コラム
2019年03月11日

宝くじを買い続けたらどうなるか?-何年買い続けたら、累積の1等当せん確率は99%を超える?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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宝くじの醍醐味は、一攫千金だ。宝くじを買っても、1等に当せんすることはめったにない。しかし、くじを買わなければ、絶対に当せんしない。宝くじは、くじを買うというより、1等に当せんする夢を買っている、といえるかもしれない。宝くじの買い方は、人それぞれだ。まず、買う枚数でいえば、くじを1枚だけ買って1等当せんの夢を楽しむ人がいる。10枚や20枚など、毎回決まった枚数のくじを買う人もいる。なかには、1,000枚、2,000枚といった単位で買うツワモノもいるだろう。

また、連番で買うかどうかも、買い方のポイントだ。連番で買えば、1等当せん時に前後賞にも当せんする可能性が高くなる。一方、連番ではなくバラで買えば、1等に当せんしなくても、前後賞だけに当せんするかもしれない。さらに、連番にはしないが1等に当せんしたときの前後賞もあきらめたくないという場合は、3枚の連番を10通り分、合計30枚買う「3連バラ」という買い方もある。そのほか、買う場所や日時にこだわる人も多い。高額の当せんが出ることで有名な販売窓口では、宝くじの発売日から長蛇の列ができたりする。毎年、自分の記念日にくじを買うと決めている人もいる。

それでは、宝くじに必勝法はあるのだろうか。当せん番号が純粋に無作為に決まる限り、筆者には、必勝法は思いつかない。それならば、1回宝くじを買って、当せんしなかったからといってあきらめずに、何回もくじを買い続けたらどうなるだろうか。毎回、毎回、買っていけば、累積では1等に当せんする確率は上がっていくはずだ。「継続は力なり」という格言は、宝くじにも通用するだろうか。そこで、宝くじを買い続けたときに、累積の1等当せん確率はどれだけ上がるのか、を考えてみよう。

ところで、ひとくちに宝くじといっても、いろいろな種類がある。日本全国で賞金等、同一の条件で発売される「全国自治宝くじ」。東京都、関東・中部・東北自治、近畿、西日本の4つのブロックごとに発売される「ブロック宝くじ」。くじを買う人が数字を選ぶ「数字選択式宝くじ」。買ったくじの赤ワクの中を削ってその場で当たりがわかる「スクラッチ」などだ。今回は、1等当せん金額が大きい大型の宝くじである、ジャンボ宝くじで考えてみよう。

現在、ジャンボ宝くじは、年に5回行われている。3月に「バレンタインジャンボ」、5月に「ドリームジャンボ」、8月に「サマージャンボ」、10月に「ハロウィンジャンボ」、そして12月に「年末ジャンボ」がある。

ジャンボ宝くじの1等と前後賞を合わせた当せん金の金額は、それぞれ異なる。「バレンタイン」は3億円。「ドリーム」と「ハロウィン」は5億円。「サマー」は7億円。そして、「年末」は10億円だ。

どの宝くじも、100000~199999の10万通りの番号が1組となる。「年末」は、01組~200組までの2,000万枚が1ユニットと呼ばれる。それ以外のジャンボ宝くじは、01組~100組までの1,000万枚が1ユニットとなる。この1ユニットの中から、1等が1枚当せんする仕組みだ。つまり、1等の当せん確率は、「年末」は2,000万分の1で、それ以外は1,000万分の1となる。

くじは1枚300円。ここで、毎回いくら、くじを買うかが悩みどころだ。いくら買うかで、当せん確率は変わってくる。2016年4月に一般財団法人 日本宝くじ協会が18歳以上の男女9,718人(有効回収サンプル6,005)に対して行った調査によると、最近1年間の宝くじ購入総額は、購入者の平均で2万6,650円とのこと(「宝くじ公式サイト」に掲載の『第14回宝くじに関する世論調査』より)。

今回は、「年末」は6万円出して200枚。それ以外は毎回3万円出して100枚ずつ買うことにしよう。これだと、年間で18万円の出費となり、購入者平均の約7倍に相当する。くじは、連番で買って1等が当せんしたときに前後賞ももらえるようにしよう。厳密には、200枚や100枚のくじを連番で買って、いちばん端の2枚のどちらかに1等の当せんが出たら、前後賞は半分しかもらえない。ただ、話が複雑になるので、そういう細かいことは、この際無視する。

この買い方だと、1等の当せん確率は、どれぐらいだろうか。「年末」は2,000万枚のうち1枚が1等で、くじを200枚買っているから、2,000万分の200、約分して10万分の1。それ以外は、1,000万枚のうち1枚が1等で、くじを100枚買っているから、1,000万分の100で、やはり10万分の1。つまり、いずれも10万分の1の確率となる。

それではいよいよ、あらかじめ購入期間を決めて、その間、ジャンボ宝くじを買い続けることを考えてみよう。ここで、なかには、購入期間中に2回も3回も1等に当せんする、という極めて幸運なケースもありえる。1等に当せんしたら、その時点で宝くじの継続購入はやめてしまうこともあるだろうが、今回は、とにかく最初に決めた購入期間中は、宝くじを買い続けるものとして考えてみる。

