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- ECB政策理事会-12月の「予告」通り、0.50%ポイントの利上げ
2023年02月03日
(リスク評価)
(金融・通貨環境)
(結論)
- 経済成長見通しに対するリスクはこれまでより均衡している
- ロシアのウクライナとその市民に対する正当化できない侵攻は、引き続き経済に対する重大な下方リスクであり、エネルギーや食料価格が再び上昇する可能性がある
- 世界経済の減速が予想より深刻化すれば、ユーロ圏の成長への追加的な重しになる可能性がある
- 加えて、コロナ禍が再び激化し、供給制約が再発すれば回復が妨げられる
- しかしながら、エネルギーショックが予想よりも早期に解消し、ユーロ圏企業はより早期に厳しい国際環境に適合するかもしれない
- これは、予想よりも高成長する支えになるだろう
- インフレ見通しに対するリスクも、特に短期的には、これまでより均衡している
- 上方リスクとして、価格転嫁圧力が小売価格を短期的に押し上げる可能性がある
- 加えて、中国の予想よりも強い回復が商品価格や外需を押し上げる可能性がある
- インフレ期待の目標を上回るような永続的な上昇や、予想を上回る賃金上昇が中期的にもインフレ率を押し上げる可能性がある
- 下方リスクとして、足もとのエネルギー価格の下落が、持続的であるならば、予想よりもインフレ率の鈍化スピードが急速になるかもしれない
- このエネルギー価格の下方圧力は基調的なインフレ圧力の動向もまた弱める可能性がある
- さらに、特に中期的には、需要の減速が予想以上に物価上昇圧力の低下に寄与するかもしれない
(金融・通貨環境)
- 金融引き締めを受けて、市場金利はさらに上昇し、民間部門への信用コストより増加している
- 企業への銀行貸出はここ数か月で急激に減少した
- これは部分的には在庫投資需要の弱さに起因する
- しかし、銀行貸出調査によれば、設備投資による借入需要の弱さや、銀行貸出金利の上昇と信用基準のかなりの厳格化もまた観察される
- 家計借入は引き続き弱く、これは貸出金利の上昇と信用基準の厳格化、住宅ローン需要の急減を反映したものである
- 貸出の減速を受けて、通貨伸び率は、翌日物預金を含む多くの流動性指標において、急激に鈍化しており、定期預金へのシフトにより補完されている部分は一部分にとどまっている
(結論)
- (声明文冒頭に記載の利上げとAPPの削減、金融政策スタンスへの再言及)
(質疑応答(趣旨))
- 本日の決定に関する議論の雰囲気について教えて欲しい、より長期間のコミット、より消極的な姿勢、何も言わないといった要望があったか
- 3月にその後の政策経路を決めるというとき、それは利上げのペースのみを問題にしているのか、それともその時点で利上げのピークに到達しているという可能性も含めているのか
- 0.50%ポイントの引き上げを意図している、したのは強い文言と言える。絶対的で取消不能で、無条件のコミットメントではないが、強い言葉と言える
- 今回の決定は、12月に表明したコミュニケーションと一貫しており、今回の0.50%ポイントと3月の0.50%ポイントの意図は、本日、非常に多数の合意(very, very, large consensus)として到達している
- これは3月でピークに達したということを意味するわけではない
- カバーすべき領域があり、まだ終えていないので経路(course)を維持するために、予測に基づいて、水準やペースを評価する必要があるということを意図している
- 我々が意思疎通するにあたっては、完全な同意はなく、議論があったが、金融政策の声明については総じて議論の中身が反映されて、非常に多数の合意を得ている
- ダボス会議で、(ラガルド総裁に)懐疑的な人たちに姿勢を改める必要があると述べたが、市場は再びあなたを懐疑的に見はじめていて、この決定でも金融環境がやや緩和しており、期待は低下している。今日は懐疑的な人たちに何というか。「カバーすべき領域があり、まだ終えていない」というのは、3月以降に利上げがあることを意味するのか
- 基調的なインフレ率を見ると、あらゆるシナリオが3月の0.50%の利上げを保証するように見える
- 率直に言えば、会合毎にデータに基づいて決定するが、十分に強力なデータがあり、2%の到達から十分に離れているとすれば、強力な方法で意図を伝えることは完全に正当化される
- 疑うべきではないとしているのは、中期インフレ率を2%に到達させるという我々の決意であり、十分に制限的な領域に移行するために十分な利上げを行うとした決意である
- 制限的な領域で中期的に2%の物価目標に戻るため、長くとどまるということも疑うべきではない
- 特に不動産部門のような部門における、急激で大きな利上げという政策の負の副作用について議論しているか、これはまた銀行のバランスシートや消費に対してどのような意味を持つか
- 資金調達環境のタイト化、貸出金利の上昇は、金融政策を良く伝達していると言える
- 金利の影響や金融システムの安定には注意を払っているが、我々の目的はインフレ抑制である
- 副次的な影響は生じるし、銀行に関して言えば、それは避けられない
- QT(量的引き締め)について、それにより何を達成したいと考えているのか、効果的な金融政策手段としてこれを加速させるという議論はあったか
- 我々の主要手段は金利であり、バランスシートの正常化は、役に立ってはいるが、主要手段ではない
- 12月には予測可能で秩序だったペースというアプローチを伝え、今回は、それに単純さ(simplicity)と中立性(neutrality)という原則を付け加えたと思う
- 12月から3月までの0.50%ポイントという行動がほぼ決定されたなかには、各中銀総裁間での妥協があったと言えるか、規則性という重要な観点からは、5月もこのペースを続けると言えるか
- あらゆる決定は妥協の産物であり、理事会の美はすべての中銀総裁が、我々が行っている根拠、分析、難しい経済学的な仕事について情熱を持っている点である
- 妥協はゲームの規則であり、それは我々が責務に注力している責務を弱めるものではない
- 我々はまだ終えておらず、経路(course)に留まる必要があることを認識している
