2022年10月31日

米個人所得・消費支出(22年9月)-堅調な個人消費が持続

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想に一致、個人消費は市場予想を上回る

10月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は9月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.4%(前月改定値:+0.4%)と+0.3%から上方修正された前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%に一致した(図表1)。個人消費支出は前月比+0.6%(前月改定値:+0.6%)と+0.4%から上方修正された前月に一致、市場予想の+0.4%は上回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.3%(前月改定値:+0.3%)と+0.1%から上方修正された前月に一致、市場予想の+0.2%を上回った(図表5)。貯蓄率1は3.1%(前月:3.4%)と前月から▲0.3%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月:+0.3%)と前月、市場予想(+0.3%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.5%(前月改定値:+0.5%)と+0.6%から下方修正された前月、市場予想(+0.5%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+6.2%(前月:+6.2%)と前月に一致した一方、市場予想(+6.3%)は下回った。コア指数は+5.1%(前月:+4.9%)と前月を上回った一方、市場予想(+5.2%)を下回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:所得対比で堅調な個人消費が持続

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)は2ヵ月連続で+0.6%と堅調な伸びを示した(図表1)。また、インフレ高進にかかわらず、実質ベースでも2ヵ月連続で+0.3%とプラスを維持しており、FRBによる急激な金融引締めによっても、足元の個人消費は堅調を維持していることを確認する結果となった。

個人所得(前月比)も賃金・給与が堅調なこともあって3ヵ月連続で+0.4%と底堅い伸びを維持しているものの、個人消費の伸びは下回っており、貯蓄率は2ヵ月連続で低下した。貯蓄率は21年3月に実施された家計への直接給付を含む経済対策の効果もあって21年3月に26.6%のピークを付けた後、低下基調が持続し、足元では新型コロナ感染拡大前の9%台を大幅に下回る水準に低下するなど、家計が貯蓄を取り崩して消費に回している状況が続いている。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は総合指数の前年同月比では22年6月(+7.0%)をピークに概ね低下基調が持続している。しかしながら、物価の基調を示すコア指数の前年同月比は2ヵ月連続で上昇しており、基調としての物価上昇圧力が続いていることを確認した。このため、11月のFOMC会合では4会合連続で通常(0.25%)の3倍となる0.75%の利上げは確実だろう。

3.所得動向:賃金・給与が堅調

9月の個人所得(前月比)は前月並みの伸びを維持したが、中身をみると自営業者所得が+0.2%(前月:+1.3%)と前月から伸びが大幅に鈍化したほか、移転所得が▲0.1%(前月:+0.1%)と前月からマイナスに転じた(図表2)。一方、利息配当収入が+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みを維持したほか、賃金・給与が+0.6%(前月:+0.3%)と堅調な伸びとなった。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、9月の名目が+0.4%(前月:+0.5%)と前月から小幅ながら伸びが鈍化した(図表3)。一方、価格変動の影響を除いた実質ベースは横這い(前月:+0.2%)となり、2ヵ月連続で伸びが鈍化した(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:サービス消費が堅調を維持

9月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.3%(前月:▲0.4%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じたほか、サービス消費が+0.8%(前月:+1.0%)と前月から小幅鈍化したものの、堅調な伸びを維持した(図表4)。

財消費は、耐久財が+0.5%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速したほか、非耐久財が+0.2%(前月:▲0.7%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じた。

耐久財では、家具・家電が+0.2%(前月:+0.3%)と前月から小幅に伸びが鈍化した一方、自動車・自動車部品が+1.0%(前月:+0.8%)と前月から伸びが加速したほか、娯楽財・スポーツカーが+0.3%(前月:▲0.5%)とプラスに転じた。

非耐久財では、食料・飲料が+0.3%(前月:+0.5%)と前月から小幅に伸びが鈍化した一方、衣料・靴が+0.8%(前月:+0.6%)と小幅に伸びが加速したほか、ガソリン・エネルギーが▲1.7%(前月:▲7.9%)と3ヵ月連続でマイナスとなったものの、マイナス幅が大幅に縮小した。

サービス消費は、住宅・公共料金が+1.0%(前月+0.9%)と前月から伸びが小幅ながら加速したほか、医療サービスが+0.4%(前月:+0.4%)、娯楽が+0.2%(前月:+0.2%)と前月並みの伸びを維持した。一方、輸送サービスが+2.9%(前月:+3.1%)、外食・宿泊が+1.1%(前月:+1.5%)と堅調ながら前月から伸びが鈍化したほか、金融サービスが▲0.7%(前月:+1.2%)と前月からマイナスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:食料品価格(前年同月比)は16ヵ月ぶりに前月から低下

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲2.4%(前月:▲5.6%)と3ヵ月連続のマイナスとなった(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.6%(前月:+0.8%)と、こちらは前月から伸びが鈍化したものの、22ヵ月連続のプラスとなっており、食料品価格の上昇には歯止めがかかっていない。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+21.0%(前月:+25.5%)と伸びは鈍化も19ヵ月連続で2桁の上昇となった(図表7)。食料品価格指数は+11.9%(前月:+12.4%)と63ヵ月連続のプラスとなったものの、79年2月(+12.7%)以来の伸びとなった前月からは16ヵ月ぶりに低下した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年10月31日「経済・金融フラッシュ」)

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