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- 現在の景況感は良好だが、先行きに関して悲観的な見方が強まる~価格のピークは今年が最多。期待はホテル。リスク要因として、国内金利、建築コスト、地政学リスクへの関心が高まる~第19回不動産市況アンケート結果
現在の景況感は良好だが、先行きに関して悲観的な見方が強まる~価格のピークは今年が最多。期待はホテル。リスク要因として、国内金利、建築コスト、地政学リスクへの関心が高まる~第19回不動産市況アンケート結果

金融研究部 主任研究員 吉田 資
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前回調査から回答割合が10%以上増加したリスク要因は、「国内金利」(32%→67%)、「建築コスト」 (22%→40%)、「地政学リスク(ウクライナ情勢、北朝鮮など)」(8%→25%)であった(図表-8)。
「国内金利」に関して、昨年12月に日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和(イールドカーブコントロール)」の許容幅を±0.50%へ拡大し、10年国債利回りの上昇を容認した。今年4月からは新総裁のもと大規模緩和の見直しに着手することが想定され、不動産投資市場への影響が懸念されている。
また、「建築コスト」に関して、資材価格の高騰や労務費の上昇などにより、建築費指数5は「事務所」で前年比+9%、「住宅」で前年比+8%と上昇しており、建築コストの上昇リスクが意識されているようだ。
「地政学リスク(ウクライナ情勢、北朝鮮など)」に関して、東京商工リサーチの調査6によれば、ウクライナ情勢で経営にマイナスの影響を受けている企業は51%に達した。資源価格の高騰に伴う物価上昇や企業業績への影響が懸念されるなか、不動産投資市場のリスク要因として指摘する回答が増加した。
一方、前回調査から回答割合が10%以上減少したリスク要因は、「新型コロナ拡大」(34%→1%)、「ニューノーマル(デジタル化の進展、人々の行動変容など)」(23%→5%)、「脱炭素対応(コスト負担増、環境投資など)」(17%→5%)であった(図表-8)。
新型コロナ感染拡大の社会的な影響が徐々に和らぐなか、「新型コロナ拡大」や「ニューノーマル」への懸念が後退したものと考えられる。
5 建築物価調査会「建築費指数」(2022年12月)
6 東京商工リサーチ「第2回 ロシアのウクライナ侵攻に関するアンケート」調査(2022年6月実施)
「東京の不動産価格のピーク時期」について、「2023年」(43%)との回答が最も多く、次いで「2022年あるいは現時点(既に価格はピーク)」(39%)との回答が多かった(図表-9)。
日本不動産研究所の「不動産投資家調査(22年10月)」によると、投資家が東京の不動産に期待する利回りは、オフィスが3.2%(前年比▲0.2%)、住宅が3.9%(▲0.1%)に低下した。一方、日経不動産マーケット情報の集計によると、不動産取引額は前年比▲12%減少の3兆4,652億円となった。不動産投資市場はこれまでの「利回り低下/取引額増加」から「利回り低下/取引額減少」の局面に転じた可能性がある。
今後について、日米中央銀行の金融政策や東京のオフィス市況、国内外の景気・インフレ動向など先行き不透明感が強いなか、不動産価格は2023年までにピークアウトするとの回答が大多数を占める結果となった。
(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。 また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
(2023年02月03日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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