コラム
2022年12月20日

東京ドーム198コ分の農地が、数年のうちに宅地に変わる~2022年問題以降の都市農地のゆくえ 4~

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎

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前回見たように、国土交通省の調査結果1では、現状で特定生産緑地に指定する生産緑地は、全体の89%で、面積は9,382㏊である。これは東京ドーム2,007コ分になる。これに対し、「指定意向なし」は10%で、その面積は929㏊である。また、「未定・未把握」が1%で105㏊となっている。この未定・未把握が指定意向なしに傾くと、最大11%、1,034㏊が、農地から宅地へと転用される可能性があるということになる。

929㏊は東京ドーム198コ分、1,034㏊は221コ分である。この面積を大きいと思うか、小さいと思うか、読者はどう感じるだろうか?東京ドーム2,007コ分の農地が維持されることに比べると、失われる198コ分は多くはないと感じるかもしれない。しかし、それが今後わずかな期間に宅地になって住宅などに変わっていくとしたらどうだろう。

この機会に特定生産緑地に指定しない生産緑地は、それ以降いつでも買取り申出2できる状態になる。そして固定資産税が5年間で段階的に宅地並みに引き上げられる。そうだとしたら、なるべく早く買取り申出して、行為制限を解除し、宅地へと転用して収益を得られる土地活用を行うのが賢明と言えよう。

おそらく特定生産緑地に指定しないことにした所有者は、多くの場合、そう決めた段階ですでに土地活用を考えているはずである。つまり、東京ドーム198コ分の農地は、数年のうちに住宅や店舗などに変わっていくと考えた方がよい。

ここでその数年のうちというのが、どういうことかイメージしてもらうために、次のようなデータを用意した。次図は、今回、特定生産緑地指定の対象となる生産緑地を有する1都2府8県3における、各年の市街化区域4内農地が宅地などに転用された面積合計を示したものである。毎年概ね50~100㏊を超える面積の農地が転用されていることが分かる。そして、2008年から2019年までの累計が940㏊になる。つまり、12年間で転用してきた面積に匹敵する面積の生産緑地が、2022年以降少なくとも5年間のうちに失われていくことになるということである。
図表1 市街化区域内農地転用面積推移
特定生産緑地に指定しない929㏊は、1都2府8県のすべての生産緑地地区の約12%になる5。単純に考えると、身近に10箇所程度の生産緑地があったとしたら、これまでは12年間で、そのうちの1箇所程度が住宅地などに置き換わってきたが、2022年以降は、数年のうちに置き換わるイメージになる。

ここで、数年のうちに失われていく929㏊の生産緑地を転用し、住宅地開発した場合を想定してみたい。特定生産緑地に指定しない929㏊を含む、1都2府8県全体の生産緑地の1地区あたり平均面積は2021年末時点で2,103m2である。これに対し、2008~2019年の三大都市圏の市街化区域内における開発許可61件あたり平均面積は2,056m27、生産緑地地区の平均面積に近い。つまり平均すると、生産緑地の1地区は、開発許可1件と同程度の面積ということになる。

2,103m2を、1住宅の敷地面積が170m2 8の住宅地に開発した場合、10~11棟の一戸建住宅が建つ計算である。身近にある生産緑地が今後数年のうちに10棟程度の住宅地に変わっていくと捉えたときに、どのような影響があるだろうか?次回は、その点を掘り下げたい。
 
1 「特定生産緑地指定意向調査結果(2022年6月末時点)」国土交通省
2 買取り申出制度とは、生産緑地の主たる従事者が死亡した場合、故障して農業従事できなくなった場合、指定から30年経過した場合、当該自治体に買取りを申出する制度。自治体が買い取らない場合他の農家に斡旋する。斡旋が成立しない場合、建築等の行為制限が解除される。
3 茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県
4 都市計画区域を無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るために、市街化区域と市街化調整区域を定める制度において、市街化区域は、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」である。市街化区域内の農地は、当該自治体農業委員会への届出により転用できる。
5 「令和3年度都市計画現況調査」2021年末時点。国土交通省に基づく。
6 三大都市圏の市街化区域内で開発を行う場合、開発面積が500m2以上であれば、開発許可という手続きが必要になる。
7 「三大都市圏の住宅用途の開発許可件数及び面積」国土交通省 ここでの三大都市圏は、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、中部圏(愛知県、岐阜県、三重県)、近畿圏(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)
8 住宅着工統計(国土交通省)では、2021年の1都2府8県の居住専用で3階建て以下の木造住宅着工1棟あたり敷地面積は173m2である。
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社会研究部   都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任

塩澤 誠一郎 (しおざわ せいいちろう)

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

(2022年12月20日「研究員の眼」)

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