【1年間】 年間5回のジャンボ宝くじで、累積で1等に当せんする確率は、10万分の5。もし1等に当せんすれば、18万円のくじの購入代金が、3億円~10億円の受け取りにつながることになる。まさに、一攫千金だ。

【2年間】 2年間の10回のジャンボ宝くじで、累積で1等に当せんする確率は、10万分の10。これでも、1等当せんはほとんど起こらない。そう簡単に1等が当たるものではない。

【3年間】 購入期間を3年間にしても、累積の1等当せん確率は、10万分の15に過ぎない。ことわざで「石の上にも3年」などというが、ジャンボ宝くじを3年間買い続けても、その間に1等の当せんで報われることはほとんどない。

【10年間】 10年間買い続けることにしたらどうか。「10年ひと昔」という言葉のとおり、通常は、何かの取り組みを10年間続けたら、かなり長い期間継続したといえるだろう。ジャンボ宝くじの場合は、10年間に1回でも1等が当せんする累積の確率は0.05%となる。一方、この10年間で、180万円のお金を宝くじの購入に費やしている。それでも、1等は、ほとんど当たらないことになる。

【50年間】 それでは、50年間、買い続けることにしたらどうか。会社勤めをする人でいえば、入社から定年退職までの期間を上回る時間の長さだ。累積の1等の確率は、0.25%。なお、50年間では、くじの購入に900万円を要している。

【100年間】 購入期間を1世紀100年間にしたらどうか。こうなると、ひとりの人の一生では、購入継続が難しいタイムスケールになってきた。そこで、親から子、子から孫などと世代をつなぎつつ、ジャンボ宝くじを買い続けることとなる。累積の1等当せん確率は、0.5%。

【500年間】 500年間買い続けることにしたらどうか。500年前といえば、世界史では、マルティン・ルターが宗教改革を唱えて、フェルディナンド・マゼランが世界一周に出発した頃だ。その頃から現在までと同じ期間、何世代にも渡って、ジャンボ宝くじを買い続けていくイメージだ。実際、老舗企業でも500年続くのはかなりまれなケースだろう。そこで、「いかなる状況でも、ジャンボ宝くじを買い続けよ」などと、家訓を残す必要があるだろう。後世の子孫たちは、なぜこんな家訓があるのか、不思議に思うかもしれない。500年間では、累積で1等が当たる確率は2.5%まで高まることとなる。

【1,000年間】 購入期間が1,000年の場合はどうか。1,000年前といえば、日本史では平安時代。藤原道長が権勢を振るって、「この世をばわが世とぞ思ふ望月の かけたることもなしと思へば」などと詠んだ時期だ。その頃からいままでの間、ずっと宝くじを買い続ける感じになる。そこまでしても、累積の1等の当せん確率は4.9%ほどだ。1,000年間で、くじの購入につかったお金は、1億8,000万円。この金額を眺めると、1等に当せんしてもおかしくないという気がしてくるかもしれない。

【1万年間】 購入期間が1万年の場合はどうなるか。1万年前といえば、日本史では縄文時代に相当する。その頃から現在までと同じ時間の長さに渡って、ジャンボ宝くじを買い続けることとなる。「そもそもいまから1万年もジャンボ宝くじは販売され続けるのだろうか?」などと考えるのは、意味がないのでやめよう。累積の1等の当せん確率は39.3%となる。このうち、1等に1回当たる確率は30.3%。2回当たる確率は7.6%。3回以上当たる確率も1.4%ある。問題は、1万年の間に支払う費用だ。なんと18億円にも及ぶ。1等に1回当せんして3億円~10億円を受け取っても、赤字のままだ。何回も1等に当せんしないかぎり、収支は合わない。もはや、夢を買う、といった感じではなくなってくる。

【1万3,863年間】 では、購入期間をいったい何年間にすれば、その間に1等に当せんする累積の確率が50%を超えるのだろうか。計算してみると、1万3,863年となった。つまり購入期間を1万3,863年とすると、その間に少なくとも1回は1等に当せんするという累積の確率がようやく50%を超える。 1万3,863年前といえば、日本史では、旧石器時代の終わり頃となる。その頃から現在までの年数に渡って買い続けることで、1等当せんの感動を味わえる可能性が半分以上に高まる。

【9万2,103年間】 1等に当せんする累積の確率が99%を超えるためには、購入期間を何年間に設定すればよいだろうか。計算してみると、9万2,103年となった。9万2,103年前といえば、日本では阿蘇山が噴火して阿蘇カルデラができた頃だ。その頃から、現在までの年数に渡って買い続けることで、1等当せんの感動を味わえる可能性が99%以上に高まる。収支はまったく度外視して、ただひたすらに1等に当せんすることだけを目指すのであれば、「継続は力なり」といえるのかもしれない。

以上で、宝くじの継続購入で1等に当せんすることの奥深さが確認できたのではないだろうか。

毎回くじを100枚や、200枚ずつこつこつ購入したとしても、10年や20年といった短期間では、累積の1等当せんの確率は小さいままだ。「ジャンボ宝くじを買い続けよ」と家訓に残して、遠い子孫たちに不思議がられるようなことはやめて、素朴に一攫千金を夢みるような楽しみ方がふさわしいように思われるが、いかがだろうか。

(2019年03月11日「研究員の眼」)

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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

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