- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 政策提言 >
- 規制・制度改革 >
- 岐路に立つ日本の水道~今、考えたい公共サービスの受益と負担
2019年08月08日
■要旨
■目次
1――はじめに
2――水道事業について
1|水道事業制度
2|水道事業の現状と課題
3――2018年度における水道法の改正について
1|改正水道法の概要
2|水道法改正に伴う影響
4――水道事業者の現状における給水人口規模別分析結果
5――給水人口規模別の水道料金の推計結果
6――さいごに
- 住民にとって最も身近で不可欠な公共サービスとして水道事業がある。地方公共団体が運営する水道事業(水道用水供給事業を除く)は原則として市町村が経営するものとされており、各市町村が経営する上水道事業は独立採算制が原則(事業運営に係る経費を利用者からの料金収入で賄わなければならない)とされているが、実際のところ十分な料金設定ができていない事業者が一定数存在している。
- その他にも、水道事業者は、老朽化する施設への対応、水道職員の確保、料金格差拡大の抑制など多くの課題を抱えており、将来的に安価で安全な水の供給が危ぶまれている。これらの主因は、地方公共団体数に比べて水道事業者数が過多であるため、経営資源が分散し、規模の経済が働かず、小規模な事業者を中心に経営が困難となっている。
- 2018年度には、広域連携や官民連携を推進することで、課題を解決すべく、水道法が改正された。ただし、目指すべき方向性自体は妥当であるが、双方ともに浸透するには相応の時間を要すると予想される。
- 仮に、広域連携や官民連携を実施せずに、独立採算制の原則に従う場合、各団体は水道料金をどれほど引上げる必要があるかを推計したところ、全体の平均では2017年度当時でさえ実際の料金から約40%、2045年度に向けては80%以上の引上げが必要という結果となった。これは、これまでにしかるべき引上げが十分に行われてこなかったことに加えて、今後は人口(有収水量)の減少や更新費用の増加が上昇要因となるためである。一方で、施設のダウンサイジングによって、上昇幅を緩和することも可能であり、料金の引上げとあわせて広域連携や官民連携の検討は不可欠と言える。
- 水道事業が抱える課題は、他の公共インフラにも共通している。すなわち、過去に作られたインフラの更新が十分に行われないまま、老朽化が進み、日常生活に支障を及ぼす、場合によっては生命を脅かしかねないという点である。ここから次の2点を教訓とすべきであろう。1点目は、今後公共インフラについてはダウンサイジングを推進していくべきということ。2点目は、行政側が明確な根拠を示した上で公共サービスに対するしかるべき負担(受益者負担)を国民に求め、国民側もきちんと吟味することである。これら2つの教訓を生かさなければ、文字通り負の資産を次世代に残すことになってしまうだろう。
■目次
1――はじめに
2――水道事業について
1|水道事業制度
2|水道事業の現状と課題
3――2018年度における水道法の改正について
1|改正水道法の概要
2|水道法改正に伴う影響
4――水道事業者の現状における給水人口規模別分析結果
5――給水人口規模別の水道料金の推計結果
6――さいごに
(2019年08月08日「基礎研レポート」)
神戸 雄堂
研究・専門分野
神戸 雄堂のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2020/02/12 | 豪州経済の重石となる気候変動問題~注目されるエネルギー政策の行方~ | 神戸 雄堂 | 基礎研レター |
2019/12/05 | 豪州の7-9月期GDPは前期比0. 4%増~公共部門が下支えも民間部門は不振が続く~ | 神戸 雄堂 | 経済・金融フラッシュ |
2019/11/01 | 公共土木施設の被害額から見る自然災害の趨勢 | 神戸 雄堂 | 基礎研レター |
2019/10/16 | ロシア経済の見通し-停滞が続く経済。20年は内需の回復で加速も、緩慢な成長に留まるか。 | 神戸 雄堂 | 基礎研レター |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年01月14日
今週のレポート・コラムまとめ【1/7-1/10発行分】 -
2025年01月10日
外国株式ファンド以外が売れず‼~2024年12月の投信動向~ -
2025年01月10日
2025年から大きく変わる韓国の労働関連政策のポイント -
2025年01月10日
開かれるプライベートアセットへの投資機会 -
2025年01月09日
2025年の原油相場見通し~トランプ政権始動の影響は?
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【岐路に立つ日本の水道~今、考えたい公共サービスの受益と負担】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
岐路に立つ日本の水道~今、考えたい公共サービスの受益と負担のレポート Topへ