領軍の手で内務省が解体されると、道路など社会資本整備は建設省に移管しました。その際、建設省が水道と下水道の工事指導・監督を、厚生省が水道と下水道の事務を担うことになったのですが、この時期には厚生省、建設省の双方に「水道課」という同じ名前の部署が設置されるという不思議な状況になりました。
その後、経済成長が加速する中、通商産業省(現経済産業省)が工業用水を担当することになり、省庁の所管問題は一層、複雑化。ここに都市化に伴う水需要の増大が重なったことで、上下水道の整備が急がれるようになり、役割分担の「交通整理」が1957年1月に図られます。
これを受けて、厚生省が上水道、建設省が下水道、通産省が工業用水を担当する整理になり、厚生省は水道法を制定。一方、建設省は下水道法を大幅に改正し、水道行政を巡る縦割り問題は一応の決着を見ました。今回の機構改革の意味合いとしては、この時以来の約60年ぶりの見直しという位置付けになります。
ただ、下水道の終末処理場に関しては、厚生省が引き続き担当することになり、下水道行政は一種の股裂き状態になりました。厚生省は当時、都市部の水質管理や生活環境の改善に向けて、「屎尿の管理・処分が最大の問題」と考えており、終末処理場の所管にこだわったためです。
結局、この縦割りは10年後に解消します。人口の都市集中が進み、下水道の未整備が顕在化したことで、1967年2月に役割分担が見直された結果、下水道行政が建設省に一元化され、現在に至る役割分担が確定しました。
その後、2001年の省庁再編を経て、厚生省が厚生労働省に、建設省が国土交通省に改組され、「上水道=厚生労働省」「下水道=国土交通省」という所管が続きました。
3―コロナを受けた機構改革
普段の生活で、上下水道行政に関する機構を意識する機会は少ないですが、機構改革を機にアンテナを立ててもいいかもしれません。
* 本稿は2023年1月5日掲載原稿を再構成した。参考文献などは下記を参照。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=73500?site=nli
(2023年03月07日「基礎研マンスリー」)
03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
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