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- 米株高は続かない?~株高継続には厳しい2つの条件~
2023年02月20日
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1――2023年は幸先の良いスタート
2――金融政策に対する楽観視による株価上昇
このように決して米国企業の業績が良いとは言えない状況であるにも関わらず株高が許容されているのは、まず2023年に入って思ったほど米国景気が減速しないのではという期待感が膨らんだことがある。そして何より米国でインフレが鈍化してきており、早期の金融引締めの打ち止め、さらには利下げへの転換への期待が膨らんだことが大きい。
ただ、過去振り返ってみると予想PER18倍の水準は相当、高水準であるといえる。さらに、現在の金利水準は過去数年と比べて高くなっている。そこで金利の影響を除外するため予想PERの逆数(益利回り)から米長期金利を引いた米国株式のリスク・プレミアム(【図表3】青線)をみてみると、米国株式のリスク・プレミアムは足元1.7%となっている。2022年8月以前は概ね3%以上で推移してきたことを踏まえると、かなり低水準であるといえる。そのため、債券市場と比べて株式市場が今後の金融政策の動向を楽観視しすぎている可能性が高い。
ただ、過去振り返ってみると予想PER18倍の水準は相当、高水準であるといえる。さらに、現在の金利水準は過去数年と比べて高くなっている。そこで金利の影響を除外するため予想PERの逆数(益利回り)から米長期金利を引いた米国株式のリスク・プレミアム(【図表3】青線)をみてみると、米国株式のリスク・プレミアムは足元1.7%となっている。2022年8月以前は概ね3%以上で推移してきたことを踏まえると、かなり低水準であるといえる。そのため、債券市場と比べて株式市場が今後の金融政策の動向を楽観視しすぎている可能性が高い。
3――高値維持には2つの条件
では、今後も米国株式は現在の水準を維持できるのであるだろうか。S&P500種株価指数は2023年末にかけて予想EPS245ポイント、予想PER17倍で4,165ポイントくらいの水準ならあり得ると考えている。ただ、それが実現されるのは2つの条件を満たすことが求められるだろう。
まず、1つ目は株式市場が見込んでいるように、もしくはそれ以上に早期にインフレが終息し、金融政策が転換されることである。今後、株式リスク・プレミアムが3%に収斂していくとすると、長期金利が2.9%まで低下すると、予想PERが17倍(≒1/(3.0%+2.9%))程度まで許容されることになる。つまり、現在の株価はそれくらいの金利低下を見込んだ株価水準に既になっているといえる。
そして2つ目は米国企業の業績の底打ちである。足元の来期2024年のEPSが245ポイントと今期2023年の219ポイントから12%増益といわばV字回復が予想されている。あくまでも予想PERがどれだけ許容されるかにも依存するが、業績見通しがさらに下方修正され予想されているV字回復が実現できないとなると、現在の株価水準を維持するのは難しいように思われる。
そこで注目されるのが「情報技術」と「通信サービス」の2つセクターである。なお、「情報技術」はアップルやマイクロソフトなど、「通信サービス」はアルファベットやメタなどの銘柄が含まれる。2つのセクターはコロナ禍で大きく業績を伸ばしてきたが、2022年後半以降は変調をきたしている。今期2023年(横軸)をみても「通信サービス」は一桁台の増益予想、「情報技術」に至っては減益予想に沈んでいる【図表4】。その一方で来期2024年(縦軸)は、ともに15%以上の増益予想がされている。
この2つのセクターについてはS&P500種株価指数に占めるウエイトも大きいだけに、本当にこれから再び業績拡大に転じるのかに米国株式市場全体の動向も左右される。もし株式市場でこれらのセクターの業績拡大鈍化が一時的ではないと認識されると、いわば成長神話が崩れ、失望売りが大量に出る可能性もあり、注意が必要である。見方を変えると、現在の米株高は米国企業の業績拡大が鈍化していても、鈍化は一時的であると楽観視している投資家が多いことも背景にあるかもしれない。
まず、1つ目は株式市場が見込んでいるように、もしくはそれ以上に早期にインフレが終息し、金融政策が転換されることである。今後、株式リスク・プレミアムが3%に収斂していくとすると、長期金利が2.9%まで低下すると、予想PERが17倍(≒1/(3.0%+2.9%))程度まで許容されることになる。つまり、現在の株価はそれくらいの金利低下を見込んだ株価水準に既になっているといえる。
そして2つ目は米国企業の業績の底打ちである。足元の来期2024年のEPSが245ポイントと今期2023年の219ポイントから12%増益といわばV字回復が予想されている。あくまでも予想PERがどれだけ許容されるかにも依存するが、業績見通しがさらに下方修正され予想されているV字回復が実現できないとなると、現在の株価水準を維持するのは難しいように思われる。
そこで注目されるのが「情報技術」と「通信サービス」の2つセクターである。なお、「情報技術」はアップルやマイクロソフトなど、「通信サービス」はアルファベットやメタなどの銘柄が含まれる。2つのセクターはコロナ禍で大きく業績を伸ばしてきたが、2022年後半以降は変調をきたしている。今期2023年(横軸)をみても「通信サービス」は一桁台の増益予想、「情報技術」に至っては減益予想に沈んでいる【図表4】。その一方で来期2024年(縦軸)は、ともに15%以上の増益予想がされている。
この2つのセクターについてはS&P500種株価指数に占めるウエイトも大きいだけに、本当にこれから再び業績拡大に転じるのかに米国株式市場全体の動向も左右される。もし株式市場でこれらのセクターの業績拡大鈍化が一時的ではないと認識されると、いわば成長神話が崩れ、失望売りが大量に出る可能性もあり、注意が必要である。見方を変えると、現在の米株高は米国企業の業績拡大が鈍化していても、鈍化は一時的であると楽観視している投資家が多いことも背景にあるかもしれない。
4――最後に
このように米国株式は高値圏を維持、場合によっては更に上値余地もあるかもしれない。しかし、そのようになる環境が整うか現時点では分かりかね、株式市場がやや楽観視し過ぎているのではないかと筆者は考えている。そのため、米国株式は2023年に入って幸先よく上昇して始まったが、先行きに対してはあまり楽観観しない方がよいのではないかと思われる。
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
(2023年02月20日「基礎研レター」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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