2023年02月14日

当面の株価見通しと2023年の投資戦略-レバレッジ型ETFの正しい活用法

金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾

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4――レバレッジ型ETFは短期投資向き

タイミング戦略で日経レバETFを買ったのに予想に反して株価が下落した場合、早めの損切りが肝心だ。「いずれ株価が回復すれば2倍儲かる」と考えるのは大きな誤解だ。ましてや、NISA制度なら運用益が非課税だからといって「上がるまで持ち続けよう」などと考えないほうがいい。
 
株価指数が下落したときに値上がりするインバース型も同じだし、もちろんNASDAQ指数など海外の株価指数を対象としたレバレッジ型も同じだ。
 
レバレッジ型ETFは、短期もしくは超短期の投機性が高い金融商品だということを理解したうえで上手に利用すれば便利なツールだ。空売りを利用しない普通の投資家の場合は、数週間以内に株価が上昇しそうになければ一旦売却して下がったところで再び投資するなど、こまめな対応が望ましい。

5――(参考)なぜ2倍にならないのか

5――(参考)なぜ2倍にならないのか~下手な売買を繰り返す宿命

保有期間が2営業日以上になると騰落率が2倍にならないのは、日経レバETFに限った話ではない。レバレッジ型ETFに共通の宿命だ。図表10のイメージ図で説明しよう。まず純資産100億円なら200億円相当の先物を買い持ちする。
 
翌日に日経平均やTOPIXが10%値上がりすると先物も10%値上がりして20億円の利益が出る。この利益分だけ純資産が増えて120億円になる。このとき先物は220億円分を保有しているが、翌日も「2倍の騰落率」を維持するために20億円分の先物を買い増しして240億円相当にする必要がある。
 
反対に株価指数が10%値下がりすると先物から20億円の損失が発生し、純資産も20億円減って80億円になる。先物は180億円相当を保有しているので、純資産の2倍の160億円にするため20億円分を売却しなければならない。
 
つまり、レバレッジ型ETFは「株価が上がったら買い、下がったら売る」という順ばり戦略を機械的に実践している。順ばり戦略は株価が一本調子に動くときは有効だ。極端な例だが、株価が毎日上昇するなら日々買い増しすればより大きな収益を得ることができるし、仮に毎日下落するなら日々損切りすれば最終的な損失は小さく済む。
 
実際に、図表6の局面①~④は本格的な下落がない「上昇相場」だったので、順張り戦略が功を奏して2倍超になった。また、図表8(下落局面)の①~⑤の倍率が2倍未満で済んだのも同じメカニズムだ。しかし、現実には株価が一本調子で動くことは希で、普通は上下動を繰り返しながら推移する。そのため「上がったら買い、下がったら売る」という投資行動は結果的に「下手な売買」になりがちだ。
【図表10】レバレッジ型ETFは順ばり戦略(イメージ図)
 
 

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金融研究部   主席研究員 チーフ株式ストラテジスト

井出 真吾 (いで しんご)

研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本ファイナンス学会理事
     ・日本証券アナリスト協会認定アナリスト

(2023年02月14日「基礎研レポート」)

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