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2023年02月28日

日本の10歳代女性における月経に伴う諸症状に関する実態調査(1)-月経不順や無月経は全体の3割近く、月経前はイライラが2割強、月経中は下腹部痛が7割も出現、対処行動は「我慢」が4割近く-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛

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1――はじめに

月経随伴症状(月経困難症)とは、月経期間中に引き起こされる下腹部痛や腰痛を主な症状として、腹痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振(亢進)、イライラ、下痢、抑うつなどの症状を指す1。これらの症状が月経の10日から3日ぐらい前から継続して出現することは月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS) と呼ばれており、一般的に40歳以上に頻繁に見られる2

しかし、近年では中高生が月経前症候群(以下、PMS)で学校を休む事例などが報告されている3,4。一方、実態解明に向けて、月経随伴症状については国の調査や学術研究が実施されているが、介入方法や調査対象が限定的であり、PMSに関しては実態調査も不十分であるなどの課題を有する。

そこで、今回は、10歳代(15歳から19歳)の女性を対象としたインターネットでの実態調査を実施し、月経随伴症状やPMSの症状有無、日常生活への支障の程度(困難度)、さらには、既存の研究で関連性が指摘されている睡眠や、肥満度を示すBMI(Body Mass Index)、生活習慣との関連性について検討した。

その結果、月経不順が全体の2割近くに達するなど、日本の10歳代女性における全体の約3割が医療機関の受診を必要としていることが分かった。また、月経期間には、月経随伴症状として下腹部痛などの身体症状、月経前にはPMSとしてイライラなどの精神症状が発現し、4割近くが我慢しているなど、日常生活に影響している実態も判明した。

このほか、月経に伴う諸症状に関係する生活習慣として、運動不足が下腹部痛に影響を与えている可能性も明らかになった。

本稿は、「日本の10歳代女性における月経随伴症状に関する実態調査(基礎研究報告)」の第1稿にあたり、インターネット調査で明らかとなった日本の10歳代女性の月経随伴症状の実態について、その全体像を示すものである。
 
1 日本産婦人科医会(2023)「No.106思春期のケア(1)月経困難症」https://www.jaog.or.jp/
2 日本産婦人科学会(2018)、産科・婦人科の病気「月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)」
  https://www.jsog.or.jp/  *精神状態が強い場合は、月経前不快気分障害
(premenstrual dyspholic disorder : PMDD)と呼ばれることに留意。
3 日本産婦人科医会では、「月経困難症による学校の欠席は7.7~57.8%」と報告している。
4 東洋経済オンライン「生理前の不調」で学校生活に苦しんだ女性(2020年4月25日)

2――調査概要

2――調査概要

本調査は、日本の10歳代(15歳から19歳)女性を対象に、株式会社マクロミルのセルフ型アンケートシステムであるQuestantを用いたインターネット調査を実施した。2022年6月27日に調査研究説明文と同意書を掲載した上で、調査研究の趣旨に同意した方のみ回答を依頼し、2022年6月27日から必要サンプル数400名を超過した7月2日時点まで回答を募集した。

その結果、15歳48名(10.9%)、16歳57名(13.0%)、17歳81名(18.4%)、18歳106名(24.1%)、19歳148名(33.6%)、計440名から回答を得られた(図表1)。

本調査における回答者の年齢構成をみると、15歳と19歳では22.7%Ptの差が認められるため、年齢による偏りがある可能性があること、また、回答者の都道府県をみると、福井県及び宮崎県からは回答が得られなかったため、日本全国の10歳代の実態を示しているわけではないことにご留意いただきたい。
図表1.回答者の年齢構造

3――10歳代の月経有無及び月経周期

3――10歳代の月経有無及び月経周期

最初に、日本の10歳代女性における月経の有無及び月経周期について調査した。月経は平均12歳ごろに開始され、妊娠していないにも関わらず月経が発来しない場合には、無月経症の可能性もある。

また、月経の周期は28日ごとに繰り返される28日型(25日~38日)が標準であり、それよりも早い25日未満での発来だと早発型、それよりも遅い39日以上での発来だと遅延型といわれ、いずれも月経周期が正常ではない月経周期異常(月経不順)として受診が必要なものとなる5

