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スパゲッティにみる主観確率-麺の端を結んでいったら、“輪” はいくつできる?
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
◇ “1つの大きな輪” ができる確率は?
(スパゲッティの “1つの大きな輪” ができる確率の問題) [追加の問題]
50本の麺を茹でて、それにパスタソースをかけてできたスパゲッティがあります。麺の端は、全部で100個あります。この麺の端を無作為に2つとって、結んでいくことにします。100個の麺の端をすべて結び終えたときに、“1つの大きな輪” ができる確率はどれくらいでしょうか? なお、ある回の麺の端を結ぶ作業と、他の回の作業は独立している(相互に影響し合わない)ものとします。また、麺が切れることはないものとします。
先ほどの問題で、輪は、少なくとも1個はできると説明した。50本の単麺全体で、1つの大きな輪ができる場合だ。それでは、このような場合が起こる確率は、どれくらいあるのだろうか?
A: 「輪が1つだけできるのは、49回までのタイ作業で1つも輪ができない場合だ。これは、そうそう起こることではない。せいぜい10数パーセントぐらい、といったところではないか。」
B: 「先ほどの問題の、平均的にできる輪の数を思い出してみるべきだ。少なくとも1個はできるのに、平均的には3個未満しかできない、というのだから、1個となる確率はかなり大きいはずだ。20パーセント以上はあるはずだ。」
C: 「いやいや、ちょっと待て。この稿のテーマは『主観確率』だ。筆者は、またもや、そこそこ大きいと思わせておいて、実は小さい、というオチを繰り返すつもりなのだろう。筆者の考え方を踏まえたら、5パーセント未満という答えが見えてくる…。」
Cの説は、問題そのものではなく、筆者の心理にしたがって展開されている。それでは、そろそろ1つの大きな輪ができる確率を計算してみよう。
この追加の問題では、1つ大切な前提が問題文に入れられている。ある回のタイ作業と、別の回のタイ作業の間は独立していて相互に影響し合わない、という前提だ。この前提により、確率の掛け算が可能となる。
50回目のタイ作業で必ず輪が1つできるのだから、全部で1個となるためには、49回目までのタイ作業では1つも輪ができないことが必要となる。その確率を求めればよいはずだ。
つまり、次のようになる。
98/99 × 96/97 × 94/95 × …… × 2/3 × 1 = 0.1256… ≒ 13%
各タイ作業の独立性を前提とすると、100個の端を結んで1つの大きな輪ができる確率は、約13パーセントとなる。Aの説が正しいという結果だ。
◇ 主観確率を楽しんでみよう
現実の社会で、確率をもとに何らかの判断を迫られる場合、たいていは主観確率を用いることになる。表計算ソフト等を使って、じっくり客観確率を計算している余裕はないことが多いためだ。
そこで、ビジネスの世界では「主観確率を鍛えよう」といった話になりがちだ。スキルの1つとして、確率の見積もり方をトレーニングしようというわけだ。だが、本稿では、まずは2つの確率の違いを楽しんでみることを、オススメしたい。
確率や平均に関する問題に接した場合、いきなり計算するのではなく、まず答えを予想してみる。そして、それと計算した結果を比べる。そうすることで、意外感や驚きを味わうことができる。
こうして、日々、新たなサプライズを感じていくうちに、いつの間にか確率的なものの見方が強化されるかもしれない。
まあそもそも、確率を通じて気分がリフレッシュできれば、それだけでも意味があるように思われるが、いかがだろうか。
(参考文献)
“Mathematical Puzzles” Peter Winkler (CRC Press, 2021)
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
(2023年02月14日「研究員の眼」)
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