2023年01月11日

マイナンバーカードを使って今後利用したいサービス

基礎研REPORT(冊子版)1月号[vol.310]

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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1―はじめに

本稿では、ニッセイ基礎研究所が行ったインターネット調査*1を使って、マイナンバーカード取得者のサービス利用経験と今後の利用意向を紹介する。
 
*1 ニッセイ基礎研究所「第10回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」。全国の20~74歳の男女を対象に2022年9月27日~10月3日に実施。有効回答数2,557。

2―マイナンバーカードを使用したサービスの利用経験と今後の利用意向

今回の調査で、全体の69.0%が既にマイナンバーカードを取得していた。また、12.3%が申請中または申請予定、18.7%は申請予定がないと回答した。

既にカードを取得している1765人に、これまでにマイナンバーカードを使って利用したサービスを尋ねたところ、利用経験が高い順に「マイナポイントの取得(61.0%)」「身分証明書として提示(34.6%)」「行政手続き・各種証明書の発行(31.0%)」「マイナポータルを使ったサービス*2(16.7%)」「健康保険証として医療機関や薬局で使用(5.4%)」だった[図表1]。
[図表1]マイナンバーカードを使用したサービスの利用経験・今後の利用意向
続いて、現在申請中、または今後申請予定の314人を加えた2079人を対象に、今後利用したいサービスを尋ねたところ、「マイナポイントの取得(43.7%)」「身分証明書として提示(51.3%)」「行政手続き・各種証明書の発行(48.1%)」「マイナポータルを使ったサービス(23.5%)」「健康保険証として医療機関や薬局で使用(30.8%)」だった。「いずれもなし」は18.0%を占めた。今後、マイナンバーカードと一体化するとされる「運転免許証として利用」は11.8%だった。

今後の利用意向を、これまでの利用経験と比べると、「マイナポイントの取得」は、既に第2弾も取得している人がいるためか、今後の利用意向がこれまでの利用経験を下回ったが、それ以外はいずれも今後の利用意向がこれまでの利用経験を上回った。健康保険証としての利用は30.8%で大幅に上昇した。マイナポータルの利用については他のサービスと比べると上昇幅は6.8ポイントと比較的小さかった。

一方、今後のサービス利用意向が「いずれもなし」はこれまでの利用経験と同程度の高さとなっており、今後に向けても、利用意向がない人は一定程度いるようだった。
 
*2 「年末調整や確定申告」「行政からのお知らせの閲覧」「受診歴、予防接種歴、健康診断結果の閲覧」「年金の相談や照会」「児童手当や保育所入所の申請」「障害福祉サービス、介護サービス利用の申請」のいずれかを使っている場合とした。

3―今後の利用意向の属性別特徴

次に、図表1で示したサービスのうち、比較的利用意向が高く、マイナンバーカードの特徴的な3つの機能である「身分証明書として提示」「マイナポータルを使ったサービス」「健康保険証として医療機関や薬局で使用」に着目して、今後の利用意向を性、年齢、職業、暮らし向き*3、持病の有無*4、オンライン化やキャッシュレス化が進むことで様々なサービスが利用しにくくなることにおける不安(以下、「オンライン化等における不安」とする。)の有無別に見る[図表2]。この3つ以外のサービスについては、ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート「マイナンバーカード取得状況と使途・今後利用したいサービス(2022年11月16日)」を参照されたい。
[図表2]今後のサービスの利用意向
「身分証明書として提示」は、全体と比べて、女性、65~74歳の高年齢、パート・アルバイト、申請中・今後申請予定の人で利用意向が高かった。

「マイナポータルを使ったサービス」は、全体と比べて、50~64歳、自営業・自由業、既に取得済の人で高かった。マイナポータルを使ったサービスの具体的内容をみると、50~64歳は、「年末調整や確定申告」「年金の相談や照会」の利用意向が、自営業・自由業では「年末調整や確定申告」の利用意向が、既に取得済の人では「年末調整や確定申告」「行政からのお知らせの閲覧」が、それぞれ高かった(図表略)。

「健康保険証として医療機関や薬局で使用」は、男性、65~74歳、持病がある人、申請中・今後申請予定の人で高かった。

また、3つのサービスはいずれも、暮らし向きではゆとりがある人、オンライン化等における不安がない人で利用意向が高かった。
 
*3 現在の暮らし向き(経済状況)について、「ゆとりがある」または「ややゆとりがある」と回答した場合を「ゆとりがある」、「あまりゆとりがない」または「ゆとりがない」と回答した場合を「ゆとりがない」とした。
*4 現在、「心疾患・脳血管疾患・糖尿病・高血圧・呼吸器疾患などの持病がある」または「免疫系の持病がある、または、免疫の機能を低下させる治療を受けている」または「上記以外の持病がある」と回答した場合を「持病あり」とした。また上記の「持病あり」「妊娠中である・授乳中である」「これまで食品や薬物にアレルギー反応を起こしたことがある」のいずれも当てはまらない場合を「持病・妊娠等なし」とした。

4―おわりに

保険証としての利用は、保険証として登録ができるようになってまだ日が浅いこと、対応している医療機関が限定されていたこと、調査を実施した9月末には従来の保険証と比べると初診料・再診料が高かったこと(逆インセンティブ)などを背景に、これまでの利用経験は5.4%に留まった。本調査は、現在の保険証廃止の議論が出る前に行ったものであるが、10月以降は、逆インセンティブが解消されることが既に報じられていたこともあり、今後の利用意向は30.8%と高くなっていた。65~74歳、持病ありの人で利用意向が高く、特に、医療機関や薬局の利用が多いと考えられる人で利用に期待がある可能性がある。

マイナンバーカードは、身分証等として提示するほか、マイナポータルを使って、確定申告や受診歴等の閲覧、年金額の確認、児童手当や介護サービス等利用申請するために使えることがメリットの1つである。しかし、現在のところマイナポータルの利用意向は、既にカードを取得している人、暮らし向きにゆとりがある人、オンライン化等における不安がない人で高いが、これからカードを取得する人、暮らし向きにゆとりがない人、オンライン化等における不安がある人では低く、利用意向には偏りがみられた。今回の調査は、インターネット調査であり、マイナンバーカードを既に取得している割合が国全体の同年代の交付率を上回ることからも推察できるように、デジタル化やオンラインによるサービス利用に親しみがある層が回答していると考えられる。しかし、それでも、カードの取得や利用に慎重な考えをもつ人がいるようだった。

今後、マイナポータルに登載されるサービスは拡充していくと考えられるが、今回の調査では対象となっていない75歳以上や、オンラインサービスに慣れ親しんでいない人もメリットを享受できるような運用に期待したい。例えば、サポートを受けながらマイナポータルを利用できるような場などが考えられるかもしれない。また、カード取得については、マイナポイント事業やメディアを使った広報活動、申請窓口の増設等によって進んだとしても、約5年後には電子証明書の更新を自分で行う必要がある。場合によっては5年後も、更新がスムーズにできるように広報活動等が必要になるだろう。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

(2023年01月11日「基礎研マンスリー」)

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