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一方、日本の企業年金の資産配分をみると、図表1のように主に内外の債券・株式と生命保険一般勘定の5つから構成される。短期資産とこの5つ以外の資産、すなわち表中の「その他」の配分比がリーマンショック直前の2007年度の9%から現在は15%まで増加している。他方、減少しているのは国内債券と国内株式である。全体としてリスクを落とす中、国内債券から生命保険一般勘定や代替資産に資金がシフトしてきた。その中心の一つはヘッジファンド投資であった。米国エンダウメントとは異なり、日本の企業年金の代替資産投資には、(1)流動性・換金性を重視する、(2)債券投資への代替手段としてリスクを抑える、特徴があった。
具体的には、リーマンショック以降の2008年度から2020年度まで各年度の企業年金全体のリターン(修正総合収益率)を被説明変数とし、伝統的4資産のインデクス・リターンを説明変数とする重回帰分析(最小2乗法)を行った。ただし、(1)各資産の係数の合計を1.0とする、(2)13年間のリターンの標準偏差(リスク)を実績値と等しくする、という2つの制約条件をつける。つまり、4資産のパッシブファンドを用いて実績と同リスクのポートフォリオを複製し、それをベンチマークとして、企業年金の運用実績を分析してみた。
図表2がその結果である。なお、Aは運用資産全体のリターン、Bは生命保険一般勘定の寄与分(利率1.25%と想定)を除いたリターン、を被説明変数としたケースである。気がつく点として第1に、ケースA、Bともに複製ポートフォリオでは、実際(30%未満)より高い50%前後を国内債券へ配分している。運用リスクを抑制してきたことがわかる。第2に回帰分析の決定係数は0.95以上であり、年々のリターンの変動の95%以上が4資産のパッシブ運用で説明できる。
もちろん、上記は伝統的資産のリターンが高かった13年間の、企業年金全体のデータによる後講釈である。債券・株式リターンの変動が拡大しかねない状況では、代替資産投資も受託者責任上、十分にプルーデントな(思慮深い)選択肢と位置づけられよう。ただ、ここでの分析からは、例えばヘッジファンド投資を取り入れる際には、マネージャーのスキルだけでなく、(1)運用手数料やコストが合理的水準か、(2)運用ポートフォリオ全体との間にリスク分散効果が得られるかどうか、をよく吟味する必要があることを再確認できたのではないか。それらが確認できない場合には代替資産投資を見送ることも、資産配分政策の選択肢の1つとなりうる。
1 Ennis, Richard(2020),“Institutional Investment Strategy and Manager Choice: A Critique,” The Journal of Portfolio Management, 46(5), pp.104-117
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(2022年11月04日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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