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2023年02月20日
マスク着用において、子どもは大人よりも周囲に合わせる傾向
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1――はじめに
マスク着用について、国は、2022年5月に屋外では原則不要、屋内でも距離が確保でき会話をほとんど行わない場合は不要との見方を示し、場面に応じた適切な着脱を促してきた1,2。さらに、2023年の5月には新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行することが予定されており3、これに先立ち、3月13日以降は、屋内外を問わず、マスク着用は個人の判断で行う4こととされた。文部科学省は、学校の卒業式について児童生徒と教職員は「着用せずに出席を基本」とする通知を教育委員会などに出した。緩和日より前に式がある場合も出席時の着用は求めていない5。
ニッセイ基礎研究所では、2022年10月にマスク着用について、子育て世帯を対象にインターネット調査を行った6。大人がどのように感じているかは「子育て中の親はマスク着用をどう感じているか?」で、子どもがどのように感じているかは「小・中学生は、マスク着用をどう感じているか?」で紹介した。本稿では、大人と子どもの差を紹介する。
1 厚生労働省「屋外・屋内でのマスク着用について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000942601.pdf 2023年2月17日アクセス)
2 厚生労働省「子どものマスク着用について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000942602.pdf 2023年2月17日アクセス)
3 2023年1月19日 日本経済新聞「コロナ「5類」今春移行へ、20日に閣僚協議 政府」等
4 2023年2月10日 日本経済新聞「マスク「個人判断」3月13日から 政府、屋内外問わず」等
5 文部科学省「卒業式におけるマスクの取扱い等について」(https://www.mext.go.jp/content/20230210-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf 2023年2月17日アクセス)
6 本研究は、公益財団法人かんぽ財団令和4年度の助成による成果である。記して深謝する。
ニッセイ基礎研究所では、2022年10月にマスク着用について、子育て世帯を対象にインターネット調査を行った6。大人がどのように感じているかは「子育て中の親はマスク着用をどう感じているか?」で、子どもがどのように感じているかは「小・中学生は、マスク着用をどう感じているか?」で紹介した。本稿では、大人と子どもの差を紹介する。
1 厚生労働省「屋外・屋内でのマスク着用について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000942601.pdf 2023年2月17日アクセス)
2 厚生労働省「子どものマスク着用について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000942602.pdf 2023年2月17日アクセス)
3 2023年1月19日 日本経済新聞「コロナ「5類」今春移行へ、20日に閣僚協議 政府」等
4 2023年2月10日 日本経済新聞「マスク「個人判断」3月13日から 政府、屋内外問わず」等
5 文部科学省「卒業式におけるマスクの取扱い等について」(https://www.mext.go.jp/content/20230210-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf 2023年2月17日アクセス)
6 本研究は、公益財団法人かんぽ財団令和4年度の助成による成果である。記して深謝する。
2――調査の概要
本稿で使用したデータは、ニッセイ基礎研究所が、小学生から中学生の子と同居する全国の24~64歳の男女と、その小学生から中学生の子を対象に、2022年10月に実施したインターネット調査によって得られたものである。有職男性:無職男性:有職女性:無職女性の割合が、なるべく全国の分布7に近づくように配信し、1000組の親子から回答を得た。
