2022年08月10日

不妊治療を取り巻く企業の実態とは?-制度導入企業は19%、治療内容や利用目的を限定しない休暇・休業制度の導入を-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛

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■要旨

本稿では、不妊治療を取り巻く企業の実態について明らかにし、企業側に必要な制度について考察した。

その結果、不妊治療と仕事の両立体制に関する企業の実態調査からは、不妊治療特有の頻回な通院に受診時期が読めずに調整が図れないことなどが、両立体制を築く上での困難要因となっている。

また、7割近くの企業が従業員の不妊治療の実施有無を把握しておらず、不妊治療に関連した制度を導入している企業も2割(約19%)に満たない状況であり、企業側の両立体制が不十分であることが示唆された。

さらに、既に不妊治療に関する何らかの制度を導入している企業について分析したところ、「休暇」、「休業(休職)」制度のいずれか及び両方を導入している企業を合わせると96%にのぼり、不妊治療と仕事の両立体制を築く上で、企業にとってまずは導入すべき重要な制度であることが明らかとなった。

しかし、不妊治療の特性を考慮すると、利用目的を知られないように、不妊治療だけに限定しない「多目的」での休暇・休業制度が望まれること、また、受診時間や受診時期に対応できるように「当日申請可能」であり、必要な時間だけ通院に割ける「時間休」の導入などが、企業に望まれる工夫ポイントであると示唆された。

次稿では、不妊治療との両立支援体制を支える施策の動向を整理する。

■目次

1――はじめに
2――「不妊治療と仕事の両立体制に関する調査」からみえる企業の実態
  1|不妊治療と仕事の両立状況と両立困難要因
  2|不妊治療をしている従業員の把握状況と制度導入状況
3――企業が導入する不妊治療に関する制度とは?
  1|「Clarity」掲載企業の制度分類
  2|「多目的」で、当日申請可能な柔軟な制度導入が必要!
4――まとめ
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生活研究部   研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任

乾 愛 (いぬい めぐみ)

研究・専門分野
母子保健・高齢社会・健康・医療・ヘルスケア

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