2023年02月13日

英国GDP(2022年10-12月期)-小幅ながら前期比プラスに転じる

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:小幅ながら前期比プラスに転じる

2月10日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【2022年10-12月期実質GDP、季節調整値)】
前期比は0.0%、予想1(0.0%)と一致し、前期(▲0.2%)からプラス成長に転じた(図表1)
前年同期比は0.4%、予想(0.4%)と一致し、前期(1.9%)から減速した

【月次実質GDP(10-12月)】
前月比は10月0.5%、11月0.1%、12月▲0.5%となり、12月は予想(▲0.3%)を下回りマイナス幅が大きかった

(図表1)英国の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)主要国のGDP水準(コロナ禍前との比較)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:財政支援措置が雇用者報酬、営業余剰を下支え

英国の22年10-12月期の実質成長率は前期比0.0%(年率換算0.1%)となり、7-9月期のマイナス成長(前期比▲0.2%)から、わずかながらプラスに転じた2。22年暦年の成長率は前年比4.0%と21年(7.6%)から減速した。22年10-12月期の実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月)と比べて▲0.8%となり、他の欧州各国と比較して回復が遅れている状況にある(図表2、ユーロ圏主要国と比べるとスペインより高いが、イタリア、フランス、ドイツより低い)。
(図表3)英国の月次GDPの推移 月次GDPで単月の状況を見ると、10月は前月比0.5%、11月は同0.1%、12月は同▲0.5%となり、特に12月の下押し圧力が強い3

月次GDPの推移を部門ごとに追うと(図表3)、生産部門はコロナ禍後の回復は早かったがその後は低下し、8月以降は横ばいで推移している。サービス部門は22年以降、一進一帯の動きが続く。一方、建設部門は緩やかながらも成長が継続している。
より細かい産業別の動向を確認すると(図表4)、7-9月期は農林水産部門が前期比▲0.6%、生産部門が同▲0.2%、建設部門が同0.3%、サービス部門が同0.0%となった。より細かい産業では、7-9月期はエネルギー消費抑制の影響を受けた、電気・ガス産業(前期比▲1.3%)、ストライキの影響を受けた輸送業(同▲2.4%)の下落がそれぞれ特徴的な変動を示している。
(図表4)業種別のGDP前期比伸び率とコロナ禍前水準
成長率を需要項目別に確認すると、10-12月期は個人消費が前期比0.1%(7-9月期▲0.3%)、政府消費が0.8%(前期0.5%)、投資が1.5%(前期0.3%)、輸出が▲1.0%(前期9.4%)、輸入が1.5%(前期▲2.9%)となった。純輸出の前期比寄与度は▲0.81%ポイント(前期3.74%ポイント)だった。10-12月期は外需が落ち込む一方、内需は底堅い動きとなった。
(図表5)英国のGDPとデフレータ伸び率 名目GDPは10-12月期の前期比で1.3%(7-9月期は1.6%)、前年同期比7.0%(前期8.4%)、デフレータは前期比1.3%(前期1.8)、前年同期比6.6%(前期6.4%)となり、前年同期比で見たデフレータはわずかに加速した(図表5)。名目GDPを所得別に見ると、税・補助金が前期比▲22.5%と急減する一方、雇用者報酬(前期比1.1%)、営業余剰(同15.2%)はプラスを維持しており、エネルギー関連の財政措置によって民間所得が維持されている構図となっていることが分かる。
 
2 なお、9月にはエリザベス女王の国葬で銀行休日が設定されており、この反動で10月の伸び率は高めになりやすい点に留意する必要がある(四半期ベースでは10-12月期の成長率に反動が生じる)。
3 9月は前月比▲0.7%と大きく落ち込んでおり(ONSは9月の落ち込みの約半分が国葬に伴う銀行休日の影響であると指摘している)、10月にはその反動が生じていると見られる。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年02月13日「経済・金融フラッシュ」)

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