本稿では、1000人の親と、マスクをつけることについて感じていることに回答することを承諾した865人の子8を対象に分析を行った。
7 令和3年国民生活基礎調査の児童有の人の有職・無職分布。
8 任意の協力の下、調査会社のモニター会員を対象にして行った調査であること、子の年齢や性別について回収時に分布の調整等は行っていないことから、本調査に回答した子の分布は必ずしも日本全体の小・中学生の分布を示しているとは限らない点に注意が必要である。
本稿では、1000人の親と、マスクをつけることについて感じていることに回答することを承諾した865人の子8を対象に分析を行った。
7 令和3年国民生活基礎調査の児童有の人の有職・無職分布。
8 任意の協力の下、調査会社のモニター会員を対象にして行った調査であること、子の年齢や性別について回収時に分布の調整等は行っていないことから、本調査に回答した子の分布は必ずしも日本全体の小・中学生の分布を示しているとは限らない点に注意が必要である。
3――大人と子どもの考え方の違い
1|マスクに対する考え方は割れている~子どもの方が「つけたくない理由のみ」が高い
小中学生と同居する親とその小中学生の子に対して、マスクをつけることについて感じていることとして、つけたくない理由とつけたい理由を大人と子どもそれぞれに対して提示し、それぞれあてはまる意見をすべて選んでもらった。大人と子どもに提示した意見は、おおむね同様の内容とした。
その結果、「子育て中の親はマスク着用をどう感じているか?」と「小・中学生はマスク着用をどう感じているか?」で示した通り、大人も子どもも似た傾向を示し、マスクをつけたくない理由のみを回答した人、つけたい理由とつけたくない理由が混在していた人がそれぞれ3割を超えて多いが、つけたい理由のみを回答した人も2割を超え、意見は分かれていた(図表1)。大人と子どもを比べると、子どもの方が「つけたくない理由のみ」が高く、つけたくないと感じている子が多いようだ。
小中学生と同居する親とその小中学生の子に対して、マスクをつけることについて感じていることとして、つけたくない理由とつけたい理由を大人と子どもそれぞれに対して提示し、それぞれあてはまる意見をすべて選んでもらった。大人と子どもに提示した意見は、おおむね同様の内容とした。
その結果、「子育て中の親はマスク着用をどう感じているか?」と「小・中学生はマスク着用をどう感じているか?」で示した通り、大人も子どもも似た傾向を示し、マスクをつけたくない理由のみを回答した人、つけたい理由とつけたくない理由が混在していた人がそれぞれ3割を超えて多いが、つけたい理由のみを回答した人も2割を超え、意見は分かれていた(図表1)。大人と子どもを比べると、子どもの方が「つけたくない理由のみ」が高く、つけたくないと感じている子が多いようだ。
大人と子どもの比較を単純化するために、個々の選択肢ではなく、主として6つのグループ別にみると、つけたくない理由として、「暑い、面倒」が約60%で同程度だった。内訳をみると大人は子どもと比べて「暑い、息苦しいからつけたくない」が高く、子どもは大人と比べて「めんどくさいから、つけたくない」が高い。次いで「つけたくない(コミュニケーション)」が約19%と大人と子どもが同程度だった。内訳をみても「周りの人とはなしをしにくいからつけたくない/まわりのひととはなしをしにくいから、つけたくない」が14%程度、「自分の顔がみてもらえないからつけたくない/じぶんのかおがみてもらえないから、つけたくない」と「みんなはずしているからつけたくない/みんなはずしているから、つけたくない」が4%程度で大人と子どもが同程度だった。
つけたい理由として、大人は「つけたい(感染予防)」が「つけたい(周囲の目)」より高く、「感染予防(自分がかからないため)のためつけたい」「感染予防(他人に移さないため)のためつけたい」がいずれも子どもを10ポイント以上上回っていた。一方で、子どもは「つけたい(周囲の目)」が「つけたい(感染予防)」より高い。特に大人と比べると、「みんなつけているから、つけたい」が高く、大人を10ポイント以上上回っていた。「つけたい(落ち着く、はずかしい)」は大人も子どもも15%程度と同程度だった。