- 多くの分野で企業や従業員が給料の引き上げを求めている、これに対するメッセージはあるか、また、どの時点でこれらの引き上げが、インフレ定着リスクの危険性を生むのか
- 賃金はインフレの重要な側面であり、出来る限り分析しようとしている
- 議論や交渉において重要なのは、インフレがどうなるのかについての将来を見据えたアプローチ(forward-looking approach)であり、当事者間が議論した賃金の傾向を認めるために、我々がどれだけ素早く2%に戻せるのかということである
- 現在のインフレ動向のなかでもっとも懸念しているものは何か、米国の経済環境とどう違うのか
- 明らかにエネルギーに注目しなければならないし、まだ高すぎる
- 我々は賃金についても注意深く見ている
- 我々は財政措置も見ており、23年予算の一部として決定された措置を多く見ている
- そのうちのいくつかは再調整が試みられるだろう
- 必ずしも米国と比較する必要はないと思うが、国際環境も考慮する必要がある
- 12月に中国当局がゼロコロナ政策から脱し、経済再開をしたことによる結果が生じると思われる
- 昨日、パウエル議長は経済のディスインフレ過程が始まったと述べた。欧州はそこからどの程度離れているのか
- あなたは、インフレ率の上昇は主にエネルギーに関係していると言ったが、それは、ECBの行動の結果によって下がるものではないということを意味しているのか、中期に2%としているが、中期とは何か
- 金融政策は強力でも効果的でもない、というにはほど遠い
- 銀行貸出調査を見ても分かる通り、間違いなく機能している
- しかし、高インフレの大部分はエネルギー価格の高騰による供給ショックにより引き起こされていたことも事実であり、ガス価格と電力コストに生じる影響を上手く把握できなかった
- エネルギー要素に注意を払う必要があり、我々は他のインフレ要素への価格転嫁の状況を注視している
- しかし、大規模かつ無条件でディスインフレ過程が始まっているとは言えない
- インフレ見通しに関するリスクが12月よりも均衡していると述べたが、それは将来の金利経路にとってどれだけ重要となるか、またこれは理事会で議論となったか、異なる見解はあったか
- 我々はリスクが対称であるとは考えていないが、12月よりは均衡している
- 理事会の各国中銀総裁は、分析し、理解し、可能な限り根拠のある結論を導くことに興味を抱いており、特定の段落については議論されなかった
- 銀行貸出調査について、中期的な信用収縮リスクを見ているか
- インフレ率を削減し、2%に戻そうとしている観点からは、銀行貸出調査への影響はある意味で効率的かつ必要なものだと考えている
- TPIに関連して、債券市場の混乱リスクを見ているか
- 現時点でTPIを利用する必要性は見ていないが、必要があれば使用する
- 投資家と金融市場はECBが5月の会合までに利上げを停止すると見ている、データ次第であることは承知しているが、この期待は正しいか間違っているか
- 金利を十分引き締め水準まで上げる必要があるが、現在はそこに到達しておらず、基調的なインフレ圧力が明らかにあることに鑑みると、3月にも到達しないだろう
- 次に何が起きるかは、カバーすべき領域の広さにより、カバーすべき領域はあるだろうがデータに依存する
- 12月にはECBは2月に0.50%ポイント、3月におそらく0.50%ポイントの利上げ、もしかしたら5月にもあるかもしれない、と言っていたが、今は5月についてどうみているか12月と比べて可能性は低下しているか
- 声明で述べているのは、状況を評価し、我々の見通しに照らして政策金利経路を判断するということであり、0.50%ポイントかもしれないし、0.25%ポイントかもしれない、必要とされるだけ実施する
- ESG債はグリーンウォッシングと切り離せないが、気候変動パフォーマンスの良い発行体に債券購入を傾けることで暗に生じるレピュテーションリスクの増加をECBはどのように管理しようとしているか
- リスク管理は必要であり、出来る限り、明確で、区別され、透明性のある情報と開示情報を用い、再投資対象となる企業による移行計画をよく理解し、彼らのフットプリントをよく理解する
- それらと、自身や信頼できる専門家による分析を基に、ポートフォリオの方向付けをこれまで以上に強く傾斜して行う
- グリーンウォッシングは加担すべきでないため、注意深く実施する
- 財政措置に関して、あなたは再調整すべきだと言ったが、本当に食料インフレが14%の状況で停止するのが正しいのか、エネルギー価格は確かに下落しはじめているが、多くの家計はまだ傷ついているのではないか
- 財政は、かなり広範囲に議論した話題なので、ぜひ皆さんに理解を深めて欲しい
- 防御(shields)を取り除くというのではなく、より単純に防御が依然よりも必要とされていないという事実に注意を向けて欲しいということである
- これが我々の政府に対する主張(advocacy)であり、昨日ユーログループ議長と特に議論した内容である
- あなたの経路は基本的に軟着陸(soft landing)と整合的なのか、成長率はすでにゼロ近傍で、インフレ率は低下しているが、あなたの実施してきた利上げが経済に波及するには数か月かかるため、行きすぎる危険性があるのか、それとも軟着陸となりそうなのか
- 我々は成長率がマイナスの領域に突入していないことを祝うべきだと思う
- 基調的インフレ要素は強く、頑丈で、動いていない、そのため、我々は仕事をする必要があり、使命を果たす必要がある
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2002年 東京工業大学入学(理学部)
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
(2023年02月03日「経済・金融フラッシュ」)
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【ECB政策理事会-12月の「予告」通り、0.50%ポイントの利上げ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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