2022年10月31日

鉱工業生産22年9月-7-9月期は大幅増産だが、生産計画は弱い

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.7-9月期は2四半期ぶりの増産

経済産業省が10月31日に公表した鉱工業指数によると、22年9月の鉱工業生産指数は前月比▲1.6%(8月:同3.4%)と4ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲1.0%、当社予想は同▲1.9%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比▲2.4%と4ヵ月連続ぶりの低下、在庫指数は前月比3.0%と4ヵ月連続の上昇となった。

9月の生産を業種別に見ると、中国のロックダウン解除を受けて6月に前月比14.1%、7月に同12.0%と急回復した自動車は、8月に同▲1.3%と3ヵ月ぶりに低下した後、9月は同▲12.4%と急速に落ち込み、生産指数全体を大きく押し下げた。

22年7-9月期の生産は前期比5.9%と2四半期ぶりの増産となり、4-6月期の落ち込み(前期比▲2.7%)を取り戻した。業種別には、中国のロックダウン解除を受けて自動車が前期比12.7%(4-6月期:同▲1.4%)の大幅増産となったほか、内外の設備投資需要の強さを背景に生産用機械(前期比14.2%)、汎用・業務用機械(同5.8%)も高い伸びとなり、長期にわたり低迷が続いていた情報通信機械(同22.5%)が6四半期ぶりに上昇に転じた。一方、ITサイクルの悪化から電子部品・デバイスは前期比▲7.8%(4-6月期:同▲4.7%)と2四半期連続の減産となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は22年4-6月期の前期比1.3%の後、7-9月期は前期比13.1%の高い伸びとなった。一方、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は22年4-6月期の前期比3.8%の後、7-9月期は同▲2.5%と2四半期ぶりの低下となった。

GDP統計の設備投資は、22年4-6月期に前期比2.0%と2四半期ぶりに増加した。高水準の企業収益を背景に設備投資は持ち直しの動きが続いており、7-9月期も高めの伸びとなる可能性が高い。

消費財出荷指数は22年4-6月期の前期比▲1.7%の後、7-9月期は同5.1%と3四半期ぶりの上昇となった。非耐久消費財は前期比0.2%(4-6月期:同1.2%)とほぼ横ばいにとどまったが、耐久消費財が前期比12.1%(4-6月期:同▲6.2%)の高い伸びとなった。
財別の出荷動向 まん延防止等重点措置の終了を受けて、22年4-6月期のGDP統計の民間消費は、外食、宿泊等の対面型サービス消費を中心に前期比1.2%の高い伸びとなった。7-9月期は新型コロナウイルスの感染が急拡大したが、政府が特別な行動制限を課さなかったこともあり、これまでの感染拡大時のようなサービス消費の落ち込みは見られない。7-9月期の民間消費は4-6月期に比べれば伸びは鈍化するものの、プラスの伸びは確保する可能性が高い。

2.先行きの生産は停滞色が強まる可能性

製造工業生産予測指数は、22年10月が前月比▲0.4%、11月が同0.8%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(9月)、予測修正率(10月)はそれぞれ▲1.5%、▲4.9%であった。

予測指数を業種別にみると、4-6月期に前期比11.5%の高い伸びとなった輸送機械だが、月次では9月に前月比▲10.3%と大きく落ち込んでおり、生産計画も10月が同1.3%、11月が同4.1%と低い伸びにとどまっている。半導体不足の影響は長引いており、大手自動車メーカーの生産計画の下方修正が続いている。先行きも自動車が生産の牽引役となることは期待できないだろう。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
10月、11月の予測指数は横ばい圏の動きとなっているが、実際の生産が予測指数から大きく下振れる傾向があることを考慮すれば、実質的には2ヵ月連続の減産計画と読み取ることもできる。欧米を中心とした海外経済の悪化を背景に輸出が低迷する可能性が高いこと、供給制約が完全に解消されるまでには時間を要することなどから、先行きの生産は停滞色が強まる可能性が高いだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年10月31日「経済・金融フラッシュ」)

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