調査の結果を図表2に示す。月経の有無及び周期では、「現在、月経がある者」(28日型)が、323名(73.4%)、「現在、月経がある者(25日未満型)」37名(8.4%)、「現在、月経がある者(39日以上型)」40名(9.1%)、「現在、月経はないが、今までに月経がきたことがある者」が32名(7.3%)、「現在、月経はなく、今まで一度も月経がきたことがない者」が3名(0.7%)、その他(忘れた、分からない等)が5名(1.1%)であった。
図表2.月経の有無及び月経周期
これらの結果より、現在、正常に月経が発来しているのは全体の7割超であるが、月経不順が全体の2割近く、必ず受診が必要である無月経(原発性・続発性疑い合わせて6)は全体の1割近く存在することが明らかとなった。

月経不順の原因には、疲労やストレスなどによるホルモンバランスの乱れが影響することが多いが、この状態が続くと、機能性の子宮出血や黄体機能不全症、多嚢胞卵巣症候群などの疾患につながるリスクが生じるため、早急に疲労やストレスの元凶を断つ必要がある。

また、無月経については、18歳ごろまでに月経の発来がない場合に、染色体異常や女性生殖器の先天性異常、ホルモン分泌以上などを疑う必要があり、脳下垂体の腫瘍や子宮がんなどが原因のこともあり、早急に受診が必要なものとなる7

本調査では、日本の10歳代女性における全体の約3割は、月経不順・無月経であり、早急に受診が必要なものであることが明らかとなった。
 
5 MSDマニュアル(2023)22.女性の健康上の問題,「月経異常と異常な性器出血, PMS, 無月経」
6 原発性無月経とは、13歳までに月経の発来が認められず、思春期兆候がない者及び、正常な成長と第二次性徴が認められる者において、15歳までに月経が一度も発来しないものを示す。続発性無月経とは、以前の月経周期が規則的であったのにも関わらず3か月以上月経が認められないもの、または、月経周期が不規則であった者が6か月以上月経の発来がないことを示す。(MSDマニュアルより)
7 ドクターズファイル「月経不順・無月経」https://doctorsfile.jp/ 

4――10歳代の月経随伴症状の症状

4――10歳代の月経随伴症状の症状

次に、月経随伴症状には、どのような症状が出現しているかを調査した(図表3)。月経随伴症状には、下腹部痛や腰痛などの身体症状を呈するものと、イライラや集中力が続かないなどの精神症状を呈するものが報告されている。まずは、月経中にはどの様な症状が出現するのか全体を確認したい。

調査の結果、下腹部痛が312名(ケースの割合:70.9%)と先行研究報告と同様に最も多くの割合を占め、次に、眠気が222名(ケースの割合:50.5%)、続いてイライラするが202名(ケースの割合:45.9%)であった。
図表3.10歳代の月経随伴症状
月経中には、妊娠に至らなかった場合に不要となる剥がれ落ちた子宮内膜を、経血とともに排出する働きがあり、この子宮内膜を排出する際に分泌されるプロスタグランジンが子宮を過度に収縮させることで、痛みが伴うとされている。

やはり、この下腹部痛は全体の7割を占めており、程度の差はあるものの、月経のある女性には共通した症状であると認識しても差支えないと考える。下腹部痛以外にも、腰痛を呈する者は全体の4割超も占めていることから、月経中の子宮収縮に伴う身体的な痛みに適切に対応できるか否かが、月経中の活動を抑制させてしまうか否かの分かれ道となることは容易に想像できる。対処行動とあわせてみていく必要があるだろう。
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生活研究部   研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任

乾 愛 (いぬい めぐみ)

研究・専門分野
母子保健・高齢社会・健康・医療・ヘルスケア

経歴
  • 【職歴】
     2012年 東大阪市 入庁(保健師)
     2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了
         (看護学修士)
     2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
     2019年~大阪市立大学大学院 看護学研究科 研究員(現:大阪公立大学 研究員)

    【資格】
    看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者

    【加入団体等】
    日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会

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