2022年10月28日

雇用関連統計22年9月-失業率は上昇したが、雇用情勢は改善が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.1ポイント上昇の2.6%

完全失業率と就業者の推移 総務省が10月28日に公表した労働力調査によると、22年9月の完全失業率は前月から0.1ポイント上昇の2.6%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想も2.5%)となった。

労働力人口が前月から18万人の増加となる中、就業者が前月から13万人の増加にとどまったため、失業者は前月から8万人増の183万人(いずれも季節調整値)となった。労働市場の参加者が増えたことが失業者の増加につながったが、就業者が増加していることに加え、労働需給により敏感な雇用者は前月から20万人増と大幅に増えており、内容的には悪くない。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差40万人増(8月:同12万人増)と2ヵ月連続で増加した。産業別には、卸売・小売業は前年差▲22万人減(8月:同▲23万人減)と減少が続いたが、宿泊・飲食サービス業が前年差21万人増(8月:同21万人増)と3ヵ月連続で増加し、医療・福祉が前年差20万人増(8月:同8万人増)と増加幅が拡大したほか、製造業が前年差19万人増(8月:同▲3万人減)と6ヵ月ぶりに増加した。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ41万人増(8月:同25万人増)と7ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員数が前年差63万人増(8月:同50万人増)と8ヵ月連続で増加したが、正規の職員・従業員数が前年差▲22万人減(8月:同▲25万人減)と4ヵ月連続で減少した。6月以降、前年同月と比べ正規が減少、非正規が増加しているが、コロナ禍前の19年同月と比べると、正規の職員・従業員が増加、非正規の職員・従業員が減少を続けている。8月は正規の職員・従業員が89万人増、非正規の職員・従業員は▲75万人減であった。

2.対面型サービス業を中心に新規求人数の大幅増加が続く

厚生労働省が10月28日に公表した一般職業紹介状況によると、22年9月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント上昇の1.34倍(QUICK集計・事前予想:1.33倍、当社予想も1.33倍)と、9ヵ月連続で上昇した。有効求職者数が前月比▲0.8%と3ヵ月連続で減少する一方、有効求人数が前月比0.9%と7ヵ月連続で増加した。
有効求人倍率の推 有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から▲0.05ポイント低下の2.27倍となったが、引き続き高水準を維持している。

新規求人数は前年比9.8%(8月:同15.1%)と高い伸びが続いた。産業別には、宿泊・飲食サービス業(前年比29.5%)、生活関連サービス・娯楽業(前年比22.3%)など、需要の持ち直しが明確となっている対面型サービス業が非常に高い伸びとなっている。
 
失業率は横ばい圏の動きが続いているが、労働市場の需給関係を反映する有効求人倍率は、国内需要の底堅さや企業の人手不足感の高さを背景に急回復し、コロナ前の水準に近づいている。

22年夏場は、新型コロナウイルスの感染が急拡大したものの、政府が特別な行動制限を実施しなかったこともあり、コロナ禍で大きく悪化した対面型サービス業を中心に雇用情勢の改善傾向は維持されている。10月には雇用調整助成金の特例措置の上限が引き下げられたが、このことが失業者の増加につながるリスクは低いだろう。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年10月28日「経済・金融フラッシュ」)

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