つけたい理由として、大人は「つけたい(感染予防)」が「つけたい(周囲の目)」より高く、「感染予防(自分がかからないため)のためつけたい」「感染予防(他人に移さないため)のためつけたい」がいずれも子どもを10ポイント以上上回っていた。一方で、子どもは「つけたい(周囲の目)」が「つけたい(感染予防)」より高い。特に大人と比べると、「みんなつけているから、つけたい」が高く、大人を10ポイント以上上回っていた。「つけたい(落ち着く、はずかしい)」は大人も子どもも15%程度と同程度だった。
4――おわりに
本稿では、マスクをつけることについて感じていることを尋ねた結果を大人と子どもで比較した。大人も子どもも、マスクをつけたくない理由のみを回答した人、つけたい理由とつけたくない理由が混在していた人がそれぞれ3割を超えて高いが、つけたい理由のみを回答した人も2割を超えて、意見は分かれていた。
大人も子どもも、マスクが暑い、面倒といった理由でつけたくない人は6割程度だった。子どもで「めんどくさいからつけたくない」が大人を上回った。なんらかのコミュニケーション等の課題からつけたくない人は2割弱で、大人も子どもも同様だった。マスクをつけたい理由は、大人と子どもで差があり、大人は「つけたい(感染予防)」が子どもより高いのに対し、子どもは「つけたい(周囲の目)」、特に「みんなつけているから、つけたい」が高い。子どもでは、周囲にあわせて着けている傾向が大人よりあるようだ。
マスクは飛沫防止のため着用が推奨されてきたが、今回の結果では、大人は、感染予防として自らマスクをつけたいと感じている人が44.1%で半数に満たない。さらに、子どもでは31.3%で、大人ほども高くない。マスクだけでは感染予防が難しいと感じている人が多そうだ。また、子どもは周囲にあわせてマスクを着用しているケースが大人よりも多いため、大人と比べると、マスクを不要とする生活を受け入れられやすいと思われる。
しかし、今回の調査では子どもの中でも感染不安をもっている割合は7割と高い9。また、感染予防のためにつけたい子もいる。子どもは、大人と比べて周囲に合わせる傾向がみられたことから、マスクを外すことについても周囲に合わせようとする可能性があり、マスクを着用し続けたい子の不安をどのように軽減するかが課題となるだろう。家庭でも、子どもが周囲との関係で嫌な思いをしないよう着脱それぞれのメリットを伝えつつ、子どもの考え方や家庭の考え方を探っていくことになるだろう。
9 村松容子・岩﨑敬子「小・中学生は、マスク着用をどう感じているか?」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2023年1月31日)
大人も子どもも、マスクが暑い、面倒といった理由でつけたくない人は6割程度だった。子どもで「めんどくさいからつけたくない」が大人を上回った。なんらかのコミュニケーション等の課題からつけたくない人は2割弱で、大人も子どもも同様だった。マスクをつけたい理由は、大人と子どもで差があり、大人は「つけたい(感染予防)」が子どもより高いのに対し、子どもは「つけたい(周囲の目)」、特に「みんなつけているから、つけたい」が高い。子どもでは、周囲にあわせて着けている傾向が大人よりあるようだ。
マスクは飛沫防止のため着用が推奨されてきたが、今回の結果では、大人は、感染予防として自らマスクをつけたいと感じている人が44.1%で半数に満たない。さらに、子どもでは31.3%で、大人ほども高くない。マスクだけでは感染予防が難しいと感じている人が多そうだ。また、子どもは周囲にあわせてマスクを着用しているケースが大人よりも多いため、大人と比べると、マスクを不要とする生活を受け入れられやすいと思われる。
しかし、今回の調査では子どもの中でも感染不安をもっている割合は7割と高い9。また、感染予防のためにつけたい子もいる。子どもは、大人と比べて周囲に合わせる傾向がみられたことから、マスクを外すことについても周囲に合わせようとする可能性があり、マスクを着用し続けたい子の不安をどのように軽減するかが課題となるだろう。家庭でも、子どもが周囲との関係で嫌な思いをしないよう着脱それぞれのメリットを伝えつつ、子どもの考え方や家庭の考え方を探っていくことになるだろう。
9 村松容子・岩﨑敬子「小・中学生は、マスク着用をどう感じているか?」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2023年1月31日)
参考――因子分析の結果
(2023年02月20日「基礎研レター」)


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