コラム
2023年02月06日

売られだした?米国株式のアクティブ型~2023年1月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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昨年12月から流入半減

2023年1月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、主要な資産クラスを投資対象とするすべてのファンドに資金流入があった【図表1】。ただ、1月は国内債券と外国REIT以外の資産クラスのファンドへの資金流入が12月から鈍化した。そのため、ファンド全体でみると5,200億円の資金流入と12月の1兆300億円から半減した。なお、「その他」ファンドからの資金流出は、主に株式ブル・ベア型のファンドからであった。
【図表1】 2023年1月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
1月も外国株式ファンドには3,100億円と相変わらず大規模な資金流入があったが、12月の4,300億円の資金流入から1,100億円減少した。外国株式ファンドの中では、アクティブ型に1月300億円の資金流入と12月の600億円から減少した。さらにインデックス型では1月2,900億円と12月の3,800億円から900億円も減少した。個別にみても、人気のインデックス型の外国株式ファンド(赤太字)は軒並み流入額が1月に減少している【図表2】。
【図表2】 2023年1月の推計純流入ランキング
そもそも、昨年12月は つみたてNISAなどの駆け込み買付に加えて、多くの外国株式ファンドの基準価額が下落し、買付が入りやすい状況であった。12月にインデックス型の外国株式ファンドへの資金流入が過去最大を更新しており、1月に販売が鈍化したというよりも、むしろ12月に販売が好調過ぎたという方が適切だろう。1月でも資金流入が2,900億円もあり、インデックス型の外国株式ファンドの販売自体は2023年に入っても堅調であることに変わりはないとみられる。

アクティブ型の米国株式ファンドに売り

どちらかというとインデックス型よりもアクティブ型の外国株式ファンドの販売動向の方が、流入額の減少こそ小さかったが気がかりである。それはアクティブ型の米国株式ファンドが1月に2021年4月以来初めて資金流出に転じたためである。2023年に入ってからアクティブ型の米国株式ファンドの購入を見送る、もしくは見切りをつける投資家がより一層、増えているのかもしれない。
 
一般販売されているアクティブ型の米国株式ファンドの資金流入の推移をみると、2021年6月から為替ヘッジしてないもの(黄棒)を中心に毎月1,000億円を上回る資金流入が続いていた【図表3】。それが2022年6月以降は資金流入が鈍化し、為替ヘッジしているもの(青棒)は資金流出している月もあった。この1月は、ついに為替ヘッジしていないものも資金流出に転じた。

一般的にアクティブ型のファンドは2、3年で売却される傾向がみられる。2021年後半にアクティブ型の米国株式ファンドを購入した人がそろそろ売却を検討し始めてもおかしくない頃合いでもある。アクティブ型の米国株式ファンドは1月に米国株式の上昇に伴って売却が膨らみ資金流出となっただけかもしれないが、今後も資金流出が続く、さらには流出が加速する可能性もあると考えている。
【図表3】 アクティブ型の米国株式ファンドの資金流出入

他にも一部で変調をきたしている可能性も

外国債券ファンドと国内株式ファンドについても資金流入が大きく減少した。ただ、これらの2資産クラスについてもインデックス型の外国株式と同様に、外国債券は大型新設ファンド、国内株式は市場環境によって12月の資金流入が膨らんでいただけの面が大きい。
 
実際に外国債券ファンドは1月に900億円の資金流入と12月の1,700億円から減少したが、SMA専用ファンドと当月新設されたファンド以外の外国債券ファンドには1月に500億円の資金流入と12月の600億円からほぼ同規模であった。1月は既設の外国債券ファンドの販売はそれなりに堅調だった様子である。
 
また、国内株式ファンドも1月は300億円の資金流入と12月の2,300億円から2,000億円も大幅に減少した。12月は日経平均株価が一時2万8,000円台にあったのが月末に2万6,000円割れ目前になるなど月中に2,000円以上下落する中、インデックス型の国内株式ファンドを中心に資金流入が膨らんだ。それが1月は中旬以降、日経平均株価が2万7,000円台まで戻したため、インデックス型で資金流出に転じたこともあり、国内株式ファンド全体でみると急減となった。
 
1月はその他にもバランス型ファンドと国内REITファンドの資金流入も減少額こそ小さいが12月から減少した。バランス型ファンドは1月に500億円の資金流入と12月の900億円から減少した。1月はSMA専用ファンドから資金流出していたのもあるが、それを考慮してもバランス型ファンドへの流入額は2022年5月以降で最小となった。また、国内REITファンドについても1月に200億円の資金流入と12月の400億円から半減し、2022年4月以降で最小となった。バランス型ファンド、国内REITファンドともに2022年、特に年後半は安定して資金流入があっただけに、2023年に入って変調をきたしているのかもしれない。
 
このように、1月の資金流入の減少はあくまでも12月に売れすぎていた面が大きい。ただ、アクティブ型の外国株式ファンド、バランス型ファンド、国内REITファンドなどでは2023年に入って販売がふるわなくなってきている可能性もあり、今後の動向が注目される。

一部のテーマ型の外国株式ファンドが特に好調に

1月に高パフォーマンスであったファンドをみると、世界的に株価が上昇する中、一部のテーマ型の外国株式ファンドが特に好調であり、1月の収益率が20%、もしくは20%を超えるものがあった【図表4】。それら1月に特に好調だったファンドの過去1年の収益率をみると、この1月の高パフォーマンスが含まれているにもかかわらず、どのファンドも大幅なマイナスに沈んでいた。これらのファンドの2022年、正確には2月から12月のパフォーマンスがいかに厳しかったかが分かる。
【図表4】 2023年1月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2023年02月06日「研究員の眼」)

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