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- 消費者物価(全国22年9月)-コアCPI上昇率は91年8月以来の3%、当面3%台の推移が続く見通し
2022年10月21日
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1.コアCPIの伸びが約30年ぶりの3%

エネルギーの伸びは前月と変わらなかったが、食料(生鮮食品を除く)の伸びが高まったことに加え、円安の影響などから家具・家事用品、被服及び履物の伸びが加速したことが、コアCPIを押し上げた。
コアCPI上昇率が3%となるのは、消費税率引き上げの影響を除くと、91年8月(3.0%)以来、31年1ヵ月ぶりとなる。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比1.8%(8月:同1.6%)と2%に近づいている。総合は前年比3.0%(8月:同3.0%)であった。

食料(生鮮食品を除く)は前年比4.6%(8月:同4.1%)となり、上昇率は前月から0.5ポイント拡大した。
原材料価格の高騰を受けて、食用油(前年比37.6%)、マヨネーズ(同14.2%)、パン(同13.0%)、麺類(同11.5%)などが前年比二桁の高い伸びを続けているほか、菓子類(8月:前年比5.0%→9月6.2%)、調理食品(8月:前年比5.3%→9月:同5.6%)なども前月から伸びを高めた。
さらに、一般外食は、食料工業製品に比べて人件費の影響を受けやすいこともあり、相対的に低い伸びが続いていたが、原材料費の大幅上昇を価格転嫁する動きが広がり、9月には前年比4.1%となり、食料工業製品に近い伸びとなっている。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが1.33%(8月:1.32%)、食料(生鮮食品を除く)が1.07%(8月:0.95%)、携帯電話通信料が▲0.23%(8月:同▲0.23%)、その他が0.83%(8月:0.69%)であった。
2.円安の影響で物価上昇品目数が大きく増加

原油高の影響は電気代、ガソリンなど一部の品目に集中する傾向があるのに対し、円安は全ての輸入品の価格上昇に直結する。このため、価格転嫁による物価上昇がより幅広い品目に及ぶ形となっている。
3.コアCPI上昇率は10月には3%台半ばへ
コアCPI上昇率は消費税率引き上げの影響を除くと、約30年ぶりの3%となった。10月は食料の値上げの動きが一段と加速する中、携帯電話通信料の値下げの影響一巡、火災・地震保険料の引き上げなどが重なることにより、コアCPIは3%台半ばまで伸びが大きく高まる可能性が高い。
原油価格(ドバイ)は、世界経済の減速懸念の高まりなどから、1バレル=90ドル程度まで低下しているが、燃料油価格激変緩和措置(石油元売り会社への補助金)によってガソリン、灯油価格等が抑制されているため、市況の下落がエネルギー価格の低下に直結しない構造となっている。エネルギー価格は22年3月の前年比20.8%をピークに伸びは鈍化しているが、22年度内は前年比で10%台の高い伸びが続くだろう。
エネルギー価格の伸び率が鈍化する一方、食料(生鮮食品を除く)の伸びがさらに高まること、円安によるコスト増を価格転嫁する動きが食料以外の幅広い品目に及ぶことから、コアCPI上昇率は、22年度中は3%台前半から半ばで推移することが予想される。
ただし、足もとの物価上昇は、原材料価格高騰に伴う財価格の大幅上昇によるもので、賃金との連動性が高いサービス価格はほとんど上がっていない1。コスト増を価格転嫁する形での物価上昇はしばらく続きそうだが、賃金の伸び悩みが続く中ではサービス価格の大幅上昇は見込めない。現時点では、22年中に円安傾向に歯止めがかかること、国際商品市況が落ち着いた状態が続くことを前提として、コアCPI上昇率は23年度入り後には2%台半ばへと鈍化することを予想している2。
1 現在と約30年前の物価上昇の中身についての比較は、weeklyエコノミスト・レター2022-10-14「消費者物価上昇率は約30年ぶりの3%-当時と大きく異なる物価上昇の中身」をご参照ください
2 「全国旅行支援」が消費者物価指数に反映された場合や、経済対策における物価高対策の内容によっては、コアCPIが押し下げられる可能性があるが、この見通しでは織り込んでいない。
原油価格(ドバイ)は、世界経済の減速懸念の高まりなどから、1バレル=90ドル程度まで低下しているが、燃料油価格激変緩和措置(石油元売り会社への補助金)によってガソリン、灯油価格等が抑制されているため、市況の下落がエネルギー価格の低下に直結しない構造となっている。エネルギー価格は22年3月の前年比20.8%をピークに伸びは鈍化しているが、22年度内は前年比で10%台の高い伸びが続くだろう。
エネルギー価格の伸び率が鈍化する一方、食料(生鮮食品を除く)の伸びがさらに高まること、円安によるコスト増を価格転嫁する動きが食料以外の幅広い品目に及ぶことから、コアCPI上昇率は、22年度中は3%台前半から半ばで推移することが予想される。
ただし、足もとの物価上昇は、原材料価格高騰に伴う財価格の大幅上昇によるもので、賃金との連動性が高いサービス価格はほとんど上がっていない1。コスト増を価格転嫁する形での物価上昇はしばらく続きそうだが、賃金の伸び悩みが続く中ではサービス価格の大幅上昇は見込めない。現時点では、22年中に円安傾向に歯止めがかかること、国際商品市況が落ち着いた状態が続くことを前提として、コアCPI上昇率は23年度入り後には2%台半ばへと鈍化することを予想している2。
1 現在と約30年前の物価上昇の中身についての比較は、weeklyエコノミスト・レター2022-10-14「消費者物価上昇率は約30年ぶりの3%-当時と大きく異なる物価上昇の中身」をご参照ください
2 「全国旅行支援」が消費者物価指数に反映された場合や、経済対策における物価高対策の内容によっては、コアCPIが押し下げられる可能性があるが、この見通しでは織り込んでいない。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年10月21日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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