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イギリスの不妊治療の現状とは?-イギリスの生産性は日本と比べて高く、特に35歳未満では13%ポイントの差-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛
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本稿では、イギリスの不妊治療に関する経済的支援体制や治療実績件数の年次推移、生産率の差異について日英比較しながら現状と課題を整理したものである。
(尚、本稿は基礎研レター前3回のうちの第3回にあたる。)
イギリスでは、全国民に提供される包括的な医療サービスNHS(National Health Service)が存在し、不妊治療に対する経済的支援についてもNHSにより医療費を100%カバーされる仕組みとなっているが、実際に適用となる要件は、NHSを管轄するコミュニティーレベルの運営組織であるCCGs(Clinical Commissioning Groups)ごとに大きく異なることが明らかとなった。また、2019年における日英の不妊治療治療実績件数を比較すると、イギリス78,476 件、日本458,101件と、日本ではイギリスの5.8倍も多く実施されていることが判明した。
さらに、2019年の不妊治療における生産性を日英比較すると、全年齢を通じてイギリスの方が高く、特に35歳未満においては13%ptもの差が生じていたことが判明した。
これらの結果から、イギリスでは不妊治療提供施設が少ないために実績件数が伸びにくかったことまた、イギリスでは卵子・精子ドナーに加えて、代理出産や死後生殖等幅広い治療法が認められていることが高い生産率へ影響したものと推察された。
これまで、レターを通じて、日・米・英と「不妊治療の現状」について比較検証してきた。日本では、不妊治療に対する医療保険の適用要件は一律であり、諸外国と比べて経済的支援体制は比較的整備されているが、日本の不妊治療の生産性は、米・英よりも著しく低いことが明らかとなった。これは、日本の不妊治療を受ける者の年齢構造が諸外国と比べて高く、妊孕性の限界を迎える40歳以上の患者の割合が高いこと、諸外国のような卵子・精子ドナーの提供を認めていないことなどが、諸外国と比べて著しく生産性が低い要因であると推察された。
望む者が妊娠できるような不妊治療体制を整えるには、経済的支援のほかにも、早期受療行動へのアプローチや企業の両立支援体制などについても検討していく必要があろう。
■目次
1――はじめに
2――イギリスの不妊治療に対する経済的支援
3――総治療実績件数の年次推移(日英比較)
4――年齢別生産率(日英比較)
5――まとめ
(2022年06月06日「基礎研レター」)

03-3512-1847
- 【職歴】
2012年 東大阪市入庁(保健師)
2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了(看護学修士)
2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
・大阪市立大学(現:大阪公立大学)研究員(2019年~)
・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)非常勤講師(2023年~)
・文京区子ども子育て会議委員(2024年~)
【資格】
看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者
【加入団体等】
日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会
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