2023年01月23日

ドル円は2大テーマが激突へ~マーケット・カルテ2月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し 1ドル132円台で始まった今月のドル円は円高ドル安に振れている。米国について、月初に賃金上昇率の鈍化、中旬に物価上昇率の鈍化が示され、FRBによる利上げ長期化観測が後退したことが主因となった。また、この間、日銀による正常化に向けたさらなる緩和修正観測が燻り続けたことも円高圧力となった。中旬に開催された決定会合は現状維持(かつ資金供給オペの拡充)となり、肩透かしとなった投機筋の円売りによって一旦円安に振れたものの、早期の緩和修正観測は収まらず、円売りは長続きしなかった。この結果、足元では129円台前半で推移している。

今後は米国の利上げ観測と日銀の緩和修正観測という2大テーマがドル円の行方を決定付ける。FRBは今後利上げの停止を模索する段階に入るが、足元の市場における米利上げ停止とその先の利下げの織り込みはやや早すぎるとみられ、春にかけてその修正が入ることで一旦ドル高圧力が高まると予想している。一方、今後は新総裁の人事や就任を控えて日銀による緩和修正観測に伴う円高圧力も高まるだろう。ドル高圧力と円高圧力が激突する形となり、3か月後は現状比横ばい圏の130円前後になると見ている。ただし、先行きの不透明感が強いだけに、両テーマを巡る観測の組み合わせ次第で、円高・円安の両方向に大きく振れ得る点には留意が必要になる。

1ユーロ139円台で始まった今月のユーロ円はやや円安ユーロ高に振れ、足元は140円台後半にある。日銀の緩和修正観測に伴う円高圧力が燻ったものの、ECB要人による利上げに前向きな発言が続いたことなどからドル売りの受け皿としてユーロが選好され、ユーロの追い風となった。今後もECBの積極的な利上げ姿勢がユーロの支えになるものの、既に投機筋によるユーロ買いは積み上がっており、積み増し余地は乏しい。むしろ、今後は欧州の景気後退が露わになり、景気を冷やすECBの利上げがユーロ高に直結しづらくなると見ている。3ヵ月後の水準は139円前後に弱含むと見込んでいる。

今月の長期金利は日銀の緩和修正観測を受けて一旦上昇し、中旬にかけて0.5%をたびたび突破したが、決定会合での現状維持を受けてやや低下し、足元では0.4%付近にある。今後は、上記米金融政策を巡る観測の修正に伴う米金利上昇が波及するほか、日銀の緩和修正観測が金利上昇圧力となるだろう。日銀は許容上限を当面維持するとみられるが、3か月後の水準は上限付近の0.5%程度にやや上昇すると見ている。
 
(執筆時点:2023/1/23)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2023年01月23日「基礎研マンスリー」)

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